8月1日発表の米雇用統計はネガティブ・サプライズでした。この衝撃を受けて、日経平均は目先調整が予想されます。

それでも、外国人投資家が日本株を評価して買う流れは続くと予想します。調整局面では割安な日本株を時間分散しながら買い増ししていくことが推奨されます。


今週の日経平均は続落?米雇用統計ショック!激怒したトランプ大...の画像はこちら >>

利益確定売りが広がって日経平均反落

 先週(営業日7月28日~8月1日)の日経平均株価は、1週間で656円下がり4万0,799円となりました。先々週(営業日7月22~25日)に日経平均は1週間で1,637円上昇して一時4万2,000円を超えました。日本に対する相互関税・自動車関税が15%に引き下げられるとトランプ大統領が発表したことが好感されました。


 先週は、上昇ピッチの速さに警戒が広がり、利益確定売りが優勢となりました。


日経平均週足:2024年1月4日~2025年8月1日
今週の日経平均は続落?米雇用統計ショック!激怒したトランプ大統領が統計局長解雇(窪田真之)
出所:楽天証券MSIIより作成

 日経平均は2024年以来、長らく3万8,000~4万円のレンジに閉じ込められてきました。


 いったん、このレンジから上放れたように見えますが、まだトランプ関税の不安に関連した波乱は続きそうです。日経平均が4万円まで売られる局面もまだあるかもしれません。


 今週の日経平均は、米雇用統計ショックで続落する見通しです。8月1日に発表された7月の米雇用統計がネガティブ・サプライズ(悪くて驚き)で、米景気にやや不安が生じたことが影響しそうです。


7月の雇用統計がネガティブ・サプライズ

 8月1日に発表された7月の米雇用統計・非農業部門雇用者数がネガティブ・サプライズでした。7月の伸びが低かったことに加え、5月・6月の雇用者増加数が合わせて25.8万人の大幅引き下げとなったことがショックとなりました。


米雇用統計・非農業部門の雇用者増加数(前月比):2021年1月~2025年7月
今週の日経平均は続落?米雇用統計ショック!激怒したトランプ大統領が統計局長解雇(窪田真之)
出所:米労働省より楽天証券経済研究所作成

 非農業部門の雇用者数が、前月比で20万人以上(赤いラインの上まで)伸びていれば米景気は好調とみなされます。

今回の下方修正によって、トランプ政権が始まって以来、トランプ関税への不安から雇用者の伸びが大きくへこんでいることが分かりましが、速報値では、5月が14.4万人増、6月が14.7万人増でした。


 関税不安がある割には雇用は堅調とみられていましたが、その見方が今回の下方修正で変わってしまいました。トランプ関税の不安で、米雇用に急ブレーキがかかっていることが分かりました。


 なお、今回の雇用統計が非常に弱かったことに対してトランプ大統領は激怒し、この統計を所管している労働統計局長のマッケンターファー氏を解雇しました。統計が政治的意図をもって操作されたと主張しています。


 なお、完全失業率は7月は4.2%でした。4%台前半で長らく安定しています。


米雇用統計・完全失業率2021年1月~2025年7月
今週の日経平均は続落?米雇用統計ショック!激怒したトランプ大統領が統計局長解雇(窪田真之)
出所:米労働省より楽天証券経済研究所作成

米雇用不安で目先調整も、米景気ソフトランディングの見方は変わらず

 日経平均は目先、米雇用不安で調整が予想されます。ただし、4-6月期の米国の国内総生産(GDP)(速報値)が前期比年率3.0%増と強く出ていること、生成AIを中心とした半導体・ハイテク需要の伸びが続くと考えられることから、米景気ソフトランディングの見方は変わりません。


 外国人投資家が、日本株の組み入れを引き上げる流れは続くと考えています。いつもお話している通り、日本株の動きを決めているのは外国人投資家です。トランプ関税ショックで日経平均を急落させたのも、その後急反発させたのも、外国人投資家です。


 外国人投資家の買いと、日本企業の自社株買いが、トランプショック後の日本株上昇を支えてきました。

外国人投資家から見ると、日本株は世界景気敏感株です。世界景気悪化への不安が低下した中で、外国人投資家による日本株の組み入れ引き上げが続いてきたことが、日経平均の上昇につながりました。


 日本企業による自社株買いが急増していること、日本に対するトランプ関税が15%へ引き下がるとの発表があったことも、外国人による日本株買いを増加させる要因となりました。


トランプ関税ショック:日経平均の動きと外国人投資家売買動向:2025年3月24日~8月1日(外国人売買は7月25日まで)
今週の日経平均は続落?米雇用統計ショック!激怒したトランプ大統領が統計局長解雇(窪田真之)
出所:東証データ・QUICKより楽天証券経済研究所が作成。外国人売買は7月25日までで株式現物と株価指数先物の合計

トランプ関税ショック時の外国人売買、株式現物と先物の内訳
今週の日経平均は続落?米雇用統計ショック!激怒したトランプ大統領が統計局長解雇(窪田真之)
出所:東証データ・QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 トランプ関税ショックの日経平均急落は、外国人投機筋の日経平均先物の売りで引き起こされました。ところが、その後、長期投資の外国人投資家が、日本株現物を買うことで、日経平均が急反発してきました。


 米国株に集中させてきたグローバル投資家の投資資金が、一部ドイツ株や香港株に移り、さらに一部日本株に移っていると考えられます。


 世界景気悪化への不安が低下した中、割安な日本株を見直す動きが出ていると思われます。


日・米・独・香港株の年初来推移:2024年末=100として指数化、2025年8月1日まで
今週の日経平均は続落?米雇用統計ショック!激怒したトランプ大統領が統計局長解雇(窪田真之)
出所:QUICKより楽天証券経済研究所作成

日本株の投資判断

 日本株の投資判断ですが、いつも書いてきたことと変わりません。日本株は割安で長期的な上昇余地が大きいと判断しています。ただし、トランプ関税ショックはまだ終わっていません。これからも急落・急騰を繰り返しながら、上昇していくと考えています。時間分散しながら、割安な日本株を買い増ししていくことが、長期的な資産形成に寄与すると考えています。


 朝8時に掲載される「3分でわかる!今日の投資戦略」の土曜日版が始まりました。土曜日は、私(窪田真之)が執筆しています。土曜日版もぜひお読みいただけるとうれしいです。


▼著者おすすめのバックナンバー

2025年8月2日: トランプ政権後に残るものは?「相互関税」の真意と日本の取るべき道を考える(窪田真之)
2025年7月29日: 日本、EUが米国と関税合意。日経平均急騰だが最悪シナリオは回避できたのか?(窪田真之)
2025年7月26日: トランプ関税、着地見えた?日経平均、年末4万4,000円の予想維持(窪田真之)


(窪田 真之)

編集部おすすめ