6月16日のドル/円は、NY市場で一時143.65円まで下落後、144.88円まで上昇して引けました。日銀は本日の会合で政策金利据え置きを決定するもよう。
今日のレンジ予測
[本日のドル/円]↑上値メドは145.25円↓下値メドは143.75円米中貿易戦争:中国はアルゼンチン、ブラジルからの穀物輸入増やし米国産を減らす考え
ドル利払い:今年の利払い1兆ドルを突破。トランプ税制でさらに11兆ドルのコスト
トランプ・インフレ:カナダ・メキシコ関税は米国のPCEインフレ率を0.8%押し上げ
FRB:ボストン連銀総裁「関税による一時的なインフレは考慮しない」
鉄鋼関税:鉄鋼の国内供給追いつかず、米国の鉄鋼価格が大幅上昇する可能性も
前日の市況
6月16日(月曜)のドル/円相場の終値は、前日比0.61円「円安」の144.75円。1日のレンジ幅は1.22円だった。
2025年119営業日目は144.30円からスタート。イランとイスラエルのミサイル攻撃応酬で週明けの東京市場で144.75円まで円安に動いた。ただその後はカナダで開幕する主要7カ国首脳会議(G7サミット)や次の日の日本銀行金融政策会合を前にしたポジション調整が入り143円台後半に押し戻された。
NY市場では東京市場と逆の動きとなった。イランが米国に停戦仲介を要求したとの報道がでる中で、ドル/円は夜遅くに144.00円を下抜けると143.65円まで下落してこの日の安値をつけた。ところがイスラエルの攻撃がエスカレートしたことで再びドル買いが強まると、明け方には再び144円台に乗せて144.88円まで円安に動いた。

FX市場が注目する材料は次の三つ。それぞれが関連していて、さらに相場を難しくしている。
カナダで開催されているG7サミットでは、中東情勢の緊張緩和が主要な議題として議論されている。報道によると、イランとイスラエルの軍事応酬のエスカレーションの回避を促す共同声明を準備中とのことだが、米国が声明の一部表現について意見を異にしているとの情報もある。
日本経済にとっては、米国との関税交渉が最重要課題となっている。石破茂総理大臣はカナダで、トランプ大統領と日米首脳会談を行ったが合意に至る可能性はまだ不透明。
日銀は本日の金融政策決定会合で、政策金利を0.5%で据え置く見通しだ。日銀の追加利上げが9月以降になるか、あるいは7月に早期実施されるかは、ひとえに日米関税交渉の結果次第だ。
イラン・イスラエル戦争の長期化は原油価格に影響を与える。原油価格上昇でインフレ率が高まり、米国の個人消費を低下させることになった場合、増税と同じと見なされる関税引き上げにおいて、トランプ大統領は強気の関税交渉を続けることが難しくなる可能性がある。
主要指標 終値

今日の為替ウォーキング Rehab
今日の一言
頭の中で一度に考えることを、できるだけ少なくする
Rehab
日銀は永遠に利上げできない?2025年3月の、日本の労働者一人当たりの平均賃金を示す現金給与総額(名目賃金)は、厚生労働省の発表によると、前年比2.1%増の30万8,572円だった。39カ月連続の上昇だが、物価上昇が名目賃金の伸びを上回っているため、実質賃金は3カ月連続でマイナスとなっている。
それでも、日銀は利上げに慎重だ。インフレ動向は予想よりやや強めに推移しているが、基調的物価は「2%までまだ少し距離がある」というのが中央銀行の認識である。つまり現在のインフレは一時的ですぐに終わる可能性があるので、「無理に政策金利を引き上げる考えはない」という判断だ。
新型コロナ流行が終息してインフレが上昇し始めた4年前、米連邦準備制度理事会(FRB)はこれを一過性として、利上げの考えを一笑に付した。その後米国のインフレがどれだけ暴走したか思い出すべきである。
消費者がモノを買わなくなると、企業は値上げを続けることができず、インフレはすぐにしぼんでしまう。企業側からすると「消費は美徳」になってもらわないと困るのだ。
これが日銀にとって頭の痛い問題となっている。利上げをしなければインフレ上昇は止まらず、実質賃金はさらに安くなり、消費は縮小する。かといって利上げをしてインフレが下がってしまえば、日銀は物価目標を達成できない。金利高が不景気を引き起こせば、消費はさらに縮小するリスクもある。どちらにしても、日銀は利上げできないのだ。
今週の注目経済指標

(荒地 潤)