中東情勢悪化など地政学的リスクの台頭、自動車関税の先行きに対する不透明感の継続などが懸念要因の一方、米中交渉の進展期待に伴うハイテク株、地政学的リスクによる防衛関連銘柄、原油高のリスクヘッジとなる石油関連株などは相場の下支え役となってきそうです。高配当利回り銘柄の選定でも、こうした二極化の流れを捉えたいところです。


【配当利回り5%以上】石油、防衛関連株で相場の下支え。中東情...の画像はこちら >>

アナリスト評価◎の割安高配当株TOP15

コード 銘柄名 現在値 配当
利回り コンセンサス
レーティング 移動平均線
乖離率 月間
騰落率 6481 THK 3876.0 6.53 3.8 6.10 5.96 1890 東洋建設 1470.0 6.12 4.0 7.92 8.41 7283 愛三工業 1686.0 5.93 4.0 ▲10.96 ▲8.47 4503 アステラス製薬 1388.5 5.67 3.6 ▲0.78 1.65 7148 FPG 2323.0 5.61 4.0 1.62 ▲0.98 5401 日本製鉄 2829.0 5.59 4.0 ▲5.75 ▲2.18 8130 サンゲツ 2914.0 5.49 4.0 1.13 0.83 4202 ダイセル 1188.0 5.42 3.5 ▲2.77 0.08 7267 ホンダ(本田技研工業) 1393.5 5.31 3.8 ▲1.26 ▲0.89 5021 コスモエネルギーホールディングス 6512.0 5.25 3.9 7.17 7.89 7202 いすゞ自動車 1796.0 5.24 3.5 ▲5.60 ▲5.20 6473 ジェイテクト 1077.5 5.22 4.0 ▲1.39 ▲6.02 5076 インフロニア・ホールディングス 1192.5 5.19 3.8 ▲0.44 3.70 7172 ジャパンインベストメントアドバイザー 1721.0 5.06 4.0 0.79 ▲0.58 7744 ノーリツ鋼機 4400.0 5.02 4.5 ▲1.72 ▲0.45 ※データは2025年6月13日時点。単位は配当利回りと月間騰落率、移動平均線乖離率は%、時価総額は億円。
配当利回りは予想、移動平均線乖離率の基準は13週移動平均線。

※コンセンサスレーティング…アナリストによる5段階投資判断(5:強気、4:やや強気、3:中立、2:やや弱気、1:弱気)の平均スコア。数字が大きいほどアナリストの評価が高い。


※移動平均線乖離(かいり)率…株価が移動平均線(一定期間の終値の平均値を結んだグラフ)からどれだけ離れているかを表した指標。この数値がマイナスならば、移動平均線よりも現在の株価が安いということになる。


 上表は、長期投資に適した銘柄の高配当利回りランキングと位置付けられます。


 6月13日時点での高配当利回り銘柄において、一定の規模(時価総額1,000億円以上)、ファンダメンタルズ(コンセンサスレーティング3.5以上)、テクニカル(13週移動平均線からの乖離率20%以下)などを楽天証券の「スーパースクリーナー」を使ってスクリーニングしたものとなっています。配当利回りはアナリストコンセンサスを用いています。


 なお、上場市場は各社ともにプライム市場となっています。


日経平均は節目の3万8,000円水準を挟んだもみ合いに

 5月16日終値~6月13日終値までの日経平均株価(225種)は0.2%の上昇となりました。


 この期間は、節目となる3万8,000円を挟んでのもみ合いが続く形となっています。米国の関税政策に対する不透明感が拭い切れない中、3万8,000円を上回る水準では上値追いの動きが限られる状況となっています。

また、米国景気減速懸念などを背景とした、ドル安・円高の流れも日本株には重しとなりました。


 一方、エヌビディアの好決算発表、米中貿易協議の進展期待などから、特に期間後半にかけては半導体関連株の強い動きも目立ち、全体相場の下支えとなりました。なお、25日移動平均線が日経平均の下値支持線として機能していますが、13日には地政学的リスクの台頭を受けて、いったん同水準を割り込む場面も見られました。


 こうした中、ランキングTOP15は高安まちまちとなり、7銘柄が上昇、8銘柄が下落となっています。


 上昇銘柄では、期間後半にかけて原油相場が大幅上昇したことで、 コスモエネルギーホールディングス(5021) がほぼ高値引けとなっています。政府の海底ケーブル整備計画なども材料視されたとみられ、 東洋建設(1890) も強い動きとなっています。 THK(6481) は中国のFA投資回復期待が高まったようです。


 半面、 愛三工業(7283) 、 ジェイテクト(6473) 、 いすゞ自動車(7202) などの自動車関連がそろって軟調推移となりました。米国の自動車関税による影響懸念が強まったほか、為替の円高もマイナス材料とされました。なお、いすゞ自動車は株式売出と自社株買いの実施を発表し、当初は買い先行となりました。


配当利回りのコンセンサスと会社計画の乖離の大きさに注意も

 今回、新規にランクインしたのは、 ダイセル(4202) 、いすゞ自動車(7202)、ジェイテクト(6473)、 ジャパンインベストメントアドバイザー(7172) 、 ノーリツ鋼機(7744) の5銘柄で、除外となったのは、 太陽ホールディングス(4626) 、 UBE(4208) 、 三井化学(4183) 、 三ツ星ベルト(5192) 、 日本ゼオン(4205) となっています。


 ダイセルはコンセンサスレーティングが新たに基準に達したものとみられます。その他4銘柄は株価下落で相対的に利回り水準が上昇する形となりました。

なお、ジェイテクトは2026年3月期の増配計画を受けて配当コンセンサスが切り上がった面もあるとみられます。


 一方、太陽HDは買収提案報道を受けて株価が急伸し、利回り水準は低下しました。三ツ星ベルト、日本ゼオンはそれぞれ、国内証券による投資判断格下げの動きが観測され、コンセンサスレーティングが未達となりました。その他2社は相対的に株価が底堅かったことで、利回り水準が低下した格好です。


 アナリストコンセンサスと会社側の配当予想の乖離は引き続き大きいものが目立っています。アナリストコンセンサスが会社計画の配当予想を下回っている銘柄としては、ジェイテクト(6473)が挙げられます。会社計画ベースでの配当利回りはそれぞれ、5.57%となります。会社計画ベースでの利回り水準が妥当な印象です。


 一方で、コンセンサスの配当予想が会社計画を大きく上回っているものには、愛三工業(7283)、 日本製鉄(5401) 、ダイセル(4202)、 ホンダ(本田技研工業:7267) などが挙げられます。会社計画ベースの配当利回りはそれぞれ、愛三工業4.45%、日本製鉄4.24%、ダイセル5.05%、ホンダ5.02%となっています。


 目先的には、それぞれ会社計画水準のほうに配当コンセンサスもサヤ寄せしていくとみられます。とりわけ、愛三工業と日本製鉄はコンセンサス水準が高すぎる印象です。


地政学的リスクも台頭し、目先は物色二極化の流れも想定へ

 イスラエルとイランが本格的な交戦状態に入るなど、中東の地政学的リスクが足元では急速に台頭する形となっています。今後リスクとなってくるのは、ホルムズ海峡封鎖の可能性、それに伴う原油市況の高騰となります。原油市況の上昇次第では、世界的にインフレ懸念の再燃が強まることにもつながっていくでしょう。


 また、日本株にとっては、自動車関税の行方が不透明な状況も警戒されるところです。自動車産業はすそ野が広く、ファンダメンタルズの先行きが見通せない企業が多い状況は、上値追いの手控え要因となりそうです。


 一方、米中貿易交渉の進展期待が高まっていることは、半導体などハイテク株の支援材料となるでしょう。また、地政学的リスクによる防衛関連銘柄への期待感も高まることが想定されます。石油株など原油高関連も、原油相場高騰のリスクヘッジとして資金流入が想定されそうです。こうした銘柄群が全体相場の下支え役となる可能性は十分にありそうです。


 高配当利回り銘柄の物色においても、自動車関連への警戒は強まる一方、石油関連や防衛関連などの選好順位は高まりそうです。


(佐藤 勝己)

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