アドバンテストの2026年3月期1Qは、90.1%増収、営業利益4.0倍。SoCテスタが台湾向け等に大きく伸びた。
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著者の今中 能夫が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 決算レポート:アドバンテスト(今1Qは大幅増収増益だが、今2Qから調整局面へ) 」
毎週月曜日午後掲載
本レポートに掲載した銘柄: アドバンテスト(6857、東証プライム)
1.アドバンテストの2026年3月期1Qは、90.1%増収、営業利益4.0倍。
アドバンテストの2026年3月期1Q(2025年4-6月期、以下今1Q)は、売上高2,637.76億円(前年比90.1%増)、営業利益1,239.52億円(同4.0倍)となりました。AI半導体向けにSoCテスタが大幅に伸びたことによって、前年比で大幅増収増益となり、前4Qを上回る業績となりました。
製品・サービス別に見ると、SoCテスタは前3Q1,130億円、前4Q1,488億円、今1Q1,913億円と好調でした。引き続きAI半導体向けが好調ですが、第2四半期の前倒し出荷があったため、会社予想よりも大きな売上高になった模様です。
一方で、メモリ・テスタは前3Q546億円、前4Q351億円、今1Q335億円と若干減少しました。
地域別に見ると、台湾向けが前4Q1,331億円、今1Q1,621億円へ増加しました。SoCテスタが好調でした。中国向けは前4Q446億円から今1Q390億円へ減少しましたが、韓国向けを上回っており高水準でした。韓国向けは前4Q237億円から今1Q327億円に増加しました。メモリ・テスタが増えたと思われます。
表1 アドバンテストの業績

表2 アドバンテストの事業セグメント別売上高(新セグメント)

表3 アドバンテストの地域別売上高

2.AI半導体の需要は引き続き好調だが、大手ITの設備投資には過熱感もある。
AI半導体の需要は引き続き順調に伸びていると思われます。これは、2025年4-6月期のTSMCと、最近発表された米国大手ITの決算発表で明らかです。グラフ1は大手IT4社(アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト、アルファベット、メタ・プラットフォームズ)の四半期ベース設備投資を見たものですが、2025年4-6月期に大きく伸びたことがわかります。
一方で、4社合計の営業キャッシュフローに占める設備投資の比率(営業キャッシュフロー・設備投資比率)は2025年1-3月期からさらに上昇しました。
一方で、アマゾンは同147.0%→99.0%へ低下はしたものの、ほぼ100%であり、AWSの業績も17.5%増収、8.8%営業増益とマイクロソフトのインテリジェントクラウド事業、アルファベットのグーグルクラウド事業に対して伸びが低いものになっています。アルファベットはグーグルクラウドが好調ですが、営業キャッシュフロー・設備投資比率が同47.6%→80.9%と急上昇しています。
2025年7-9月期のIT大手4社の設備投資は会社によって高原状態か、緩やかに伸びると思われます。ただし、これまでのような四半期ベースでの急成長は予想しにくいと思われます。実際にどうなるのか、半導体製造装置、特にAI半導体の実需の動きに敏感な後工程のアドバンテストとディスコにとって重要なポイントです。
グラフ1 米国の大手IT設備投資動向:四半期

グラフ2 米国の大手ITの営業キャッシュフロー動向:四半期

グラフ3 米国大手IT4社の営業キャッシュフロー・設備投資比率(4社合計ベース)

3.2026年3月期会社予想業績は上方修正された。ただし、今2Q、3Qと調整局面へ。
今1Qの好業績を受けて、会社側は2026年3月期業績予想を上方修正しました。前回会社予想の売上高7,550億円(前年比3.2%減)、営業利益2,420億円(同6.1%増)が、今回は売上高8,350億円(同7.1%増)、営業利益3,000億円(同31.5%増)に上方修正されました。
ただし、今2Qから今3QまでSoCテスタが調整期に入るため、四半期業績は下降局面入りする見通しです。
楽天証券の業績予想は、2026年3月期は、前回予想の売上高8,300億円、営業利益2,750億円から、会社予想と同じ売上高8,350億円、営業利益3,000億円へ上方修正します。また、2027年3月期は前回と同じ売上高9,600億円、営業利益3,400億円と予想します。会社側が予想する今2Qからの下降局面(調整局面)の深度がどの程度で、いつ頃回復するのか、次の回復局面でも牽引役はAI半導体になると思われますが、その時のAI市場の規模と勢いがどの程度か確認したいと思います。
AI半導体需要にとってのプラス要因は、エヌビディアだけでなく、AMD、ブロードコム、マーベル・テクノロジーとAI半導体の種類が増加すること、マイナス要因は、生成AIの問題点が分かってきたことです。例えば、生成AIを使いすぎれば、特に若手において学習能力、思考能力が落ちることが大学での研究や実際の現場で指摘され始めていること、生成AIを使って作った各種のプロダクトが似たり寄ったりのものになる傾向があることなどです。これが生成AIの需要に影響するのかしないのか観察したいと思います。
また、決算説明会で話題は出ませんでしたが、引き続き中国向けが注目されます。中国ではAI半導体の国内生産に注力しています。ただし、生成AIについて効率的な開発運用体制になっていると思われること、低性能品に限って米国からの輸出が認められたこと、一定の量の密輸ルートがまだあると思われることなどから、中国のAI半導体生産が米国に匹敵するような大規模なものにはならない可能性があります。
表4 アドバンテストの事業別売上高(新セグメント)

表5 アドバンテストの地域別売上高(通期ベース)

表6 アドバンテストの半導体テスタ市場予想

4.今後6~12カ月間の目標株価を、前回の1万3,500円から1万2,500円に引き下げる。
アドバンテストの今後6~12カ月間の目標株価を、前回の1万3,500円から1万2,500円に引き下げます。
楽天証券の2027年3月期予想1株当たり利益(EPS)344.7円に今後の長期的な成長性と短期、長期のリスクの両方を考慮して想定株価収益率(PER)35~40倍を当てはめました。
中長期での投資妙味は感じますが、当面は今2Q以降の業績の底がどの程度の水準になるのかが注目点になると思われます。株価上昇に時間がかかる可能性があると思われます。
本レポートに掲載した銘柄: アドバンテスト(6857、東証プライム)
(今中 能夫)