楽天証券は個人投資家向けに日経平均や為替の見通しなどを聞くアンケートを実施しました。日経平均の見通しでは、1カ月先と3カ月先ともに中立派が約半分を占めました。
はじめに
今回のアンケート調査は2025年7月28日(月)から30日(水)にかけて実施しました。
今回のアンケートは、約2,200名を超える個人投資家からの回答を頂きました。
7月末の日経平均株価終値は4万1,069円となり、4万1,000円台を回復させて取引を終えました。前月末終値(4万0,487円)からは582円高、月間ベースでも4カ月連続で上昇となりました。
あらためて、7月の値動きを振り返ると、月間を通じて外部環境の変化に大きく振らされる展開となりました。
月の前半は、発動が90日間停止されていた米相互関税の期限が迫り、米関税政策への警戒感で様子見による薄商いが目立ちました。そして日経平均は、4万円台の攻防が続きました。
結局、相互関税の発動が8月まで延期されたほか、月の下旬には日米をはじめとする複数の関税交渉で合意に至るなどの進展が見られました。これにより市場はリスクオンに傾き、日経平均は一時4万2,000円台を付ける場面があったほか、東証株価指数(TOPIX)も最高値を更新するなど、上方向への意識が強まりました。
その一方で、日米で本格化した企業決算発表については、好決算に反応する動きがあったものの、一部の半導体企業では業績の下方修正が嫌気されるなど、全体として方向感が定まらず、楽観ムードの高まりは限定的となりました。
このような中で行われたアンケートの結果を見ると、為替のDIが円安見通しを強める一方で、日経平均については、弱気ではないものの、先行きに慎重な見方が根強い結果となりました。
次回もぜひ、本アンケートにご協力をお願いいたします。
日経平均の見通し「DIのプラス維持も不透明感くすぶる」
楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト 土信田 雅之
今回調査における日経平均の見通しDIは、1カ月先が+3.26、3カ月先は+5.71となりました。
前回調査の結果がそれぞれ、+11.07と+4.08でしたので、1カ月先は前回から強気の見通しが後退する一方で、3カ月先はやや改善を見せるなど、まちまちだったものの、両者ともにプラスを維持する格好となりました。
また、回答の内訳グラフを見ても、前回と比べて強気派、弱気派、中立派の勢力図に大きな変動は見られませんでした。


それぞれの回答の内訳グラフを見ると、1カ月先と3カ月先が似たような状況となっていて、中立派が約半分を占めています。また、強気派が弱気派をやや上回っていることが確認できます。
特に相場の先行きに対する強さを感じさせるグラフの形状ではありませんが、今回のアンケート期間(7月28日から30日)の日経平均が軟調だったことを踏まえると、実際にはグラフの見た目以上に強気なのかもしれません。
とはいえ、足元の株式市場は8月相場に入りましたが、軟調な滑り出しとなっています。
8月1日に公表された米国の雇用統計結果がサプライズとなり、同日に公表された米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況感指数の結果も、好不況の分かれ目とされる50を下回っただけでなく、市場予想にも届きませんでした。これらが影響し、この日の米国株が大きく下落、この流れを受けた翌週4日の日経平均も節目の4万円台を下回る場面がありました。
米国の景気減速懸念と利下げ観測が同時に強まる格好となったわけですが、最近までは、さえない米経済指標の結果が出てくると、利下げ期待による金利低下が相場を支える動きも見られました。ただ、足元については利下げ期待よりも米景気が急減速する可能性の方が意識されてしまい、株価にネガティブに働いた可能性があります。
もちろん、これから公表される米経済指標の結果次第では、米景気不安が和らぎ、相場が持ち直していくと思われます。しかし、ある程度株価を戻すことができても、積極的に上値をトライしていく展開になっていくためには、もう少し時間を掛けて見極めていくことになりそうです。
というのも、来週は米国の物価動向を示す統計の公表が相次ぐ「物価指標ウイーク」となります。具体的には、12日に消費者物価指数(CPI)、14日に卸売物価指数(PPI)、そして15日には輸入物価指数が発表され、インフレが抑制的なのか否かが注目されます。
仮に、米景気への警戒がくすぶる中、こうした物価関連指標でインフレが加速するような兆候が見られた場合、鳴りを潜めていた「スタグフレーション」への不安が再燃することになり、株式市場のムードが一気に軟調に転じてしまうことも想定しておく必要があります。
そのため、経済指標面から捉えた相場シナリオは、しばらくは景気とインフレ動向の「答え合わせ」をしていくことになるでしょう。また、今月下旬には米ジャクソンホール会議や米エヌビディア決算といった注目イベントが控えていることもあり、それまでは不透明感が残る中で株価水準の落ち着きどころを探っていくことになりそうです。
為替DI:8月の見通し。個人投資家の予想は?個人投資家は円安相場観に転向
楽天証券FXディーリング部 荒地 潤
楽天DIとは、ドル/円、ユーロ/円、豪ドル/円それぞれの今後1カ月の相場見通しを指数化したものである。DIがプラスの時は「円安」見通し、マイナスの時は「円高」見通しで、プラス幅(マイナス幅)が大きいほど円安(円高)見通しが強いことを示す。

「8月のドル/円は、円安、円高のどちらへ動くと予想しますか?」
楽天証券が、個人投資家を対象にドル/円相場の先行きについてアンケート調査を実施したところ、回答者の61%が、ドル/円が「円安/ドル高」に動くと予想していることが分かった。個人投資家の円安予想が円高予想を上回ったのは、2025年になって初めてのこと。

円安予想から円高予想の割合を引いて求めたDIは、円安予想が前月から22ポイント増えて、+22になった。

DIは、マイナス100から+100までの値をとり、DIのプラス値が大きくなるほど、円安見通しの個人投資家の人数が多いことを示し、逆にマイナス値になるほど、円高見通しの個人投資家の人数が多いことを示す。
インフレはなぜ悪いのか
帝国データバンクによると、8月に値上げされる食品は1,010品目に達し、これは2024年の同じ月と比べて52.8%の増加となる。値上げされる食品の数が前年より増えたのは8カ月連続で、平均の値上げ率は15%となっている。
日本銀行は7月の「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」で、2025年度のCPI上昇率の見通しを前年度比2.7%と、4月時点の2.2%から引き上げた。たった3カ月で0.5ポイントもの大幅変更を余儀なくされるほどの急激なインフレが発生していると認めながら、日銀は利上げしないことを全会一致で決定した。
米国の現在のインフレ率は2.7%で、政策金利は4.50%だ。日本の総合インフレ率は3.3%なのに政策金利は0.5%しかない。この水準は低すぎるとの意見が多い。
米連邦準備制度理事会(FRB)が雇用統計やCPIなどの経済データに基づいて金融政策を決定しているのに対して、日銀は「データに基づかない」金融政策を行っているようだ。
日銀が低金利を長く維持しようとするのは、それが人々に期待されていると信じているからだろう。「日本経済を支えているのは、私たちですよ」というアピールである。
低金利政策を続ける中央銀行の下で上昇するインフレがもたらす痛みは、所得格差が開くほど大きくなる。
しかし、貧しい家庭はその初期費用を持っていない。5キロの米を買うお金がないから割高だと分かっていてもコンビニのおにぎりを買うしかない。
インフレは、高所得者よりも低所得者により厳しく、所得格差が開くほど「不平等な痛み」は大きくなる。それだけではなく、インフレの不平等性そのものが、所得の不平等を悪化させ、貧富の差をさらに拡大させるのだ。インフレの真の邪悪さはここにある。
ユーロ/円
ユーロ/円相場の先行きについては、個人投資家の67%が、今月のユーロ/円は「円安/ユーロ高」に動くと予想している。円安予想は、2カ月連続で円高予想を上回った。

円安予想と円高予想の差であるDIは、円安予想が前月から12ポイント増えて+34になった。

豪ドル/円
豪ドル/円相場は、個人投資家の62%が、今月の豪ドル/円は「円安/豪ドル高」に動くと予想している。円安見通しの割合は、今年になって初めて円高見通しを上回った。

円安見通しと円高見通しの差であるDIは、円安予想が前月から16ポイント増えて+24になった。

今後、投資してみたい金融商品・国(地域)
楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲
今回は、毎月実施している質問「今後、投資してみたい金融商品」で、「REIT」を選択した人の割合に注目します。選択肢はページ下部の表のとおり、13個です。(複数選択可)
図:今後、投資してみたい金融商品で「REIT」を選択した人の割合

2025年7月の調査で、「REIT」を選択した人の割合は16.72%でした。これは、およそ6年ぶりの高水準です。
不動産投資信託(REIT:Real Estate Investment Trust)は、投資家から集めた資金で、オフィスビルや商業施設、マンションなど複数の賃貸不動産に投資し、賃料収入や売却収入から得た利益を投資家に分配する金融商品です。
対象となる不動産には、いくつか種類があります。オフィスビル、賃貸住宅、商業施設・店舗、物流施設、ホテル、ヘルスケア施設、研究施設やデータセンターなどの産業用施設などです。
一口にREITといっても、オフィスビルに特化するなど、単一用途で使用している不動産を対象にする場合と、オフィスビル、賃貸住宅、物流施設を対象にするなど、複数の用途をまたぐ場合があります。また、都心、首都圏、三大都市圏、政令指定都市、全国など、地域を分ける場合もあります。
REITの売買は、個別銘柄、上場投資信託(ETF)、投資信託のいずれかで行うことができます。個別銘柄は(株式会社のような形で)「投資法人」が付く銘柄です。
ETFには、東京証券取引所に上場しているREITの個別銘柄を対象とした時価総額加重平均型の指数(東証REIT指数)に連動することを目指すETF、投資信託には、投信会社が銘柄を選択してポートフォリオを構築した投資信託があります。
また、REITを組み込んだ投資信託もあります。こうした、株式、債券、REITをパッケージ化した投資信託の一部は、NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)のつみたて投資枠を利用できます。先に述べた個別銘柄、ETF、投資信託の多くは、成長投資枠を利用できます。
REITの価格変動要因に、不動産市況、金利情勢、法制度、インバウンド、天候などが挙げられます。金利情勢に注目すると、金利が上昇した場合、支払利息が増加し、分配金が減少する懸念が生じます。
足元では、日本銀行は利上げに慎重な姿勢を示しています。この姿勢は、REIT市場に利上げによるマイナスの要因がもたらされない、という連想を生んでいると考えられます。この連想が、REITを投資先として選択する投資家の割合が上昇する一因になっていると考えられます。
引き続き、REITを選択した人の割合、そして日銀の動向に、注目していきたいと思います。
表:今後、投資してみたい金融商品 2025年7月調査(複数回答可)

表:今後、投資してみたい国(地域) 2025年7月調査(複数回答可)

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