トランプ大統領がFRB議長交代を画策し、大手金融機関は警戒。トランプ大統領は銀行の弱体化を望み、財政政策主導の現状を問題視。
新FRB議長とトランプ大統領の思惑
昨日、トランプ大統領は、米連邦準備制度理事会(FRB)議長ジェローム・パウエルの後任候補者への面接を開始したと述べた。JPモルガンをはじめとする大手金融機関は、トランプ大統領のFRB議長の後任人事を恐れている。
エリック・トランプが「ビットコイン2025」の講演で、「正直に言って大手銀行のいくつかは消滅すればいい。そうなるのが当然だからだ」と述べたように、トランプ(一族)は従来の金融システムに不満を持っている。
トランプ大統領は連邦預金保険公社(FDIC)を廃止し、一部の大手銀行の消滅を望んでいるといわれている。彼は米国経済に融資を流入させたいと考えているが、銀行はいつもそれをカジノに変えてしまう。おそらくトランプ大統領は大手銀行やFRB議長の権力を低下させるだろう。トランプ大統領は選挙で選ばれなくても権力を持つ官僚やロビイストを排除しようとしているからだ。
なぜ、株は下がらないのか?
歴史上繰り返されてきた三つのことが到来している。
貿易戦争(関税問題)は中ぶらりんでいまだ貿易協定もなく、中東戦争で大変な地政学的リスクを抱えているにもかかわらず、米国の株価はほぼ最高値に戻っている。これを誰かが説明する必要がある。
S&P500CFD(日足)

ナスダック100CFD(日足)

その答えは、今の相場は財政が主導だからである。
米国財務省は5月に3,160億ドルの予算赤字を計上した。これは過去3番目に大きい額である。政府の総支出は前年比3%増の6,870億ドルとなった。要するに、カネでジャブジャブなのである。
現在の市場において流動性(財政)が依然として最も支配的な要因であることが証明されている。関税でも、政治でも、金利でもなく、流動性のみだ。
債券王のジェフリー・ガンドラック(ダブルライン・キャピタルCEO)は、COVID-19のような緊急事態がないにもかかわらず、米国は2025年に、パンデミック時代のピーク時の通貨増刷と同量の債務を発行すると指摘している。
米国の借金時計 赤字は37兆ドルを超えた!

「金利は主に民間部門の信用の伸びを抑制するための手段であり、今回の景気循環サイクルではそれが問題になったことはない。問題は財政だ」
(リン・オールデン)
経済成長を負債に頼っている今の世界経済で、金利の上昇は本質的に致命的である。円金利急騰による円キャリートレードの巻き戻しも怖い。しかし、放漫財政で急上昇していた日本や米国の金利は、金融当局の強引な介入でとりあえず抑えられている。これが市場の安心につながっている。
日本40年国債金利(日足)

米国30年国債金利(日足)

FRB議長を狙っているウォラーFRB理事やボウマンFRB副議長が7月の利下げに前向きになり、市場の焦点は7月の利下げに移っている。
FF金利先物市場の政策金利予測

しかし、FF金利を下げれば米国の金利全部が下がるわけではないのだ。長期ゾーンは上がってしまう可能性がある。
「FRBは、利下げによる利益と貨幣価値の維持のバランスを取ろうとしており、非常に難しい立場にある。今、経済全体が非常に不透明で、センチメントも悪化している。これに政治的圧力や、今後の債務返済の現実が重なれば、貨幣価値の対立が生じる。そのため、金融政策の変更(特に、その引き下げがあまりに積極的なものであれば)は、大きな懸念につながる可能性がある」
(レイ・ダリオ)
米国関税収入は前年比270%増の過去最高の230億ドルに達したが、米国の赤字解消にはほとんど影響していない。この8カ月間で、予算の赤字は1兆3,700億ドルに達し、史上3番目に大きい額となった。
12カ月間の連邦政府の赤字は現在2兆ドル、国内総生産(GDP)の6.7%で、1年前の6.1%から増加している。生産性を高めずに財政赤字を計上し、国債を発行し、貨幣を増発し続けることはできない。いずれにせよ、米国の赤字支出危機は悪化している。
さて、財政赤字の暴走を止められるものはあるのだろうか?
「この列車を止めるものは何もない。
現時点では、今陥っている負債バブルから抜け出す方法を考えることが先決になる。この負債バブルは、このまま行けば、より一層深刻なインフレへと発展してしまうからだ。財政支配の渦中にあるFRBの選択は、ほとんど全てがまずい。そのことに気づけば、人は平穏な暮らしを送ることができる」(リン・オールデン)
「何が金融危機を引き起こすのか? 皮肉なことに、中央銀行である。中央銀行は時計仕掛けのようにそれを行う。中央銀行は、低金利と量的緩和によって人為的にお金を安くすることで金融危機を引き起こす。そして安いお金がインフレを引き起こすと、ブレーキをかける。中央銀行の好不況サイクルだ」
(ピーター・オンジェ)
「私は、1987年の暴落で利益を得た人を3人しか知らない。ノーマン・フォスベック、ポール・チューダー・ジョーンズ、そして私の友人であり師でもあるラリー・ペサベントだ。私はまとまったカネを蓄えていたが、ブラックマンデーで暴落に見舞われ貴重な教訓を得た。その知識は、2000年と2007年から2008年にかけて私の窮地を救ってくれた。無価値通貨の印刷と消費を抑制しなければ、ハイパーインフレという究極の結末を迎えることになると、私は今でも考えている。
だからこそ私は、私たちが最終的に直面する次の大混乱に備えて、いかに富を守るかに焦点を移しているのだ」(デビッド・バッファロー)
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(石原 順)