今後の重要イベントに、米国の9月利下げが示唆される可能性もあるジャクソンホール会合と米エヌビディアの決算発表があります。ともにプラス材料となりそうですが、期待感は既に十分に織り込まれており、イベント通過後はとくにグロース株の出尽くし感が強まりそうです。
アナリスト評価◎の割安高配当株TOP15
コード 銘柄名 現在値 配当利回り コンセンサス
レーティング 移動平均線
乖離率 月間
騰落率 6481 THK 4056.0 6.11 3.8 3.37 4.81 3002 グンゼ 3800.0 5.68 3.8 15.48 3.68 7148 FPG 2391.0 5.45 4.0 ▲4.30 0.00 7283 愛三工業 1932.0 5.18 4.0 11.41 11.61 1890 東洋建設 1743.0 5.16 4.0 0.89 10.39 8130 サンゲツ 3015.0 5.14 4.0 3.65 2.03 4521 科研製薬 3860.0 4.92 3.5 3.09 2.25 5021 コスモエネルギーホールディングス 7090.0 4.89 3.9 1.85 11.86 7202 いすゞ自動車 1938.5 4.75 3.6 ▲3.47 0.78 4503 アステラス製薬 1671.0 4.74 3.5 5.67 18.81 5938 LIXIL 1905.5 4.72 3.5 ▲2.57 9.54 4208 UBE 2350.5 4.68 3.5 3.49 2.26 7744 ノーリツ鋼機 1585.0 4.65 4.5 0.57 6.09 3861 王子ホールディングス 775.3 4.64 4.0 3.30 2.46 5201 AGC 4581.0 4.58 3.5 5.00 4.26 ※データは2025年8月15日時点。単位は配当利回りと月間騰落率、移動平均線乖離率は%、時価総額は億円。配当利回りは予想、移動平均線乖離率の基準は13週移動平均線。
※コンセンサスレーティング…アナリストによる5段階投資判断(5:強気、4:やや強気、3:中立、2:やや弱気、1:弱気)の平均スコア。数字が大きいほどアナリストの評価が高い。
※移動平均線乖離(かいり)率…株価が移動平均線(一定期間の終値の平均値を結んだグラフ)からどれだけ離れているかを表した指標。この数値がマイナスならば、移動平均線よりも現在の株価が安いということになる。
上表は、長期投資に適した銘柄の高配当利回りランキングと位置付けられます。
8月15日時点での高配当利回り銘柄において、一定の規模(時価総額1,000億円以上)、ファンダメンタルズ(コンセンサスレーティング3.5以上)、テクニカル(13週移動平均線からの乖離率20%以下)などを楽天証券の「スーパースクリーナー」を使ってスクリーニングしたものとなっています。配当利回りはアナリストコンセンサスを用いています。
なお、上場市場は各社ともにプライム市場となっています。
日経平均、史上最高値を一気に更新
7月11日終値~8月15日終値までの日経平均株価(225種)は、9.6%の大幅な上昇となりました。
7月に入ってからは4万円を挟んでの小動きが続いていましたが、月後半にかけて一時4万2,000円台にまで上昇しました。
7月後半の株高は、日米関税交渉の合意が材料視されました。相互関税は、これまで示されていた25%から15%に引き下げ、ハードルが高いとみられた自動車・自動車部品の関税も15%まで引き下げられたことで、ポジティブなサプライズが強まる形になりました。
8月に入ってからの株価上昇は、景気減速懸念の高まりを映した米国の9月利下げ期待が主因になります。また、 トヨタ自動車(7203) などの決算発表を受けて、米国の関税策に対する過度な影響の懸念も薄れたようです。さらに、日経平均株価が最高値を更新したことで、売り方の買い戻しも活発化したとみられます。
こうした市場の動きの中、ランキングTOP15も、変わらずの1銘柄を除いて全面高となりました。
最も高い上昇率となったのは アステラス製薬(4503) で、第1四半期の好決算発表が評価材料視されています。ほか、 コスモエネルギーホールディングス(5021) 、 愛三工業(7283) 、 東洋建設(1890) なども10%以上の上昇となっています。
コスモエネルギーHDは株式分割発表が手掛かり材料となり、愛三工業は過度な関税懸念後退の中で第1四半期(4-6月期)決算が悪材料出尽くし感につながりました。東洋建設は 大成建設(1801) による買収が発表され、株式公開買付(TOB)価格である1,750円にサヤ寄せする動きとなりました。
半面、 FPG(7148) は第3四半期(4-6月期)の減益決算が嫌気されて、一時急落する場面がありました。
株価上昇でホンダやMS&AD HDなどがランキングから除外
今回、新規で いすゞ自動車(7202) 、 UBE(4208) 、 王子ホールディングス(3861) 、 AGC(5201) の4銘柄がランクインしました。除外となったのは、 ジャパンインベストメントアドバイザー(7172) 、 ホンダ(本田技研工業:7267) 、 インフロニア・ホールディングス(5076) 、 MS&ADホールディングス(MS&ADインシュアランスグループホールディングス:8725) となっています。
除外となった4銘柄はそれぞれ8%以上の株価上昇となったため、相対的に配当利回りが低下する形となっています。とりわけ、MS&AD HDは日本銀行の早期利上げ期待の高まりを手掛かりに、15%以上の上昇となっています。
一方、新規ランクインした銘柄はそろって決算がさえなかったこともあり、期間中の株価上昇が限定的で、利回り水準が相対的に上昇する形となりました。
アナリストコンセンサスと会社計画の配当予想で乖離が大きいのは、東洋建設と愛三工業となります。
東洋建設に関してはTOBが成立した場合は上場廃止となりますので、当然配当金も無配になります。今後コンセンサスが修正されるものとみられます。愛三工業に関しては、会社計画ベースの配当利回りは3.70%の水準にとどまっています。第1四半期の進捗(しんちょく)状況を考えても、コンセンサス水準は高すぎる印象があります。
ジャクソンホール会合、エヌビディア決算は出尽くし感に警戒
ここ1~2週間における重要イベントとしては、ジャクソンホール会合、ならびに、米エヌビディアの決算発表が挙げられます。ジャクソンホール会合ではパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演が予定されており、例年、この場所で当面の金融政策に関する発言が行われています。
両イベントともに株価の期待材料ではありますが、その期待感は既に株価に十分反映されている印象があります。そのため、イベント通過後は、それぞれ出尽くし感が優勢になるというリスクを考慮する必要があるでしょう。
仮にエヌビディアの好決算発表が半導体関連の利食い売り材料とされるならば、物色はグロース株からバリュー株へ移行することになり、高配当利回り銘柄の活躍余地は広がっていく可能性があります。
(佐藤 勝己)