ライブ・ネーション・エンターテインメントは、米国、欧州で大きな力を持つ興行、チケット販売の大手。2025年12月期1Qは、11.0%減収、営業黒字転換。

今1Qは複数のコンサートが延期となったため減収だったが、今2Qに入りチケット販売は順調で完売も多い。今後6~12カ月間の目標株価を180ドルとする。反トラスト法違反の訴訟はリスクだが、中長期で投資妙味を感じる。


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「 決算レポート:ライブ・ネーション・エンターテインメント(今1Qはコンサートの延期で減収。今2Qはチケット販売好調へ) 」


毎週月曜日午後掲載


本レポートに掲載した銘柄 ライブ・ネーション・エンターテインメント(LYV、NYSE)


1.ライブ・ネーション・エンターテインメントの2025年12月期1Qは、11.0%減収、営業黒字転換。

 ライブ・ネーション・エンターテインメント(以下ライブ・ネーション)は、主に米国と欧州で大きな力を持っているコンサート、演劇などの興行とチケット販売の会社です。


 ライブ・ネーションの2025年12月期1Q(2025年1-3月期、以下今1Q)は、売上高33.82億ドル(前年比11.0%減)、営業利益1.15億ドル(前年同期は4,100万ドルの赤字)となりました。


 セグメント別売上高を見ると、コンサート(ライブ、演劇の興行。チケット販売を含む)が24.84億ドル(同13.7%減)、チケット販売が6.95億ドル(同3.9%減)、スポンサー&広告が2.16億ドル(同2.3%増)となりました。

コンサートが延期となったアーティストが複数出たため、コンサートとチケット販売が前年比減収となりました。このため、各種のプロモーション費用、興行費用が減少し、営業黒字となりました。


表1 ライブ・ネーション・エンターテインメントの業績


決算レポート:ライブ・ネーション・エンターテインメント(今1Qはコンサートの延期で減収。今2Qはチケット販売好調へ)
株価 148.87ドル(2025年6月20日)時価総額 34,422百万ドル(2025年6月20日)発行済株数 231.221百万株(完全希薄化後、Diluted)発行済株数 231.221百万株(完全希薄化前、Basic)単位:百万ドル、%、倍出所:会社資料より楽天証券作成。注1:当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。注2:EPSは完全希薄化後発行済株式数(Basic)で計算。時価総額は完全希薄化前発行済み株式数(Dilluted)で計算。注3:ライブ・ネーション・エンターテインメントの開示資料では、過去のEPSの算出を、表中の当期純利益より「Accretion of redeemable noncontrolling interests(償還可能非支配持分の増加)」を差し引いて行っている。ただし、償却可能非支配持分の予想が困難なため、ここでは通常の当期純利益(Net income(loss)attributable to common stockholders of Live Nation)よりEPS、PERを算出し株価を評価した。

表2 ライブ・ネーション・エンターテインメント:セグメント別業績(四半期ベース)


決算レポート:ライブ・ネーション・エンターテインメント(今1Qはコンサートの延期で減収。今2Qはチケット販売好調へ)
単位:100万ドル出所:会社資料より楽天証券作成。注:端数処理のため合計が合わない場合がある。

2.2025年12月期通期は順調な業績が予想される。

 今1Qは、複数のコンサートが延期となったために減収となりましたが、今2Qに入ってからチケットは順調に売れています。会社側によれば、4月に入ってクリス・ブラウンが100万枚を販売、Mumford & Sons、$uicideboy$、レディー・ガガなどが完売しています。会社側によれば、今のところ関税等の影響は見られない模様です。


 今1Q業績と今2Qに入ってからの動向を見て、楽天証券では、2025年12月期を売上高245億ドル(前年比5.8%増)、営業利益12.5億ドル(同51.5%増)、2026年12月期を売上高264億ドル(同7.8%増)、営業利益15.0億ドル(同20.0%増)と予想します。2023年12月期は2022年12月期のコロナ明けの影響が続き大幅増収増益となりました。この反動で2024年12月期は営業減益となりましたが、2025年12月期はチケット販売の好調で大幅増益が予想されます。


 コンサート、演劇の興行とチケット販売が主な事業であるため、季節性が大きく四半期ごとの業績の振れが大きい業態ですが、コンサート、演劇は不況や世の中の変動に対して耐性が強い産業なので、順調な業績が予想されます。


 リスクは訴訟です。2024年5月23日、米司法省と30州はチケット販売サイトのチケットマスターを運営するライブ・ネーションが長年にわたり独占的立場を使って消費者やアーティストに損害を与えてきたとして、反トラスト法違反でライブ・ネーションを提訴しました。

検察側は、ライブ・ネーションが米国内の主要会場で開催されるコンサートの約60%を管理し、チケットマスターを通じて主要コンサート会場のチケット販売の約80%のシェアを持っていると指摘しています。連邦政府と州政府は、陪審裁判の実施と同社の分割も求めています。


 また同日、ライブ・ネーションとチケットマスターに対して、マンハッタンの連邦裁判所において、数百万人のチケット購入者に対する50億ドルの損害賠償を求める集団訴訟が起こされました。


 これらの訴訟は現在も継続中です。ライブ・ネーションの現金並びに現金等価資産は2025年3月末現在約71億ドルあるため、敗訴した場合でも賠償金は支払い可能です。ただし、会社分割はこの会社に投資する魅力を削ぐことになるため、訴訟の結果が注目されます。なお会社側は、この訴訟に対応する目的もあると思われますが、チケット単価を引き下げたいとしており、一部を実施しています(コンサートの前のほうの席を従来よりもやや高く売り、後ろのほうの席を従来よりもやや安く売るなど)。これは転売業者対策でもあります。


表3 ライブ・ネーション・エンターテインメント:セグメント別業績(通期ベース)


決算レポート:ライブ・ネーション・エンターテインメント(今1Qはコンサートの延期で減収。今2Qはチケット販売好調へ)
単位:100万ドル出所:会社資料より楽天証券作成。注:端数処理のため合計が合わない場合がある。

3.ライブ・ネーション・エンターテインメントの今後6~12カ月間の目標株価を180ドルとする。

 ライブ・ネーション・エンターテインメントの今後6~12カ月間の目標株価を180ドルとします。


 楽天証券の2026年12月期予想1株当たり利益(EPS)5.54ドルに、成長性とリスクの両方を考慮し、想定株価収益率(PER)30~35倍を当てはめました。


 中長期で投資妙味を感じます。


注:ライブ・ネーション・エンターテインメントの開示資料では、過去のEPSの算出を、表1の当期純利益より「Accretion of redeemable noncontrolling interests(償還可能非支配持分の増加)」を差し引いて行っている(表1の修正当期純利益)。ただし、「償却可能非支配持分」の予想が困難なため、ここでは通常の当期純利益(Net income(loss)attributable to common stockholders of Live Nation)よりEPS、PERを算出し株価を評価した。


本レポートに掲載した銘柄 ライブ・ネーション・エンターテインメント(LYV、NYSE)


(今中 能夫)

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