先週は米国トランプ政権が日本への相互関税や自動車関税を15%に引き下げたことで自動車株や出遅れ輸出株が急騰しました。トランプ大統領はEUへの関税も15%に引き下げたため、今週も株価続騰の可能性が高いでしょう。

トランプディール(取引)成立への熱狂に加え、マイクロソフトなど米国巨大IT企業の好決算連発に期待したいところです。


EU関税引き下げで世界株高加速?米経済指標とマイクロソフト・...の画像はこちら >>

今週は米国GDP、物価指標、雇用統計も相場の上昇要因に!?  

 先週は米国トランプ政権が日本へ課す関税率を25%から15%に引き下げたビッグニュースで日本株が急騰しました。


 日経平均株価(225種)は、相互関税だけでなく自動車関税も15%に引き下げられたことがサプライズとなり、23日(水)に前日比1,396円(3.5%)高。


 週間でも前週末比1,637円(4.1%)高の4万1,456円まで上昇し、今週は昨年2024年7月11日につけた終値ベースの史上最高値4万2,224円超えも視野に入っています。


 トランプ関税引き下げで自動車株をはじめ大型の出遅れ輸出株が幅広く買われたため、大型輸出企業の組み入れ比率が高い東証株価指数(TOPIX)は24日(木)、2,986ポイントの史上最高値を更新。週間でも4.1%の上昇となりました。


 一方、日本への関税引き下げで他国との通商交渉進展に対する期待感が高まったことで、米国株も機関投資家が運用指針にするS&P500種指数が前週末比1.46%高と最高値を更新。


 トランプ関税の悪影響を受けやすい製造業の組み入れ比率が高いダウ工業株30種平均も1.26%上昇し、今週は7カ月半ぶりの史上最高値更新に期待が集まります。


 今週は27日(日)に米国トランプ政権が6,000億ドル(約88.6兆円)の対米投資の見返りに欧州連合(EU)への関税率を15%に引き下げることで合意したことを受け、世界的な株価上昇に拍車がかかりそうです。


 8月1日(金)の相互関税発動前の土壇場で、日本やEUとの鮮やかな「関税ディール(取引)」を成功させたトランプ大統領の「タリフマン(関税男)」から「株価に優しいビジネスマン」への一変に今週、株式市場がどれぐらい熱狂するか見物です。


 その他にも、今週は米国で重大イベントが満載です。


 30日(水)夜には2025年4-6月期の米国実質国内総生産(GDP)の速報値が発表になり、米連邦公開市場委員会(FOMC)で5会合連続の利下げ見送りが発表される見通しです。


 8月1日(金)には、早くも7月の米国雇用統計も発表。


 ここまでは米国経済指標に対するトランプ関税の悪影響があまり顕著になっておらず、今週も良好な結果の発表が続けば、株価にとって最高の追い風になりそうです。


 さらに、31日(木)早朝には人工知能(生成AI)開発で先行する マイクロソフト(MSFT) やフェイスブックの親会社 メタ・プラットフォームズ(META) 、8月1日(金)早朝には アップル(AAPL) や アマゾン・ドット・コム(AMZN) といった米国巨大IT企業の2025年4-6月期決算も発表になります。


 日本では31日(木)終了の日本銀行の金融政策決定会合も大変重要です。


 1年前の2024年7月31日には日銀が政策金利を0.25%に追加利上げを発表し、直後の記者会見で植田和男日銀総裁が金融引き締めに積極的なタカ派姿勢を鮮明にしたことで、8月5日には日経平均株価が過去最大の下落幅4,451円も暴落した「令和のブラックマンデー」が発生。


 米国経済の不確実性が高いため、今回は利上げが見送られる見通しですが、日銀会合終了後の植田総裁の発言に注目が集まりそうです。


 また、20日(日)の参議院選挙での与党大敗を受けて日本では「石破茂首相下ろし」の機運が高まっています。


 今週、石破首相が辞任を表明して、新たな自民党総裁を選ぶ選挙日程などが発表されれば、その期待感で日本株が続伸する可能性もあるでしょう。


 日経平均は28日(月)、前営業日比59円高の4万1,515円で今週がスタート。その後続落し457円安の4万0,998円で終え、4万1,000円を下回る形となりました。


先週:日本では銀行株、出遅れ輸出株が急騰!米国株はアルファベットなど好決算企業が最高値相場をけん引!

 先週はトランプ大統領が日本に対する自動車関税を15%に引き下げたことがビッグサプライズとなり、日本株では輸送用機器セクターが週間の業種別上昇率2位になりました。


 主力の トヨタ自動車(7203) が前週末比10.8%も上昇し、関税引き下げのニュースが報じられた23日(水)には1日で時価総額が5兆円超も増加しました。


 米国向け輸出車比率の高い マツダ(7261) が11.6%高、 SUBARU(7270) が12.8%高と特に急騰しましたが、25日(金)には「引き下げられたといっても依然関税率は従来の2.5%を大きく上回る15%」といった思惑から下げに転じているため、今週も上昇が続くかどうかは不透明です。


 また、トランプ関税引き下げで日銀が物価高対策の追加利上げを行いやすい環境になるという思惑から、金利上昇が収益向上につながる銀行セクターも急騰。


 週間の業種別上昇率では自動車株を上回る1位となりました。


 主力の 三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306) が9.6%高となるなど、主力のメガバンク株が全面高となり、国内長期金利の指標である10年国債の利回りは1.597%と17年ぶりの水準まで上昇しています。


 その他では、AIデータセンター向け光ファイバーの販売が好調な フジクラ(5803) が9.5%高になるなど非鉄金属セクター、米国への輸出比率の高い機械、鉄鋼、精密機器や海運など株価に出遅れ感のある輸出関連セクターが週間の業種別上昇率上位に名を連ねました。


 全33業種が上昇する全面高になりましたが、米国からの農産物輸入拡大が業績のマイナス要因になりそうなディフェンシブ色の強い食料品、水産・農林業などは上昇率下位に沈みました。


 一方、米国株は好調な米国企業の決算発表も株価上昇のけん引になりました。


 23日(水)発表のグーグルの親会社 アルファベット(GOOGL) の2025年4-6月期決算はクラウド事業の成長で売上高が予想を上回る前年同期比32%増となり、株価は前週末比4.39%上昇しました。


 一方、営業利益が前年同期比42.4%減と大幅減益だった電気自動車の テスラ(TSLA) が4.12%安となるなど、一部の業績悪化企業は売られました。


今週:米国の景気、雇用、物価指標の発表で続伸?FOMC、日銀会合は無風通過が濃厚か

 今週は米国で重要経済指標の発表が相次ぎ、29日(火)には6月雇用動態調査(JOLTS)の求人件数(前月から求人数が低下する予想)、米国の民間調査会社コンファレンスボードの7月消費者信頼感指数(前月よりも好転する予想)が発表。


 30日(水)には前回6月分が予想外の前月比マイナスだった給与計算代行会社 オートマチック・データ・プロセッシング(ADP) 社の7月民間雇用統計、そして米国の2025年4-6月期の実質GDP速報値も発表されます。


 予想ではトランプ関税でも堅調な個人消費を背景に、米国の実質GDPは前期比年率換算で2.4%の増加と2025年1-3月期のマイナス0.5%成長からプラスに回帰する見通しで、実際にプラス転換すれば米国株がさらに上昇しそうです。


 31日(木)発表の6月個人消費支出の価格指数(PCEデフレーター)では、米国の中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)が最重要物価指数と見なす、変動の激しい食品・エネルギーを除いたコアPCEデフレーターが前年同月比2.7%の上昇と前月と同じ伸び率になる予想です。


 8月1日(金)には7月の米国雇用統計も発表。

前回6月に前月比14.7万人増と予想以上に堅調だった非農業部門新規雇用者数は11.0万人増の予想です。


 7月30日(水)終了のFOMCでは5会合連続の政策金利据え置きが濃厚です。


 先週24日(木)には、トランプ大統領がパウエルFRB議長とともにFRB本部の改修工事現場を視察するという異例のパフォーマンスを行い、公然と利下げ圧力をかけました。


 しかし、パウエル議長の解任には否定的な見解を示しています。


 今回のFOMCで利下げが行われなかった場合も、口先攻撃はするものの、トランプ大統領がパウエル議長解任を強行して米国売りを加速させることはないでしょう。


 一方、31日(木)には日銀の金融政策決定会合も終了。


 先の参議院選も物価高が与党大敗の一因だっただけに、米国経済の不確実性を理由に利上げを遅らせている日銀に対する批判も高まりそうです。


 先週の為替市場ではトランプ関税引き下げで日銀の早期利上げ観測が高まり一時1ドル=145円80銭台まで円高が進みました。


 しかし、今週の政策決定会合で日米中央銀行が金融政策について様子見をする見方が強まり、25日(金)には1ドル=147円60銭台まで円安方向に戻しています。


 今週は日本でも半導体や銀行などの2025年4-6月期決算発表があります。


 29日(火)には半導体検査装置の主力株 アドバンテスト(6857) 、31日(木)には半導体製造装置メーカー最大手の 東京エレクトロン(8035) や、先週株価が急騰した みずほフィナンシャルグループ(8411) など多くの企業が決算発表。


 関税が引き下げられたといっても、もともと25%と異常に高かったものが15%関税と従来よりもまだ非常に高い水準まで引き下げられただけです。


 輸出企業を中心に今期2026年3月期の業績見通しを引き下げる企業が続出する恐れがある点に注意が必要です。


 27日(日)、トランプ大統領とEUの行政執行機関、欧州委員会のフォンデアライエン委員長の会談でEUの関税率が日本と同じ15%に引き下げられたことで、今後は中国、インド、カナダ、メキシコなど主要な貿易相手国への関税率引き下げが続き、「トランプ関税」が骨抜きになる可能性も出てきました。


 まさに高い関税率で脅して他国から好条件の対米投資を呼び込む「トランプディール」が大成功したわけですが、半ば自作自演であまりにも強引なトランプ大統領の手法が今後も株式市場の「波乱要素」になり続けることだけは確実といえるでしょう。


(トウシル編集チーム)

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