過去1年ほど調整局面にある日本の半導体関連株について、指数のパフォーマンスやEPSの推移をもとに今後の展望を予想します。
1. 日本の半導体関連株は1年ほど調整している
日本の半導体関連株は過去1年ほど調整局面にあります。下図は、日経半導体株指数の推移ですが、同指数の公表が始まったのは2024年3月25日で(1万1,531.65ポイント)、直後の7月11日に最高値(1万2,307.09ポイント)を付け、その後は、調整局面入りしています。
トランプ米政権による関税ショックで、今年4月7日に6,161.57ポイントの安値を付けた後は反発していますが、指数公表開始当初の水準には回復できておりません。
同指数は2011年11月30日にさかのぼって遡及(そきゅう)算出されていますが、過去を振り返ると今回のような調整局面は何度もあったようで、その調整期間も今回と同じような長さ、あるいは、もう少し長い程度であったことが分かります。
半導体株が調整する大きな理由の一つは「上がり過ぎの反動」です。成長期待が大きい産業なので、業況が絶好調時に上がり過ぎてしまい、好調さに少し陰りがみられると(対中輸出規制など)反落してしまう傾向があります。足元の調整はそうした状況なのかもしれません。
[図表1] 日経半導体株指数の推移

2. 半導体産業の今後の利益成長は堅調予想
半導体産業は成長期待が大きいと説明しましたが、当面の業績動向を確認してみましょう。下図は、日経半導体株指数と同12カ月先予想1株当たり利益(EPS)の推移です。
同指数は新しい指数なので、過去のファンダメンタルズ・データは十分なものではありませんが、当面の業績予想は堅調なようで、12カ月先予想EPSはこの先の1、2年後にかけて、毎年2桁成長が予想されています。
ただし、観測できる範囲で株価とEPSの勢いを比較すると、昨年前半の株価の勢いが過剰であった可能性は否めず、今回も「上がり過ぎの反動」に遭遇してしまった可能性が高いと考えています。
しかし、この1年間に上がり過ぎた株価の調整が進んだようにも見えるので、今後は将来の利益成長を再評価してくれるのではないかと期待しています。また、12カ月先予想EPSで見た株価収益率(PER 株価÷EPS、株価水準の評価尺度)についても、足元の6月20日では20倍程度と、昨年の最高値時の26倍程度よりは割高感が解消してきたことも株価の支えになるでしょう。
[図表2] 日経半導体株指数と同12カ月先予想EPSの推移

3. 今後の業績動向は製造後工程などの高い伸びが予想されている
日経半導体株指数ベースでは過去のファンダメンタルズ・データに限りがあったので、最後に、同指数(トータルリターン指数)をトラックしている弊社ETF『NEXT FUNDS 日経半導体株指数連動型上場投信』の上位5銘柄で過去のEPS推移と今後のEPS予想を見てみましょう。
下図は、2025年5月末時点の上位5銘柄(東京エレクトロン、アドバンテスト、ディスコ、ルネサスエレクトロニクス、ソニーグループ)の過去のEPS推移と将来のEPS予想の推移です。
特に成長が著しいのがアドバンテストやディスコといった、半導体製造工程の「後工程」(仕上げや検査など)を担当する企業です。
半導体市場では、人工知能(AI)向け半導体など、チップサイズが大型で高価な製品の売れ行きが好調なようで、大型なので検査などに時間を要することに加え、高価ゆえに歩留まりを高めて収益性を確保するために、後工程を強化しているのではないかと考えられます。
当面はこうした状況が続くことが想定されるため、後工程の半導体関連株に支えられながら、半導体関連株全般の株価上昇が期待できるのではないでしょうか。
[図表3] 「NEXT FUNDS 日経半導体株指数連動型上場投信」の上位5銘柄のEPSの推移

記載されている個別の銘柄については、参考情報を提供することを目的としており、特定銘柄の売買などの推奨、また価格などの上昇や下落を示唆するものではありません。上記は過去のデータであり、将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではありません。
<関連銘柄>
NEXT FUNDS 日経半導体株指数連動型上場投信(証券コード:200A)
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(阪井 徹史)