先週の日本株は、日米関税合意の反動もあり3週ぶりに下落。さらに、米国株市場も米7月雇用統計がサプライズとなり、下落しました。

そのため、今週は軟調なスタートが見込まれます。早期の持ち直しが焦点ですが、日米企業決算や来週は米物価指標発表と集中しています。米景気とインフレを見極めつつ、相場の方向性を探る展開となりそうです。


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著者の土信田 雅之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 【テクニカル分析】今週の株式市場 米雇用統計がもたらす株安を断ち切れるか?~企業決算、米景気&インフレの答え合わせ~<チャートで振り返る先週の株式市場と今週の見通し> 」


「アフター米雇用統計」の国内株は軟調スタートを想定

 8月相場入りとなった先週の国内株市場ですが、週末1日(金)の日経平均株価終値4万0,799円となりました。前週末終値(4万1,456円)からは657円安、週足ベースでも3週ぶりに下落へ転じています。


<図1>日経平均(日足)チャート
【日本株】トヨタ、ソフトバンクGなど決算集中:株安の流れを断ち切れるか?
出所:MARKETSPEEDIIを元に作成

 先週の値動きを上の図1の日足チャートで確認すると、日米の関税合意をきっかけとした前週の上昇分の半分ぐらいのところまで売りに押された格好です。前回の高値(6月30日)付近で下げ止まり、様子をうかがっているようにも見えます。また、直近で株価のサポートとして機能している25日移動平均線までの距離を残す格好で週末を迎えています。


 ただし、今週は「アフター米雇用統計」を迎えることになります。その米雇用統計(7月分)の結果がサプライズとなり、1日(金)の米国株市場では、前日比でNYダウが1.23%安、S&P500は1.59%安、ナスダック総合は2.23%安とそろって下落しました。


 この流れを受けた日経225先物取引は、大阪取引所で2日(土)朝に取引を終えたナイトセッションの終値が3万9,900円と4万円台を下回っており、今週の国内株市場は軟調なスタートが見込まれます。


<図2>日経225先物取引(大取)の日足チャート(2025年8月4日ナイトセッション終了時)
【日本株】トヨタ、ソフトバンクGなど決算集中:株安の流れを断ち切れるか?
出所:MARKETSPEEDIIを元に作成

 そのため、今週の株式市場は、株価の下落が早い段階で持ち直すのか、それとも軟調な展開が続いてしまうのかが焦点となります。日本株については、日経平均4万円台という節目を意識しながら値動きを見極めていくことになります。


 また、上の図2は大阪取引所における日経225先物取引の日足チャートです。


 確かに4万円台を下回ったとはいえ、下落幅が100円程度にとどまっていることや、25日移動平均線が株価のサポートとして機能していること、75日と200日移動平均線の「ゴールデン・クロス」が出現していることなどを踏まえると、日足チャートの上方向への意識を保っているといえます。


 また、これまで何度も「抵抗」となってきた株価の4万円水準を早期に回復することができれば、今度は「サポート」として役割を果たすことになり、チャートの見方もよりポジティブになるでしょう。


 もっとも、下値を探る展開となってしまった場合には、75日や200日移動平均線までを下値の目安として、株価調整を意識する展開になっていくと思われます。移動平均線の値は日々変化していきますが、先週末1日時点の75日移動平均線は3万8,289円、200日移動平均線は3万8,273円になります。


「景況感悪化=利下げ期待で株価上昇」ではなかった先週末の米国株市場

 そこで、あらためて、先週末1日(金)に見せた米国株市場下落の背景にあるものについて、簡単に紐解いてみます。


 まずは、主因となった米雇用統計の結果から見ていきます。概要は下の図3にまとめています。


<図3>米雇用統計の概要(図内の※印は修正前の数値)
【日本株】トヨタ、ソフトバンクGなど決算集中:株安の流れを断ち切れるか?
出所:各種報道およびBloombergデータを元に作成

 今回の雇用統計の結果で市場が敏感に反応したのは、非農業部門雇用者数の変化です。7月分が7.3万人増と、予想(11万人増)を下回ったほか、過去2カ月分の下方修正がサプライズとなりました。

6月分が前回発表の14.7万人から1.4万人に、5月分も14.4万人増から1.9万人へと、ともに大きな修正幅となりました。


 これにより、米国の景気減速懸念と利下げ観測が同時に強まる格好になりました。


 最近までは、景況感の後退を示す経済指標が出てくると、利下げ期待による金利低下が相場を支える場面もみられました。


 しかし、今回の米雇用統計では、修正幅が大き過ぎたことに加え、同日に公表された米7月米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況指数の結果も48.0と、好不況の分かれ目とされる50を下回っただけでなく、市場予想(49.5)や前月(49.0)にも届きませんでした。


 利下げ期待よりも米景気が急減速する可能性の方が意識されてしまい、株価にネガティブに働いたと思われます。


 また、この日はトランプ米大統領が新たな相互関税率を8月7日から適用する大統領令に署名したことも警戒材料となりました。日本をはじめ、これまでに合意に至ったところと、そうでないところを合わせた約70の国・地域に10~41%の税率が今週の木曜日から発動されることになります。


 さらに、決算を受けた個別銘柄の反応も相場の重石となりました。前日7月31日(木)の取引終了後に決算を発表したアマゾン・ドット・コムとアップルですが、アマゾンは4-6月期の業績は良かったものの、7-9月期の営業利益の見通しが予想に届きませんでした。


 そのため、1日(金)のアマゾンの株価は前日比で8.27%安と大きく下落しました。アップルについても好決算だったものの、アマゾンの株安の流れを受けた見通し不安で前日比2.5%となりました。


 したがって、先週末1日(金)の米国株安は複数の悪材料が重なったことが影響したと言えそうです。


来週までは「答え合わせ」の相場が基本シナリオ

 そんな中で迎える今週の米国も、5日(火)に6月分の貿易収支と、7月分のISM非製造業景況指数が公表されます。


 これらの結果が米景気の急減速不安を和らげることができれば、相場が持ち直すと思われますが、ある程度株価を戻すことができても、積極的に上値をトライするのは難しいかもしれません。


 というのも、来週は消費者物価指数(CPI)が12日(火)に、卸売物価指数(PPI)が14日(木)に、そして輸入物価指数が15日(金)と、米国の物価動向を示す統計の公表が相次ぐ「物価指標ウィーク」になり、インフレが抑制的なのか否かが注目されます。


 仮に、米景気への警戒がくすぶる中、来週の物価関連指標でインフレが加速するような兆候が見られた場合、しばらく大人しかった「スタグフレーション」への不安が再燃することになり、株式市場が軟調になってしまうことも考えられます。


 そのため、経済指標面から捉えた相場シナリオは、来週末までは「景気とインフレ動向の答え合わせ」になっていくというのが基本になりそうです。


日米決算ラッシュと需給要因もカギ

 また、先週と同様に日米で相次ぐ企業決算も注目材料になります。


 とりわけ、国内ではトヨタ自動車や三菱UFJフィナンシャル・グループ、ソフトバンクグループといった主力株を中心に1,500を超える企業が決算を発表してピークを迎えます。


 米国でも、これまで株価を大きく上昇させてきたパランティア・テクノロジーズをはじめ、AMDやオン・セミコンダクターといった半導体関連企業、マクドナルドやロウズといった消費関連企業などの決算が予定され、こうした企業業績と見通しの動向が市場のムードに影響を与えそうです。


 ただ、先週の米国株市場では、先ほどのアマゾン・ドット・コムをはじめ、マイクロソフトやメタ・プラットフォームズといった「ハイパースケーラー」が好決算を示しながらも株価が伸び悩んだり、その恩恵を受けるとされる半導体関連銘柄の一角が売られるといった具合に、市場の反応が一筋縄ではいかなくなりつつあります。


<図4>米「マグニフィセント・セブン(M7)」銘柄のパフォーマンス比較(2025年8月1日時点)
【日本株】トヨタ、ソフトバンクGなど決算集中:株安の流れを断ち切れるか?
出所:MARKETSPEEDIIデータを元に作成

 なお、主力とされる米マグニフィセント・セブン(M7)についても、エヌビディアを除く6銘柄が先週までに決算発表済みとなっています。


 上の図4にもあるように、決算発表後の株価の動きに明暗が分かれたほか、先週末1日(金)時点で昨年比マイナスに沈む銘柄の方が多くなっていることが確認できます。


 材料の出尽くし感がある中、残るエヌビディアの決算が8月28日の取引開始前に予定されていますが、それまでの約3週間は、米金利動向や景況感などをにらみながら株価の落ち着きどころを探る展開になりそうです。


 このほか、市場参加者が夏季休暇を取り始める時期に差し掛かる中、今週末8日(金)の国内株市場は、オプション・mini先物取引のSQ日でもあるため、国内株については、状況によって値動きが大きくなってしまう展開も想定しておく必要がありそうです。


(土信田 雅之)

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