パウエルFRB議長のジャクソンホール講演を受け、9月にも米利下げの期待が高まり、NYダウが最高値を更新しました。外国人買いで日本株が上昇する流れはまだ続きそうです。

ただし、トランプ関税ショックはまだ終わっていません。日米関税合意が実行されるか不透明です。日本株はこれからも急落・急騰を繰り返しながら上昇していくと考えます。


日本株は再び上昇?外国人が買う中、個人投資家は売り(窪田真之...の画像はこちら >>

先週の日経平均は反落、NYダウは最高値

 先週(営業日8月18~22日)の日経平均株価は1週間で745円下落し、4万2,633円となりました。日経平均の上昇ピッチが速く、やや過熱感が出ていたことから、先週は利益確定売りが増え、反落しました。


日経平均週足:2024年1月4日~2025年8月22日まで
日本株は再び上昇?外国人が買う中、個人投資家は売り(窪田真之)
出所:楽天証券MSIIより作成

 今週の日経平均は再び、上昇して始まることが予想されます。9月にも米利下げがあるとの見方が広がり、22日のダウ工業株30種平均が最高値を更新したからです。


 米連邦準備制度理事会(FRB)議長のパウエル氏が22日、ジャクソンホール会議で講演し、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げをする可能性に言及したことから、利下げ期待が高まり、22日に米国株は大きく上昇し、NYダウは最高値をつけました。


ナスダック・S&P500・NYダウの月次推移:2016年末~2025年8月(22日)
日本株は再び上昇?外国人が買う中、個人投資家は売り(窪田真之)
出所:2016年末の値を100として指数化、QUICKより作成

 生成AIブームにけん引されているナスダック総合指数が、第2次トランプ政権でも好調です。相対的にオールド株が多いNYダウも、遅れて最高値を更新しています。米景気ソフトランディングの見通しが広がり、米利下げも見通せるようになったことから、米国株も強い動きです。


外国人買い・個人の売りが続く日本株

 日経平均の上昇をけん引しているのは、外国人投資家の買いです。先々週(営業日8月12~15日)には外国人投資家は1週間で1兆7,503億円も日本株を買い越しています。日経平均が反落した先週の売買はまだ統計が出ていませんが、外国人投資家が日本株を買う流れは続いていると思われます。


日経平均と外国人投資家の売買動向(売越・買越、株式現物と株価指数先物の合計):2025年3月24日~8月22日(外国人売買動向は8月15日まで)
日本株は再び上昇?外国人が買う中、個人投資家は売り(窪田真之)
出所:QUICK・東証データより楽天証券経済研究所作成

 一方、日本株を大幅に売り越しているのは、個人投資家です。個人投資家は、外国人投資家が売るときに買い、買うときに売る傾向が鮮明ですが、トランプ関税ショック前後でも、外国人投資家と完全に反対の売買をしています。


日経平均と個人投資家の売買動向(売越・買越、株式現物と株価指数先物の合計):2025年3月24日~8月22日(個人売買動向は8月15日まで)
日本株は再び上昇?外国人が買う中、個人投資家は売り(窪田真之)
出所:QUICK・東証データより楽天証券経済研究所作成

外国人投資家が日本株を買う理由

 外国人投資家から見ると、日本株は世界景気敏感株です。トランプ関税ショックで世界不況になる不安が高まった4月には外国人の売りで日経平均が急落しました。その後、トランプ関税が緩和され世界景気ソフトランディングの見通しが広がると、外国人は日本株を買い戻しました。


 外国人投資家が日本株を買うのは、世界景気の見通しが変化したことだけが理由ではありません。


外国人投資家から見た日本株の魅力
日本株は再び上昇?外国人が買う中、個人投資家は売り(窪田真之)
出所:各種資料に基づく筆者評価

 日本株は、財務良好・収益が安定的にもかかわらず株価純資産倍率(PBR)1倍を割れるなど、買収価値から割安な銘柄が多数あります。その日本株で、自社株買いが急増していることが、外国人投資家が評価する重要ポイントです。


 また、日本で財政・金融の大盤振る舞いが続いていることも注目されています。米国は財政・金融とも一時的に引き締めになっている中、財政・金融とも景気刺激的で、景況が相対的に良好な日本株の組み入れを引き上げています。


日本株の投資判断

 日本株は割安で長期的な上昇余地は大きいと判断しています。ただし、トランプ関税ショックはまだ終わっていません。日米株とも、トランプ関税後の回復まで先に織り込んで上昇しているため、やや上昇ピッチが速すぎると思います。


 日本株について言うと、口約束だけで合意文書のない日米関税合意がきちんと実行されるのか、不安があります。日米合意について、両者で理解が異なる問題が明らかになれば、日本株が売られる要因となりかねません。


 日本株はこれからも、急落・急騰を繰り返しながら上昇していくと考えられます。時間分散しながら割安な日本株を買い増ししていくことが、長期の資産形成に寄与すると考えます。


 最後にお知らせです。朝8時に掲載される「3分でわかる!今日の投資戦略」の土曜日版が始まりました。土曜日は、私(窪田真之)が執筆しています。土曜日版もぜひお読みいただけるとうれしいです。


 私(窪田真之)は現在、朝8時にリリースされるレポートを、土曜日、月曜日、火曜日に執筆しています。トウシルYouTubeへは、火曜日と日曜日に出演しています。よろしくお願いいたします。


▼著者おすすめのバックナンバー

2025年8月23日: 日本製鉄のUSスチール買収は成功するか?過去ブリヂストンの実例から読み解く!(窪田真之)
2025年8月16日: テスラ・バッシングいつまで?トヨタに巻き返しの好機(窪田真之)
2025年8月9日: トライアルGOはセブン-イレブンに勝てるか。

未来型コンビニの勝者は誰か(窪田真之)


(窪田 真之)

編集部おすすめ