先週は米国雇用統計の悪化が逆に早期利下げ期待につながり米国株は上昇。日本株は好決算企業中心にほぼ全面高となりTOPIXは史上最高値を更新しました。

今週は米国の7月CPIなど物価指標が転換点になりそうです。日本株は主要企業の決算通過で小動きが予想されます。


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日米企業の決算通過で上昇相場はひと休み。米国物価指標とトランプ・プーチン会談に注目

 先週の米国株は8月1日(金)発表の米国7月雇用統計が予想以上に悪化したことで逆に早期利下げ期待が高まり、機関投資家が運用指針にするS&P500種指数が前週末比2.43%上昇。


 ハイテク株が集まるナスダック総合指数とともに終値ベースの史上最高値を更新しました。


 上昇相場のけん引役になっている人工知能(AI)関連の花形株 エヌビディア(NVDA) は5.17%高と上昇スピードが再加速しています。


 日本株は2025年4-6月期の好決算や通期業績見通しの上方修正を発表した企業を中心に全面高に近い状況になり、日経平均株価(225種)は前週末比1,020円(2.5%)高の4万1,820円まで上昇。


 日経平均に対する寄与度が高い ソフトバンクグループ(9984) が2025年4-6月期の大幅黒字転換を発表して、前週末比19.7%高と急騰。日経平均株価の上昇に大貢献しました。


 週前半は日米間の関税合意に食い違いがあるのではないかという懸念もくすぶっていました。


 しかし、8日(金)、赤沢亮正経済財政・再生相が日本にも欧州連合(EU)同様の関税の負担軽減措置が適用されると米国政府が約束したと述べたことも株価上昇に拍車をかけました。


 大型優良株が幅広く上昇したこともあり、東証株価指数(TOPIX)は史上初めて3,000ポイントの大台超えに成功し、前週末比2.6%高の3,024ポイントをつけて過去最高値を更新しました。


 新型ゲーム機「Nintendo Switch 2」の世界販売が600万台を超え、好調な2025年4-6月期決算を発表した 任天堂(7974) が前週末比14.0%高。


 任天堂が属する、その他製品セクターが週間の業種別上昇率トップになりました。


 また国内外の金利低下が追い風になる不動産業、AIデータセンター向け電力需要の増加が期待される電気・ガス業も業種別上昇率上位に食い込みました。


 日本が山の日で休場だった11日(月)の米国株はトランプ大統領が12日(火)に迫った中国に対する高額関税発動を90日間延期することと表明したものの、市場の反応は鈍く下落しました。


 ただ日経平均先物(期近)は円安トレンド継続もあり、大幅に上昇しており「日本株買い」の流れが継続しています。


 今週最も注目されるのは12日(火)発表の米国の7月消費者物価指数(CPI)でしょう。


 トランプ関税の影響もあり、6月の前年同月比2.7%の伸びから7月CPIは同2.8%の伸びに加速する予想ですが、予想以上に物価高が進むようだと、先週の米国株上昇につながった早期利下げ期待が後退するため、一本調子で上昇した株価が停滞する恐れもあります。


 14日(木)にはCPI以上にトランプ関税の影響を受けやすい7月卸売物価指数(PPI)も発表。


 15日(金)には米国の国内総生産(GDP)の3分の2を占める個人消費の動向が分かる7月小売売上高も発表になります。


 今週は日米企業の2025年4-6月期の決算発表がピークアウトして上昇相場がひと休みとなりやすい状況なだけに、米国物価指標の発表が相場に大きな影響を与えるでしょう。


 また15日(金)に米国アラスカ州で行われる予定の米国トランプ大統領とロシア・プーチン大統領の直接首脳会談の行方にも注目が集まりそうです。


 お盆期間となる今週の日経平均は12日(火)、4万2,098円でスタート。

一時は年初来高値更新となる4万2,999円まで上昇し、終値は前営業日比897円高となる4万2,718円となりました。


先週:トランプ関税の影響が軽微に。日本株は業績の上方修正ラッシュでほぼ全面高! 

 先週は6日(水)にトランプ大統領が米国に輸入される半導体に100%の関税をかけると発表。


 しかし、発表の席に同席したティム・クックCEO率いる アップル(AAPL) のように米国内に生産拠点を移す用意をしている企業は除外する、と表明したため、大きな混乱はありませんでした。


 これを受けアップル(AAPL)の株価は前週末比13.3%高と久しぶりに大幅高となり、米国株価指数の上昇にも貢献しました。


 またトランプ政権がスイスなどから米国に輸入される1キログラムなどの金地金(インゴット)に関税を課すという報道が流れたことで8日(金)のニューヨーク市場では金の先物価格が史上最高値を更新しました。


 しかし直後に金地金に対する課税は誤情報であるというトランプ政権関係者の発言が流れ、金価格の急騰は収束しました。


 トランプ関税に関しては過激な情報が流れてもすぐに打ち消されることが多くなり、株式市場に与える影響も軽微になってきたようです。


 先週は米国の中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)理事の人事も注目されました。


 トランプ大統領は8月1日(金)、途中退任することが明らかになったクーグラー理事の後任として、トランプ政権下で大統領経済諮問委員会(CEA)委員長を務め、トランプ大統領の利下げ要求に同意しているスティーブン・ミラン氏を選んだと発表。


 この人事案もあって、9月17日(水)終了の次回米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げが確実視されるようになり、2025年内に2回以上の利下げ見通しも台頭してきました。


 一方、日本株はトランプ関税に対する日米合意に関する相違問題がくすぶっていたものの、2025年4-6月期の決算発表の熱狂がそれを上回りました。


 好業績を発表したり、通期業績予想を早くも上方修正したりした企業が買われ、減益や業績下方修正を発表した企業が売られる典型的な業績相場になりました。


 8日(金)に2025年12月期の通期業績を大幅に上方修正した 井関農機(6310) はコメの価格高騰を受けた政府の増産政策への転換も好感して前週末比24.9%も上昇。


 同じく2026年3月期の通期経常利益予想を早くも上方修正した ロート製薬(4527) が14.7%高となるなど、これまで株価が急落していた企業が好決算を発表して見直し買いが入る展開も目立ちました。


 参議院選挙に大敗したことで「石破降ろし」の風が吹く中、8日(金)に開催された自民党の両院議員総会で石破茂首相は続投に意欲を示すなど、政治の世界は相変わらず混迷しています。


 しかし、先週の日本株はトランプ関税のさらなる悪化懸念が後退したことで、今後も本格的な上昇に期待できるような明るい雰囲気に包まれました。


 ただ、米国の イーライリリー(LLY) の経口肥満症薬の試験結果が期待はずれだったことで、治療薬を共同開発した 中外製薬(4519) が前週末比17.0%安となるなど、悪材料や決算発表で業績悪化が判明した企業など下落する銘柄もありました。


今週:7月の米国物価指標が相場の転換点に?!米国の早期利下げ期待が後退しない限り続伸か

 今週は12日(火)の米国7月CPI、14日(木)の7月PPIが最重要経済指標です。


 米国の物価指標はトランプ関税発動にもかかわらずそれほど大きな上昇を見せていません。ただ、変動の激しい食品・エネルギーを除く7月のコアCPIやコアPPIの前年同期比の伸び率は再び3.0%の節目まで上昇する予想になっています。


 米国CPIは2025年4月を底に再上昇に向かっており、トランプ関税の影響が本格化する今後、さらに上昇するのかどうかに注目が集まります。


 一方、PPIに関しては前月6月分が予想以下の前年同月比2.3%の伸びにとどまるなど、逆にトランプ政権が本格始動した2025年2月以降、低下傾向にあります。


 一説にはトランプ関税が米国の雇用市場や景気に冷や水を浴びせた結果、米国内の需要が減って関税を引き上げても急激な物価高にはつながらないという楽観的な見方もあります。


 とはいえ、もし7月CPI、PPIが予想以上に上昇すると、先週広がった米国の早期利下げ観測が急速に後退して株価が急落する恐れもあるため、注意が必要です。


 15日(金)発表の米国の7月小売売上高も注目です。


 前回6月分は予想以上の前月比0.6%増となり、堅調な米国の個人消費に対する楽観論がその後の米国株高につながりました。


 しかし、小売売上高の上昇はトランプ関税による価格転嫁で販売価格が上がっているからだという見解もあり、今回7月小売売上高が予想外に悪化すると、7月雇用統計の悪化もあって、いよいよトランプ関税不況の到来が意識されるかもしれません。


 15日には8月のミシガン大学消費者態度指数の速報値も発表されます。


 トランプ関税の税率引き下げなどもあり、同指数など景況感を示す米国の経済指標は持ち直し傾向にありますが、今回もその傾向が続くのかどうかに注目です。


 ただ、米国株は巨大IT企業の巨額のAIデータセンター投資もあってイケイケムードに包まれており、景気指標の多少の悪化はむしろ利下げ期待をさらに高めて株高につながる可能性も高そうです。


 その意味でも12日(火)の7月CPIの結果が無難なものになることが史上最高値圏にある米国株、そして日本株続伸の条件といえるでしょう。


 一方、日本では15日(金)に2025年4-6月期の実質GDPの速報値が発表されます。


 2025年1-3月期はマイナス成長だったものの、今回は前期比年率換算で0.3%のプラス成長に回帰する予想になっています。


 予想通り、プラス転換すれば日本株にとって追い風になるでしょう。


 米国の早期利下げ期待は日米金利差縮小による円高ドル安トレンドにつながります。


 しかし日本銀行も利上げを急いでいないため、11日(月)のニューヨーク為替市場では1ドル=148円10銭台前後で推移。


 為替レートが心地よい水準にあることも日本株のさらなる上昇につながりそうです。


(トウシル編集チーム)

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