アルファベットの2025年12月期2Qは、13.8%増収、14.0%営業増益。検索広告、ユーチューブの広告と有料会員は順調だったが、訴訟費用で増益率が鈍化。
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著者の今中 能夫が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 決算レポート:アルファベット(検索広告等の営業増益率が訴訟費用で鈍化したが、グーグル・クラウドは好調続く) 」
毎週月曜日午後掲載
本レポートに掲載した銘柄:アルファベット( GOOGL 、 GOOG 、NASDAQ)
1.アルファベットの2025年12月期2Qは、13.8%増収、14.0%営業増益。
アルファベットの2025年12月期2Q(2025年4-6月期、以下今2Q)は、売上高964.28億ドル(前年比13.8%増)、営業利益312.71億ドル(同14.0%増)となりました。売上高はグーグル検索他、ユーチューブ広告等のグーグル・サービス、グーグルクラウドがともに順調でしたが、グーグル・サービス事業で発生した訴訟費用によって、全社の営業増益率は今1Q20.2%増から今2Q14.0%増へ鈍化しました。
セグメント別に見ると、グーグル・サービスは売上高825.43億ドル(前年比11.7%増)、営業利益330.63億ドル(同11.4%増)となりました。今1Qの売上高9.8%増、営業利益17.2%増と比較すると、営業増益率が鈍化していますが、これは訴訟費用の増加によるものです。
売上高の中身を見ると、最も売上高が大きいグーグル検索他(検索広告)が541.90億ドル(同11.7%増)と堅調でした。
グーグル・クラウドは、売上高136.24億ドル(前年比31.7%増)、営業利益28.26億ドル(同2.41倍)と好調でした。生成AI向けGPU、TPU(アルファベット独自のAI半導体)のレンタルが好調でした。設備投資の増加に伴う減価償却費の増加を吸収して営業利益率は今1Q17.8%から今2Q20.7%に上昇しました。
その他のベッツは、売上高3.73億ドル(前年比2.2%増)、営業損失12.46億ドル(前年同期は11.34億ドルの赤字)となりました。この中に自動運転等の新規事業が含まれていると思われますが、それらの事業は赤字が続いています。
表1 アルファベットの業績

表2 アルファベットのセグメント別業績(四半期)

表3 アルファベットの地域別売上高

2.今期、来期と堅調な業績が続こう。会社側は今期設備投資計画を上方修正した。
会社側によれば、グーグル検索を行った時にページに出てくる「Google AI Overview(AIによる概要)」(ユーザーの検索に対して、Googleの生成AI「Gemini」がWeb上の複数の情報を自動で収集・要約し、検索結果の最上部に表示する機能)が検索ユーザーから好評です。一方で会社側は、「Google AI Overview」によって検索ユーザーが検索広告を見る機会が減少するのではないかという懸念はなく、グーグル検索にAIを取り入れることによって検索機能が拡張することになると指摘しています。実際にそうであれば、グーグル検索他の売上高の伸びが今の10%台前半の伸びからさらに落ちることはないと思われます。
ユーチューブについては、ユーチューブ広告だけでなく、YouTube TV、YouTube Music、YouTube Premiumのサブスクリプション収入が順調です。
また、今3Qにはグーグルピクセルの新製品を発売する模様です(売上高セグメントの「グーグル・サブスクリプション、プラットフォーム&デバイス」に入る)。
グーグル・クラウドは前述したように生成AI向けのGPU、TPUのレンタルが好調です。設備投資の増加が続いており、会社側は今期設備投資計画を上方修正しました。ただし、今3Q以降、大型設備投資に伴う減価償却費の増加がグーグル・クラウドの利益の伸びを圧迫する懸念があります。
グーグル・クラウドの今後の注目点は生成AI向けGPU、TPUの伸びとともに、「Gemini」の有料版の収益貢献が期待できるのかどうかです。
また、その他のベッツの中に自動運転事業が含まれていると思われます。自動タクシーの事業地域が拡大していますが、今以上に赤字が拡大するのか縮小するのか、注目点です。
これらのことを総合して、楽天証券ではアルファベットの業績を、2025年12月期は売上高3,960億ドル(前年比13.1%増)、営業利益1,330億ドル(同18.3%増)、2026年12月期は売上高4,460億ドル(同12.6%増)、営業利益1,600億ドル(同20.3%増)と予想します。前回予想に比べ、営業利益予想は2025年12月期はやや下方修正、2026年12月期はやや上方修正します。
設備投資は、今1Q171.97億ドルから今2Q224.46億ドルに大幅に増加しました。AIサーバー中心にAIインフラを増強しました。
表4 アルファベットのセグメント別業績(年度)

グラフ1 米国の大手IT設備投資動向:四半期

表5 米国大手ITの設備投資額(四半期)

3.今後6~12カ月間の目標株価を、前回の200ドルから250ドルに引き上げる。
アルファベットの今後6~12カ月間の目標株価を、前回の200ドルから250ドルに引き上げます。
楽天証券の2026年12月期予想1株当たり利益(EPS)11.68ドルに、今の評価である株価収益率(PER)レンジ20~25倍を当てはめました。
業績の伸びは他の大手ITに比べ大きいとは言えませんが、来期の楽天証券予想ベースのPERは20倍を割れており、割安感があります。一定の投資妙味が期待できると思われます。
本レポートに掲載した銘柄:アルファベット( GOOGL 、 GOOG 、NASDAQ)
(今中 能夫)