石炭価格軟化で「ダークスプレッド」拡大、5年ぶり最良の時期が到来
中国の火力発電セクターは、「ダークスプレッド」(石炭火力発電所の収益性指標:電力価格と石炭コストとの差)拡大と金利低下を背景に、ここ5年間で最良の時期を迎えている。仮に電力価格が低下しても2026年まで相対的に高い利益率を維持する見込み。
中国の電力価格は年次ベースでほぼ横ばいに推移しているが、月次では石炭(一般炭)価格相場の下落トレンドに追随している。上期の石炭スポット価格が前年同期比約23%下落し、石炭輸入量が高水準を維持する中、BOCIはダークスプレッドが2025年に拡大すると予想。今夏の酷暑が一時的に石炭在庫の縮小を招く可能性に言及しながらも、9月以降は再び、石炭価格の下落局面が到来する見通しを示した。続く2026年についても、政策面で変更がない限り、石炭価格の軟調は続くと予想。電力各社は1MWh当たり150元という十分なダークスプレッドを維持できるとみる。
中国は2026年に始まる第15次5カ年計画期間中に、風力および太陽光発電容量を1,300GW増やす計画(総投資額4兆4,000億元を予想)。ただ、風力・太陽光発電が2024年の総発電量のほぼ20%を占めたことや出力制限の再開などから、BOCIは同5カ年の再生可能エネルギーの新規導入ペースはより緩やかになる可能性を指摘。こうした環境の下、設備投資がピーク期を過ぎた電力各社のバランスシートは徐々に改善するとみている。2024-25年の設備投資の30%の縮小に伴い、全体の純負債比率は2024年末の70%から、2027年末までには25%に低下する見通しという。
一方、中国の事実上の政策金利である最優遇貸出金利(LPR、ローンプライムレート)は、1年物が3%、5年物が3.5%まで低下しており、国有企業である電力各社は低金利での資金調達が可能となっている。BOCIのリサーチによれば、国有資本の電力会社の場合、借入金利の中央値が上期に前年同期比0.2ポイント低下。2024年の純利益の35-150%を占めた金利支出の削減が進む見通しとなった。
また、国内の低金利環境下では、電力各社の配当の魅力が増す。BOCIは各社の配当の持続可能性は高いとし、政策要因から株主還元への意欲も高いとみている。各社の2025年予想配当利回りは現在6.0-6.8%の水準にある(中国の10年物国債利回りは約1.7%)。
BOCIはカバー銘柄4社の利益見通しを調整。4社の株価の先行きに対し、いずれも強気見通しを維持している。
(Bank of China int.)