先週はイスラエル・イランの早期停戦で原油価格が急落。米国では7月利下げ説が急速に台頭し、S&P500が史上最高値を更新しました。

外国人の買いで日経平均株価も4万円の大台乗せに成功。今週もトランプ関税の先送りでハイテク株中心に続騰しそうですが、米国の景気指標次第では上昇が一服する可能性もあります。


S&P500最高値更新、日経平均4万円台の先は?今週は円高と...の画像はこちら >>

米国の7月利下げ期待でS&P500最高値更新!米国雇用悪化でも利下げ期待がさらに高まれば株価続騰も!?

 先週は中東のイスラエル・イラン紛争が瞬く間に停戦合意にこぎつけ原油価格が急落したことや、米国の中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)高官が7月利下げを容認する発言をしたことで世界的な株高が進みました。


 日経平均株価(225種)は前週末比1,747円(4.6%)高の4万0,150円まで上昇し、約半年ぶりに4万円の大台を回復しました。


 米国株も機関投資家が運用指針にするS&P500種指数が3.44%上昇して2025年2月以来、約4カ月ぶりに史上最高値を更新。


 25日(水)には人工知能(AI)関連の花形株 エヌビディア(NVDA) が最高値を更新して、再び時価総額世界トップに君臨。週間でも9.66%も大幅上昇するなど、イケイケムード一色でした。


 27日(金)に米国トランプ政権のベッセント財務長官が7月9日(水)に迫った相互関税の上乗せ分再発動の9月延期を示唆したことも、今週の日本株の支援材料になりそうです。


 ただ、株価上昇があまりに急ピッチだったこともあり、今週はどこかで上昇の勢いが鈍くなる可能性も高そうです。


 特に米国では7月1日(火)に全米供給管理協会(ISM)の6月製造業景況指数、2日(水)には給与計算代行会社 オートマチック・データ・プロセッシング(ADP) の6月民間雇用統計、3日(木)には4日(金)が独立記念日で祝日のため、6月雇用統計が前倒しで発表されます。


 3日には前回、予想以上に落ち込みの激しかったISM非製造業景況指数も発表。


 非常に重要な米国雇用・景気指標が落ち込むようだと、いよいよトランプ不況が視野に入って株価が調整局面に入る可能性もあるでしょう。


 ただ、4月初旬にトランプ相互関税の上乗せ分が90日間停止されて以降、米国の景気・雇用指標が多少悪化しても、株価は全く気にせず上昇を続けています。


 いまや多少の雇用・景気指標の悪化はFRBの早期利下げ期待につながることもあり、今週も勢いは多少鈍るものの株価が続騰する可能性の方が高そうです。


 日本株は不確実性の高い米国からの資金逃避もあって、外国人投資家が6月第3週まで12週連続で現物株を買い越し。


 4月以降の累計買い越し額は4兆円を超えています。


 さすがに買いの勢いは6月後半に入って鈍っているため、多少の株価調整も考えられそうです。


 先週の為替市場では一時、中東情勢緊迫化による有事のドル買いで1ドル=148円台まで円安が進んだものの、米国の7月利下げ期待が台頭したことで27日(金)の終値は1ドル=144円60銭台まで円高に振れていることも日本株にとって逆風かもしれません。


 日本株、米国株ともに高値警戒感から株価の調整もありえる1週間になりそうです。


 30日(月)の日経平均は、4万円台を超えた前日比からさらに400円高の4万0,550円でスタート。一時は700円高となる4万800円台まで上がり、終値は336円高の4万0,487円でした。


先週:エヌビディア主導のAI相場が復活!原油急落で資源株は反落

 日本時間22日(日)のトランプ大統領によるイラン核施設直接攻撃から始まった先週は、圧倒的な軍事力の差もあり、23日(月)には早くもイスラエル・イランが停戦に合意。


 先手必勝でイランを攻撃し、ほぼ翌日には停戦合意を一早くSNSで発表したトランプ大統領の強引な手腕が功を奏した結果になりました。


 これを受けて急騰していた原油価格は大きく下落。


 米国産ウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)原油(米国の西テキサス地域で産出される良質な原油)の先物価格は前週末比12%超も下落しました。


 原油価格の下落に加え、同じ23日(月)の国際会議で、米国中央銀行FRBのボウマン副議長が「健全な労働市場を維持するため、早ければ次回会合での利下げを支持する」と発言。


 7月29~30日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ期待が台頭したことで米国経済の先行き見通しに対する楽観論が急速に広がり、米国株はハイテク株中心に全面高の展開となりました。


 25日(水)に株主総会を開催した米国高速半導体メーカー・エヌビディア(NVDA)のジェンスン・フアン最高経営責任者が「AIインフラの大規模な刷新は始まったばかり」と述べたことで、半導体やAIデータセンター関連株が日米のイケイケ相場の強力なけん引役になりました。


 日本市場では半導体株の中でも出遅れ感のあった半導体検査装置の レーザーテック(6920) が18.7%高、半導体製造装置国内最大手の 東京エレクトロン(8035) が14.7%高、AIデータセンターに光ファイバーを供給する フジクラ(5803) が10.8%高となるなど、ハイテク株が軒並み急上昇。


 日経平均株価4万円台乗せの原動力となりました。


 週間の業種別上昇率ランキングでは非鉄金属セクターがトップに。


 フジクラなどAIデータセンター株の上昇や、トランプ大統領が鉄鋼・アルミニウムに次いで電子部品の基幹材料である銅の輸入にも追加関税を検討していることを材料に銅の価格が急騰したことが貢献しました。


 多くの半導体関連株が属する電気機器、機械セクターも上昇率上位でした。


 東証プライム市場で最も上昇したのは半導体向け樹脂封止装置メーカーで、中国向け販売が多い TOWA(6315) の21.4%高。


 中国市場に強い半導体株が急反発したことは、対中国向け半導体輸出規制の緩和など米中貿易摩擦の沈静化期待が根強いことの表れでしょう。


 一方、原油価格の急落に伴い、世界中に資源関連の権益を持つ INPEX(1605) が6.2%安となるなど、鉱業セクターが週間の下落率ワーストになりました。


今週:トランプ大統領の利下げ要求が実現すればバブル発生も!?急ピッチな上昇はどこかで小休止!?

 今週は7月9日(水)に迫った米国の相互関税の上乗せ分の再発動がまたもや延期されそうなこともあり、トランプ関税の先送りが株価続伸の支援材料になりそうです。


 トランプ大統領は27日(金)、次期FRB議長の任命について「金利を引き下げるつもりのない候補者は任命しない」と発言。


 先週の半期に一度の議会証言で、トランプ関税の影響を見極めるため、利下げを急ぐ必要はないと改めて発言したパウエルFRB議長をけん制しました。


 トランプ大統領の利下げ要求を受けて、FRBのボウマン副議長や金融緩和に積極的なハト派として知られるウォラー理事に続いて、さらに別のFRB高官が7月利下げに理解を示すような発言をすれば、金利低下が追い風になる米国のハイテク株続騰につながりそうです。


 トランプ大統領は自らに敵対する勢力に対しては容赦ない罵声を浴びせますが、自らの主張に譲歩した勢力に対しては寛容な姿勢を示す傾向があります。


 それは先週のイスラエル・イラク紛争の早期停戦に成功したトランプ大統領が、停戦後もイランに攻撃を続ける味方のイスラエルに対して「爆弾を落とすな」とけん制したことでも明らかです。


 今後、FRBに利下げを促すことで米国の景気悪化の下支えを図るとともに、その元凶となっているトランプ関税に関しては譲歩や猶予を繰り返す方針に政策を転換させれば、トランプ不況どころか、トランプバブルが沸き起こる可能性もありそうです。


 ただし、ほぼ全世界一律10%の相互関税や鉄鋼・アルミニウム・自動車に対する25%関税はすでに発動済みで、今後の米国経済を圧迫していくことは必至の情勢です。


 S&P500やナスダック総合指数が史上最高値を更新した27日(金)には、カナダが米国の巨大IT企業に対して新関税を課す方針であることを理由に、トランプ大統領はカナダとの貿易交渉を突如打ち切りました。


 27日(金)、4月以降、実に7回目となる日米通商交渉のために訪米した日本の赤沢亮正経済再生担当相も日本の国益といえる自動車関税25%の引き下げについて、米国側の譲歩を引き出せなかったもようです。


 トランプ大統領が敵対視するパウエルFRB議長が懸念する通り、米国が同盟国である日本、カナダ、欧州連合(EU)などに対するトランプ関税の発動に関して全く譲歩しない場合、世界経済全体に悪影響が及ぶでしょう。


 カナダの貿易交渉が米国巨大IT企業に対する課税強化の話で決裂したように、米国側の弱点はトランプ関税発動の報復として、株価の高値更新が続く米国巨大IT企業に世界中の国々が報復課税の強化を進めることです。


 カナダ以上に強硬といわれるEUとの交渉は特に今後も難航しそうです。


 トランプ関税の影響が不透明な中での、米国株の最高値更新は少し先走り気味ともいえます。


 今後、トランプ大統領が米国経済へのダメージが少ないうちに、トランプ関税に関して、どの程度、譲歩するのかが7月、8月相場の鍵になるでしょう。


 一方、日本株にとっては円高進行もリスク要因です。


 ただ、低金利の円を高金利のドルに替えて海外で投資する「円キャリートレード」の緩やかな巻き戻しで海外から日本への資金還流が続く間は、旺盛な外国人買いが日本株の上昇要因になりそうです。


 日本では7月1日(火)に日本銀行が企業の景況感を調査した全国企業短期経済観測調査(日銀短観)が発表されます。


 前回4月発表の短観では、大企業非製造業の景況判断が2四半期ぶりに改善した一方、トランプ関税の影響で大企業製造業の景況判断は4四半期ぶりに悪化しました。


 トランプ関税や国内の物価高で大企業の景況感が悪化して、日本株に対する外国人買いの勢いが失速することにも注意が必要です。


(トウシル編集チーム)

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