平均分配金利回りが4.8%と高水準で、投資家の注目を集めるJ-REIT(Jリート:東京証券取引所に上場する国内の不動産投資信託)。聞いたことはあっても、「一体どんな資産に投資している商品なの?」と疑問に思う方も多いでしょう。
今日のクイズ
J-REIT(国内の不動産投資信託)は、株式の一種で、東京証券取引所に上場しており、株と同じように取引所が開いている時間に売買できます。7月28日時点で分配金利回りが4.8%と高いことが魅力です。利回りを重視する投資家にとって、分散投資する価値が高いと考えられます。
それでは、クイズです。
【クイズ】以下【A】~【G】のうち、J-REITの投資対象に入るものは、どれでしょう? 該当するものを、全て選んでください。
【A】東証に上場している不動産株
【B】オフィスビル
【C】賃貸住宅・マンション
【D】物流施設(倉庫)
【E】商業施設
【F】ホテル・リゾート施設
【G】ヘルスケア施設(有料老人ホーム)
J-REITの市場概況
J-REITの銘柄数は7月28日時点で57銘柄です。時価総額は合計約15.8兆円です。
J-REITの市場全体の動きを表す指数として、東証REIT指数と配当込み東証REIT指数があります。2010年1月末を100とした指数につくり替えて2010年以降の動きを比較した以下のグラフをご覧ください。
<東証REIT指数と、配当込みREIT指数の月次推移:2010年1月~2024年7月(28日)>

【1】配当込み東証REIT指数
東証REIT市場全体に分散投資した場合の、トータルリターン(受け取った配当金+価格変動)を示しているのが、配当込み東証REIT指数の動きです。2010年1月に100を投資したと仮定すると、2025年7月に約385(約3.85倍)になっていることが分かります。
ところが、2020年1月以降だけを見ると、ほとんど上がっていません。コロナショックの急落を取り返していますが、そこからはあまり上がっていません。
【2】東証REIT指数
東証REIT市場全体に分散投資した場合の、価格変動だけを表しているのが東証REIT指数の動きです。受け取った分配金は、リターンに含まれていません。
2020年1月以降は下落トレンドが続いてきました。分配金を受け取っても、値下がりによりトータルリターンがほとんど得られない状況が続きました。2025年に入ってからやっと底打ち・上昇トレンドに入りつつあります。
平均分配金利回りは4.8%
東証REITの平均分配金利回りは、7月28日時点で4.8%です。2021年8月には3.3%まで低下していました。ところが2022~2024年まで3年間にわたりJ-REITの価格下落が続いたため、利回りは2024年末には5.2%まで上昇しました。2025年には、J-REITの高利回りが見直されて買われたため、利回りは足元4.8%へ低下したところです。
<日経平均と東証REIT指数の動き比較:2019年末~2025年7月28日>

J-REIT全体の平均分配金利回りは、4%が妥当と私は判断しています。利回りが4%を下回っている時、J-REITは「割高」、4%を上回っている時は「割安」と私は判断します。現在、4.8%まで利回りが上がっており、「割安」と判断しています。
クイズの正解
【B】【C】【D】【E】【F】【G】全て、REITに組み入れることが可能です。
組み入れ対象でないのは、【A】東証に上場している不動産株だけです。
【B】オフィスビル
【C】賃貸住宅・マンション
【D】物流施設(倉庫)
【E】商業施設
【F】ホテル・リゾート施設
【G】ヘルスケア施設(有料老人ホーム)
J-REITには、さまざまな種類があります。もともとは、オフィスビルや住宅・マンションに投資するファンドがほとんどでしたが、近年は、利回りが稼げるさまざまなものに投資されています。代表的な銘柄は、以下です。
<J-REIT、投資の参考銘柄:分配金利回りは7月28日時点予想>

上記に挙げたように、J-REITにはいろいろな種類があります。
【1】オフィス・リート(主にオフィスビルに投資)
【2】レジデンシャル・リート(主に住宅・マンションに投資)
【3】物流リート(主に物流施設に投資)
【4】リテール・リート(主に商業施設に投資)
【5】ホテル・リート(主にホテル・リゾート施設に投資)
ただし、一つの種類だけに投資しているREITは必ずしも多くありません。実際には一つではなく、複数の種類のアセットに投資している「総合型」REITが多くなっています。上の表の「主な投資対象」では、コア・アセットとして投資しているものだけを示しています。
J-REITに投資したいと思うものの、どの銘柄を選んでよいか分からない方は、最初は、投資信託で「東証REIT指数インデックスファンド」に投資するのも良いと思います。小口資金で、さまざまなJ-REITに分散投資できます。東証REIT市場全体の平均値に投資することになります。
【参考】不動産への小口投資を可能にしたREIT
REITとは何かご存じない方もいらっしゃると思いますので、基礎的なことから説明します。REITは、不動産への小口投資を可能にした「上場投資信託」です。
個人投資家が不動産に投資する場合、ワンルームマンションからアパート1棟までさまざまな投資対象がありますが、かなり大きな金額が必要です。資金規模の制約から、個人投資家が直接投資できる対象は限られます。
REITを通じて投資すれば、都心一等地の大型ビルに投資することもできます(図A)。
<図A>REITを通じて大型物件に投資

一等地の大型ビルにテナントが集中し、競争力のないビルからテナントが流出する「不動産の二極化」が顕著に見られる時代になりました。投資するならば、一等地の大型ビルに投資したいと考えます。
ところが、REITが普及するまでは、一等地の大型ビルに投資するには何百億円という規模の資金が必要でした。個人投資家の不動産投資では、小口で投資できるマンションなどが中心になり、大型ビルへの投資は困難でした。REITの普及によって、状況が変わりました。今では、小口資金でも、REITを通じて、大型ビルに投資することもできるようになりました。
テクニカル・ファンダメンタルズ分析を詳しく勉強したい方へ
最後に、株式投資を書籍でしっかり勉強したい方に、私の著書を紹介します。ダイヤモンド社より、株価チャートの読み方をトレーニングする「株トレ」(黄色の本)と、決算書の見方などを学ぶ「株トレ ファンダメンタルズ編」(水色の本)が出版されています。どちらも一問一答形式で株式投資の基礎を学ぶ内容です。
「 2000億円超を運用した伝説のファンドマネジャーの株トレ 」
「 2000億円超を運用した伝説のファンドマネジャーの株トレ ファンダメンタルズ編 」

(窪田 真之)