ソニーグループ(6758)のスピンオフにより、ソニーグループの株主に対し9月29日にソニーフィナンシャルグループ株が付与されます。スピンオフ時、そして付与後の税金の扱いはどのようになっているのでしょうか?


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ソニーグループからのスピンオフでソニーフィナンシャルグループが上場へ

 9月29日、 ソニーグループ(6758) からのスピンオフにより、 ソニーフィナンシャルグループ(8729) が同9月29日に、東京証券取引所(東証)に上場しました。


 スピンオフとは、会社の事業部門もしくは子会社を切り離して独立させることを指します。

独立させた会社の株式は、現物配当として元の会社の株主に分配されます。


 具体的には、ソニーグループの株主に対し、保有するソニーグループの株式1株当たり、ソニーフィナンシャルグループ株式1株が交付されます。


 実は今回のスピンオフは、特例により税金が発生しない形で進められることになっているのです。


今回のスピンオフは特例的に課税されずに行われる

 スピンオフは、元会社(ソニーグループ)から切り離す子会社など(ソニーフィナンシャルグループ)の株式を、元会社の株主に「(ソニーフィナンシャルグループの)株式」の形で配当するという仕組みです。


 そのため、通常であればソニーグループの株主は配当金を受け取ったことになり、みなし配当課税という形で税金がかかるところです。


 ただ、今回のスピンオフは税制上の適格株式分配に該当する形で行われるため、このみなし配当課税がなされず、事実上無税で実施されることになります。


 従って、ソニーグループの株主が、ソニーフィナンシャルグループのスピンオフにより何かしらの課税を受けるということはありません。


ソニーグループ株式やソニーフィナンシャルグループ株式を売却した場合は?

 スピンオフ実施後には、ソニーグループ株主はソニーグループ1株につき1株の割合でソニーフィナンシャルグループ株式を保有することになります。


 そして、ソニーフィナンシャルグループ株式は9月29日から証券取引所で売買ができるようになりますから、ソニーグループ株式も、ソニーフィナンシャルグループ株式も市場で売却可能です。


 この際は、売却益に対して20.315%の税率で譲渡所得税が課税される点はご留意ください。


具体的にはどのような計算になる?

 スピンオフ後にソニーグループ株式やソニーフィナンシャルグループ株式を売却した場合の利益を計算するには、ソニーグループと、ソニーフィナンシャルグループのそれぞれの取得価額を計算する必要があります(特定口座やNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)口座の場合は証券会社が計算してくれます)。


 ソニーグループ株主に、現物配当として無償でソニーフィナンシャルグループ株式が分配されるわけですが、無償だから取得価額はゼロ、ということではありません。


 もともと各株主がソニーグループ株式を取得した際の取得価額に「0.206」を乗じた価格がソニーフィナンシャルグループ株式の取得価額となり、残りの金額がソニーグループ株式の取得価額となるのです。


 例えばソニーグループ株式を1株2,000円で2,000株保有していた場合、


●ソニーフィナンシャルグループ株式
2,000円×0.206=412円
412円×2,000株=82万4,000円


●ソニーグループ株式
2,000円-412円=1,588円
1,588円×2,000株=317万6,000円


がそれぞれの取得価額となります。


 ですから、スピンオフ後、仮にソニーグループ株を1株3,400円で2,000株売却した場合の売却益は(3,400円-1,588円)×2,000株=362万4,000円となり、これに対して20.315%が課税されます。


 また、ソニーフィナンシャルグループ株式を1株900円で2,000株売却した場合の売却益は(900円-412円)×2,000株=97万6,000円となり、これに対して20.315%が課税されることになります。


まとめ

 まとめると、次のようになります。


●スピンオフでソニーフィナンシャルグループ株式を受け取った際には課税は発生しない


●スピンオフ後、ソニーグループ株式やソニーフィナンシャルグループ株式を売却した場合は、譲渡所得につき課税される


●譲渡所得を計算する際のソニーフィナンシャルグループ株の取得価額はゼロではなく、「ソニーグループの取得価額×0.206」で計算された金額で、ソニーグループ株の取得価額はその残額となる


(足立 武志)

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