ディスコの2026年3月期1Qは、8.6%増収、3.3%営業増益。検収が進み会社予想を上回った。
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著者の今中 能夫が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 決算レポート:ディスコ(今1Qは順調だったが、今2Qは出荷金額減少へ。生成AI向け前倒しの反動が予想される) 」
毎週月曜日午後掲載
本レポートに掲載した銘柄: ディスコ(6146、東証プライム)
1.ディスコの2026年3月期1Qは、8.6%増収、3.3%営業増益。
ディスコの2026年3月期1Q(2025年4-6月期、以下今1Q)は、売上高899.14億円(前年比8.6%増)、営業利益344.80億円(同3.3%増)となりました。当初会社予想は売上高750億円(前年比9.4%増)、営業利益238億円(同28.7%減)と減収減益予想でしたが、検収が進んだため一桁ながら増収増益となりました。
業績のトレンドを表す連結出荷額は、1,111.42億円(同20.1%増)となり、会社予想の1,020億円を上回りました。
生成AI向けの金額等のコメントはありませんでしたが、順調だった模様です。生成AI向けの増加を反映して、メモリ向け出荷が順調に伸びました。
表1 ディスコの業績

グラフ1 ディスコ:売上高、受注高、出荷額(連結ベース)

表2 ディスコ:連結売上高、出荷額

グラフ2 ディスコの製品別出荷額

2.会社予想では、今2Q出荷額は前年比、今1Q比とも減少する見通し。
会社側は今2Q業績予想を、売上高912億円(前年比5.2%減)、営業利益332億円(同22.0%減)と前年比で減収減益、今1Q比では増収減益としました。また、連結出荷額を836億円(前年比24.8%減、今1Q比14.4%減)と二桁減少を見込んでいます。
今2Qの連結出荷額減少の要因は、生成AI関連の出荷が今1Qに大きくなっており、今2Qはその反動が予想されることによります。ただし、会社側では生成AI関連が今3Qも減少するとは今の時点で予想していないとしています。
楽天証券では、今1Q業績と今2Q会社予想を参考に、2026年3月期通期を、売上高4,190億円(前年比6.5%増)、営業利益1,660億円(同0.5%減)、2027年3月期通期を、売上高4,900億円(同16.9%増)、営業利益2,050億円(同23.5%増)と予想します。前回予想から下方修正します。
ただし、来期2027年3月期は前回予想通り二桁増収増益を予想します。これは、AI半導体に不可欠の特殊メモリ「HBM」の増産投資が予想されるためです。今の最先端HBM「HBM3e」の需給ひっ迫は、まともに生産しているのが、SKハイニックス、マイクロン・テクノロジーの2社で、サムスン電子は出遅れていることが理由と思われます。
サムスン電子は「HBM3e」8層では、SKハイニクス、マイクロンと同様にエヌビディアの認証を獲得しているものの、「HBM3e」12層の認証は獲得していません。SKハイニクス、マイクロンはともに、「HBM3e」12層、「HBM4」12層の認証もエヌビディアから得ています。2026年後半に出荷開始が予想されるエヌビディアの「Rubin」から最新型の「HBM4」が搭載される予定です。
ただし、今年6月にサムスン電子の「HBM3e」12層が、AMDの次世代AI半導体「MI350X」「MI355X」に採用されたと発表されました。これをテコにサムスン電子が「HBM3e」12層の量産開始に続き、「HBM3e」12層、「HBM4」12層のエヌビディアからの認証獲得へ進めば、HBM関連の設備投資は今年7-9月期に減少したとしても、今年10-12月期から2026年にかけて増加する可能性があります。
もっとも実際にこうなれば、2026年のHBM市場の需給は2025年よりも緩和する可能性があります。HBM設備投資の増加は、ディスコにとって2027年3月期二桁増収増益の要因になりますが、需給緩和は株価を引き下げる要因になると思われます。
今後のディスコの業績と株価の関係は、これまでよりも複雑なものになる可能性があります。
3.今後6~12カ月間の目標株価は、前回の5万1,000円を維持する。
ディスコの今後6~12カ月間の目標株価は、前回の5万1,000円を維持します。
楽天証券の2027年3月期予想1株当たり利益(EPS)1,345.7円に、想定株価収益率(PER)35~40倍を当てはめました。HBM設備投資が2026年に再び増加するポジティブな要因と、HBM需給が緩和する可能性があるというネガティブな要因を考慮しました。
一定の投資妙味は期待できると思われますが、株価上昇には時間がかかる可能性があります。
本レポートに掲載した銘柄: ディスコ(6146、東証プライム)
(今中 能夫)