先週の日経平均は、自民党の高市新総裁誕生を好感した「高市トレード」で7週連続上昇、4万8,000円台に乗せました。しかし週末、国内政局の混乱と米中対立の再燃という二つの悪材料で、市場の雰囲気は一変しました。
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著者の土信田雅之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 【テクニカル分析】今週の株式市場 悪材料を跳ね返して再び上値を試せるか?<チャートで振り返る先週の株式市場と今週の見通し> 」
「高市トレード」に沸いた1週間
先週末10月10日(金)の日経平均株価終値は4万8,088円でした。前週末の終値(4万5,769円)比で2,319円高と大きく値を伸ばしたほか、週間ベースでも7週連続の上昇となりました。
図1 日経平均(日足)の動き(2025年10月10日時点)
あらためて先週の日経平均の値動きを振り返ると、前週末10月4日に行われた自民党総裁選で誕生した高市早苗新総裁を好感する、いわゆる「高市トレード」によって株価は大きく上昇しました。6日(月)には歴史的な大幅高を見せ、株価水準が一気に4万8,000円台のところまで引き上げられました。
以降も、米国株市場でのAI関連銘柄やテック株の上昇が追い風となり、日本株市場でもアドバンテストやソフトバンクグループなどが買われました。
さらに、指数寄与度の高いファーストリテイリングにも決算を好感した買いが入ったことも日経平均を押し上げ、9日(木)の取引時間中には4万8,597円の高値をつける場面もありました。
さすがに、週末の10日(金)は3連休を前に利益確定売りに押されたものの、節目の4万8,000円台を維持して取引を終えています。
こうした先週の値動きによって、「日本株は新たな局面に突入」と行きたいところですが、10日(金)の取引終了後に飛び込んできた二つのネガティブ材料によって、今週の日本株は下落スタートとなりました。
週末に発生した二つのネガティブ材料とは?
週末に発生した一つ目のネガティブ材料は、「国内政局の混乱」です。
10日(金)の取引終了後、公明党が自民党との連立からの離脱を表明したと報じられました。これにより、高市新総裁の首相指名や今後の政権運営が揺らぐ事態となりました。野党側からも首相指名候補を擁立しようとする動きが出てきています。
首相指名の投票が行われる臨時国会の召集も、当初予定されていた15日(水)から来週20日(月)以降にずれ込む見込みになっているため、政治的な不透明感がしばらく続くことになります。そのため、先週の「高市トレード」による高揚感はいったん終了となります。
二つ目は、「米中対立の再燃」です。
先週末10日の米国株市場は、前日比でダウ工業株30種平均が1.90%安、S&P500種指数が2.71%安、ナスダック総合指数が3.56%安と大きく下落しました。
その主な原因となったのは、トランプ米大統領が11月1日付で中国からの輸入品に100%の追加関税を課すとともに、全ての重要な米国製ソフトウエアに輸出規制を適用すると発言したことです。これにより、米中対立再燃への警戒感が高まりました。
この二つのネガティブ材料を受けて、11日(土)の朝に取引を終了した、日経225先物取引のナイトセッションの終値が4万5,220円となり、10日(金)の日経平均終値から2,800円以上も下落しています。
株価の下落は限定的か?
そのため、先ほども述べたように、今週の日経平均は不穏な空気に包まれる中で下落スタートとなりましたが、どこまでの下落を想定しておけば良いのでしょうか?
図2 日経225先物取引(日足)の動き(2025年10月13日の日中立合終了時点)
上の図2は、祝日の13日(月)も取引が行われていた、大阪取引所の日経225先物取引の日足チャートと、25日移動平均線乖離率です。
13日(月)の日中立合終了時点の終値は4万6,610円となっていますが、12日(土)朝のナイトセッションの終値4万5,220円から値を戻しています。
安値も25日移動平均線乖離率がサポートとして機能しています。
▼9月29日のレポート
【日本株】日銀短観、総裁選、配当落ち…上昇トレンドを維持できるか
仮に株価が再び下落に転じたとしても、25日移動平均線を下抜けるまでは、過度な警戒感は高まらないと見て良さそうです。ちなみに、先週末10日(金)時点の25日移動平均線の値は4万5,339円です。
そのため、今週は下落スタートが見込まれるものの、パニック的な売りにはならず、意外と早い段階で持ち直すかもしれません。
確かに、国内政治の動向は買い材料になりにくい状況です。しかし、米中関係への警戒については、トランプ米大統領の動きは突然に降って湧いた話ではありません。
先週9日には中国商務省が一部のレアアースの輸出規制を強化すると発表したほか、10日には米半導体企業のクアルコムに対して、中国当局が独占禁止法に違反した疑いがあるとして調査を開始しました。こうした動きにトランプ米大統領が反応した構図になっています。
また、今回は中国側からボールが投げられた格好ですが、中国では来週20日(月)から23日(木)にかけて「4中全会」(中国共産党第20期中央委員会第4回全体会議)が開催されるというタイミングであり、国威発揚のために示した政治的なポーズの可能性もあります。
もちろん、関税発動が濃厚になるなど、事態が悪化してしまうことも想定しておく必要はありますが、これまでの米中間のやり取りを踏まえると、今回も「TACO(Trump Always Chickens Out :トランプ米大統領はいつもビビッて退く)」トレードが相場を支えることになるかもしれません。
ただし、上値を追えるかは微妙?
これまで見てきたように、思ったよりも早い段階で株価が下げ止まることが考えられます。ただ、「再び上値をトライできるか?」と言うと、ちょっと微妙かもしれません。
図3 東証プライム市場の新高値・新安値銘柄の状況
上の図3は東証プライム市場の新高値および新安値銘柄数の推移を示しています。
もちろん、新高値をつけていなくても、出遅れ銘柄が買い戻されていることで、値上がり銘柄数が多いことも考えられますが、NT倍率(日経平均÷東証株価指数(TOPIX))を見ると、足元で15倍台まで急上昇しています。
米国株市場の流れ(AIを背景にしたテック株の上昇)の影響が大きく、日経平均の指数寄与度の高い値嵩株など、少ない銘柄が牽引している面が強そうなほか、株価指数先物取引が主導して株価を引き上げていたことが考えられます。
図4 NT倍率(日経平均÷TOPIX)の推移
実際に、先週の上昇率を見ると、日経平均が週間で5.06%上昇したのに対し、TOPIXは2.18%の上昇にとどまりました。日経平均がかなり先行しているため、目先は「日経平均売り・TOPIX買い」の裁定取引が多く出てくるかもしれません。
また、先週末10日(金)は、オプション・mini先物取引のSQ算出日だったのですが、そのSQ値は4万8,779円でした。この日の現物の日経平均の高値が4万8,510円だったため、取引時間中の日経平均が一度もSQ値に届かない「幻のSQ」となりました。
一般的に、株価が早い段階で幻のSQを上回ることができない場合、当面の上値抵抗の株価水準として意識されることが多いという傾向があります。
幻のSQについては9月16日のレポートでも紹介していますが、2025年相場では何度となく幻のSQが出現しては、教科書的な傾向を打ち消してきました。果たして今回も打ち消すことができるのかが焦点になりそうです。
▼9月16日のレポート
今週の日本株:FOMC・日銀会合が控える中、「出尽くし感」や「リスクオフ」の影も
いずれにしても、今週の日経平均の下落が限定的になる可能性がある一方、上値についても意外と重たくなってしまう展開も想定しておく必要があり、売買の判断が難しくなりそうです。
また、中長期的な見通しについても、週足チャートと線形回帰トレンドで定点観測していきます。
図5 日経平均(週足)の線形回帰トレンドとMACD(2025年10月10日時点)
先週の日経平均は高市トレードによって、線形回帰トレンドのプラス2σ(シグマ)を超えてきました。前回のレポートでは、「余程の追い風にならない限りプラス2σまでの上昇は難しい」としていましたが、私の見通しが甘く、株価があっさりプラス2σに到達しました。参考にならず、申し訳ございませんでした。
▼前回のレポート
今週の日本株:高市トレードでどこまで上がる?組閣や国会運営に要注意
これまで見てきた状況から判断すれば、今週はプラス2σとプラス1σの範囲内で株価の落ち着きどころを探る展開が想定されます。先週末10日(金)時点のプラス2σとプラス1σの値はそれぞれ、4万7,688円と4万5,297円ですが、株価がプラス2σにタッチすることができれば、再び4万8,000円台をトライできるだけの相場の勢いがある状況であると判断できそうです。
反対に株価がプラス1σを下回ったとしても、中心線(4万2,906円)を下回らない限り、過度に警戒する必要はなさそうです。
なお、プラス1σの値(4万5,207円)は、図1での25日移動平均線の値(4万5,339円)とほぼ同じ株価水準ですので、目先の下値の目安は4万5,000円台の前半ということになりそうです。
米国株は銀行株の決算に注目
その一方で、今週は米国株市場の動きも押さえておく必要があります。
まず、米政府機関の閉鎖(シャットダウン)の状況がどうなるかが注目されます。10月あたまから始まった閉鎖は、早くも2週間が経過しようとしています。
今週公表の経済指標としては、消費者物価指数(CPI)や卸売物価指数(PPI)をはじめ、小売売上高などが予定されていますが、閉鎖が続くと公表が延期されてしまいます。10月28日~29日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)を前に、判断材料のデータが揃わないことへの警戒感は高まってくると思われます。
また、米国では今週から企業決算が本格化していきます。今週は米大手金融機関の決算発表が相次ぎます。具体的には、JPモルガン・チェースをはじめ、バンク・オブ・アメリカやウェルズ・ファーゴ、モルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックス・グループ、シティグループの決算が予定されています。
図6 米大手金融機関のパフォーマンス比較(2024年末を100)(2025年10月10日時点)
上の図6で、それぞれの2024年末のパフォーマンスを確認すると、利下げが決定した先日のFOMC(9月16~17日)直後の大手銀行株は上昇を続けていましたが、足元でやや軟調となっています。ただ、それでも株価水準的には、何気にテック株と変わらないパフォーマンスを見せています。
教科書的には、利下げによる金利低下は銀行株にとって利ザヤが縮小するというとことでネガティブに働きます。
しかし、最近までの米銀行株は、今回の利下げが「(景気後退に備えた)予防的な利下げ」と受け止められており、米景気の堅調さが維持されることで、利ザヤ縮小よりも資金需要(融資や買収や合併(M&A)などの資金ニーズ)の増加が見込まれるとポジティブに反応していたことが考えられます。
ただし、景気減速懸念が根強いことや米中対立への警戒感などもあり、今週の決算で先行きに慎重な姿勢が垣間見えると、これまでのパフォーマンスが好調だっただけに、株価の下落が大きくなってしまうことも考えられますので、注意が必要です。
(土信田 雅之)

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