すかいらーくHDは、2025年上半期に売上高・利益ともに計画を上回る好業績を達成。M&Aや海外展開を含む多角的な成長戦略、株主還元やDX推進による企業価値向上により、今後の成長が期待されるため「買い」と判断します。


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著者の茂木 春輝が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 資さんうどん買収!すかいらーくHDを「買い」と判断する3つの理由 」


事業拡大の戦略性を高評価して「買い」判断

  すかいらーくホールディングス(3197) (以下、すかいらーくHD)は、戦略的な事業拡大によって成長性があるとして「買い」と判断しています。


 理由は以下の三つです。


[1]「店舗中心経営」による生産性向上と事業計画を上回る好業績
[2]M&Aと海外展開を含む多角的な成長戦略
[3]積極的な株主還元とDX推進による企業価値向上


<すかいらーくHDの月足株価の推移>
資さんうどん買収!すかいらーくHDを「買い」と判断する三つの理由(茂木春輝)
出所:マーケットスピードIIより楽天証券経済研究所が作成

 それぞれについて詳しく説明いたします。


[1]「店舗中心経営」による生産性向上と事業計画を上回る好業績

 すかいらーくHDは、2025年度上半期において、事業計画を大幅に上回る好調な業績を達成しました。売上高は前年同期比で+15.4%増の2,210億円、事業利益+26.0%増の150億円を記録し、営業利益も+16.4%増の139億円となりました。これは、中期事業計画で想定していた売上成長率7%と事業利益成長率20%を上回るものです。


2025年度中間期決算概要
資さんうどん買収!すかいらーくHDを「買い」と判断する三つの理由(茂木春輝)
出所:すかいらーくHD決算資料より楽天証券経済研究所が作成

 この好業績を支える要因の一つが、すかいらーくHDの掲げる「店舗中心経営」の推進です。労働力をピークタイムに集中投資することで、賃上げが進むの中でも人件費率が32.6%から32.1%へ改善し、生産効率向上に貢献しています。


 この営業利益増加に寄与している興味深い施策は「スポットクルー制度」です。これは外部のスポットワークサービスではなく、マニュアルが統一化された、全国に約2,600店舗あるすかいらーくグループ店舗で、募集・シフトがマッチングする仕組みです。


 さらにメニュー施策では、小皿料理やトッピングやフェアメニューの拡充によって、「節約」と「ぜいたく」といった消費の二極化に対応したメニュー施策が奏功し、既存店売上高は137億円の増収、客数と客単価がそれぞれ+2.5%と+5.6%上昇し、インフレ克服にも寄与しています。

これらの戦略的な経営努力が、今後も持続的な利益成長の基盤になると考えます。


[2]M&Aと海外展開を含む多角的な成長戦略

 すかいらーくHDは、買収や合併(M&A)や新規出店を通じて積極的な成長戦略を展開しており、これが売上高増加の大きなドライバーとなっています。


 2025年上半期には、M&Aにより122億円の増収を達成しています。特に、資さんうどんSuki-Yaの買収が寄与しています。以、解説します。


 まず資さんうどん(すけさんうどん:福岡県中心に展開するうどんチェーン店)は、M&A後、関東・関西でも想定以上の高評価を得ており、売上・営業利益ともに加速しています。ポートフォリオの「低価格、日常使い」という空白地帯を埋めるブランドとして、圧倒的な集客力(関東・関西エリアの売上高は既存ブランドの約3倍)を誇り、2026年には30店の出店、2027年以降は全国展開も視野に入れています。


 急速な展開により人材育成と採用が課題ではあるものの、関西エリアでは製麺を内製化し利益率の向上を図っています。今後は専用工場の増設も検討されています。


 筆者も先日、実際にお昼時に資さんうどんの店舗に行きましたが、駐車場は満車でファミリー層を中心に行列ができていました。席についてタブレットで注文してから提供は早く、効率よく運営されている印象でした。


 次に海外事業です。マレーシアのSuki-Ya(すき屋:しゃぶしゃぶ・すき焼き食べ放題チェーン)は、ムスリム市場向けに構築されたブランド力が強みで、東南アジアでの拡大を推進しています。

1店舗当たりの売上が約2億6,000万円と非常に高く、営業利益も前年比で+30%と拡大しています。


 マレーシアでは70店以上の出店余地がある、とすかいらーくHDは試算しており、東南アジア最大のムスリム人口を抱えるインドネシアでの展開も検討しており、海外事業の売上比率を今後10%前後からさらに高めていく方針です。


 日本国内では、既存ブランドを駅前などの好立地に厳選して出店しており、高い売上・収益を確保しています。特に、銀座にオープンしたしゃぶ葉のグローバル旗艦店は、インバウンド顧客からの評価も高く、通常の店舗よりも約20%高い客単価とトップクラスの売上を達成しており、今後の海外展開への応用も期待されます。


 これらの多角的な店舗展開とM&A戦略により、すかいらーくHDは中期事業計画の目標値を上回る成長を見せています。


すかいらーくHD 2025年度中間期 売上高増減内訳
資さんうどん買収!すかいらーくHDを「買い」と判断する三つの理由(茂木春輝)
出所:すかいらーくHD決算資料より楽天証券経済研究所が作成

[3]積極的な株主還元とDX推進による企業価値向上

 すかいらーくHDは、株主還元にも力を入れており、2025年度の中間配当は8.0円と、前年の7.5円から増配を予定しています。配当性向30%を目標としており、2025年度は30.8%を計画しています。また、現行の株主優待制度も継続し、2025年9月からは株主優待券の電子化により、スマホでの優待券利用が可能となり、利便性が向上します。


すかいらーくHDの株主優待内容
資さんうどん買収!すかいらーくHDを「買い」と判断する三つの理由(茂木春輝)
出所:すかいらーくHD決算資料より楽天証券経済研究所が作成

 さらに、コロナショック時から続けられてきた、長期的な企業価値向上に向けたデジタルトランスフォーメーション(DX:デジタル技術を活用して企業や組織のビジネスや業務フローを改革すること)の推進も顕著です。


 セルフレジ導入はもちろんのこと、すかいらーくアプリの決済手段拡大や、自動案内システムの本格展開などが進められ、省人化とピーク時間の回転率向上による売上成長に、貢献しています。


 これらの取り組みは、短期的な利益だけでなく、長期的な企業価値と持続可能性を高め、投資家にとって魅力的な要素となります。


 以上の理由から、すかいらーくHDは、積極的な成長戦略によってキャッシュフローは一時的に悪化しますが、今後の成長が期待できる企業であり、「買い」と判断します。


(茂木 春輝)

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