米国株式市場では、NYダウなどが最高値を更新し、堅調な滑り出しとなりました。AI関連株高とFRBの利下げ期待が相場を支えていますが、テクニカルでは修正の兆しも見られます。
※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の土信田 雅之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 米国株:10月相場は年末株高への「布石」になるか? 」
不穏な空気感の中でも堅調な今週の米国株
いわゆる「月またぎ」で10月相場入りとなった今週の株式市場ですが、米国株市場に目を向けると、1日(水)の取引終了時点でダウ工業株30種平均とS&P500種指数が最高値を更新、ナスダック総合指数も高値圏を維持していて、堅調な推移となっています。
米議会でつなぎ予算が成立できず、一部の政府機関が閉鎖(シャットダウン)となった影響で、週末3日(金)に予定されていた雇用統計の公表が延期される事態となるなど、やや不穏な空気感に包まれていますが、これまでのところ、株式市場は動揺を見せていません。
<図1>米主要株価指数のパフォーマンス比較
上の図1を見ても分かるように、半導体関連銘柄で構成されるSOX指数の上昇が堅調となっており、引き続き、AIをテーマにしたテック関連株が相場をけん引している格好です。
また、米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ期待が相場を支えていると思われます。今週発表された経済指標のうち、ADP雇用統計が市場予想に反してマイナスに転じたほか、9月米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況指数の結果も49.1と、前月(8月分)から小幅に改善する一方で、好不況の節目とされる50を下回りました。
両者を合わせて、利下げ観測を後退させるものにはならなかったことが安心材料になったもようです。
10月相場前半の値動きはどうなる?
10月相場を迎えたこともあり、そろそろ再来週あたりから本格化していく企業決算シーズンへの意識が高まっていくことになります。
その内容次第では、足元で相場をけん引してきた大手テック株や銀行株が再び騰勢を強めていくことも期待されます。
テック企業ではAI関連事業で売り上げや利益を伸ばせるかがポイントになるほか、銀行については業績と共に、その後の融資態度の変化も注目されそうです。
最近になって、米自動車関連企業の経営破綻が相次いでいますが、企業の規模的には金融市場への影響は軽微なため、今のところ株式市場も目立った反応は見せていません。ただ、景気後退懸念が高まると、企業の経営破綻が増加していくことが想定されるため、銀行が融資を渋り始めることも考えられます。
また、決算シーズンに向けた相場展開としては、「決算前に期待を先取りして上値を目指す」もしくは、「決算前に調整、またはもみ合いを続け、決算後に反応していく」ことが想定されます。
前者の場合は、よほどのポジティブサプライズがない限り、決算発表後に材料出尽くし感で売られやすく、後者の場合だと、好決算に対して素直に上昇しやすくなる展開が見込まれるわけですが、テクニカル分析の視点では、後者の動きが優勢かもしれません。
<図2>米NYダウ(週足)とMACDの動き(2025年10月1日時点)
<図3>米S&P500(週足)とMACDの動き(2025年10月1日時点)
<図4>米ナスダック総合(週足)とMACDの動き(2025年10月1日時点)
上の図2から図4は、米主要株価3指数(NYダウ、S&P500、ナスダック総合)の週足チャートと下段にMACDを表示したもので、それぞれ、上昇基調を強めていることが分かります。
それと同時に株価と2本の移動平均線(13週と26週)との間に距離が生じていることも確認できます。
それだけ、最近までの株価上昇の強さを物語っているわけですが、下段のMACDで、MACDとシグナルとの価格差を示す棒グラフ(ヒストグラム)を見ると、7月半ばから8月あたまにかけて価格差のピークをつけた後、徐々に縮小していることから、上昇の勢いに陰りも生じています。
つまり、週足チャートからみた今後の展開は、株価と2本の移動平均線との距離を縮めて行きそうです。
シナリオとしては、株価が下落して距離を縮めていくのか、それとも、株価水準を維持しながら移動平均線がキャッチアップしていくことで距離を縮めていくかのどちらかになりますが、いずれにしても、決算シーズン前の株価が上昇したとしても、その「伸びしろ」は限定的になるかもしれないことは想定しておくと良いかもしれません。
米財政は相場の重しとなるか?
冒頭でも述べたように、米国議会でつなぎ予算が成立できず、一部の政府機関が閉鎖されるという事態になっていますが、株式市場の反応は今のところ限定的です。
その背景には、つなぎ予算案に対して、野党の民主党議員数名が賛成票を投じていたこともあり、予算が成立するまでにあまり時間がかからないのではという見方があることや、歴史を振り返ると、閉鎖期間の株式市場が大きな下落に見舞われた事例は少なく、むしろ上昇した事例もあり、事態を楽観的に捉えていることが考えられます。
もちろん、事態が長期化すれば、雲行きが怪しくなることも考えられますが、現時点で過度に心配する必要はなさそうです。
とはいえ、今回のつなぎ予算をめぐる騒動をきっかけに、債務の増加とそれに伴う利払い負担など、米国の財政状況に対する不安が注目されてしまうと、少し厄介かもしれません。
<図5>米連邦政府の財政収支の対GDP比(%)の推移
上の図5は米連邦政府の財政収支の対国内総生産(GDP)比の推移を示していますが、2024年末時点での政府の財政収支は対GDP比でマイナス6.25%の赤字となっています。
持続可能な水準がマイナス3%までとされているほか、過去においてマイナス5%を下回っていた場面はいわゆる「有事」であることがほとんどです。コロナ禍の影響や余韻があるとはいえ、「平時」である現在の赤字水準としてはかなり深刻です。
また、債務の増加に伴って、米連邦政府の利払い額も1兆ドルを超えています。
<図6>米連邦政府の利払い額の推移
さらに、米トランプ政権による「米国第一主義」の政策運営に振り回されるなど、先行きの不確実性なども影響し、これまで安全資産の一つとされていた、米ドルや米国債への信頼感が米国の財政をめぐる混乱によって揺らぐ事態につながる可能性があります。
実際に、米ドル指数が低迷しているほか、米10年債利回りについても、利下げ継続の見通しの割には4.1%台で推移しており、金利があまり低下していません。さらに、金価格も上昇しているなど、最高値圏に位置している米国株以外の資産の動向からは、リスクオンの雰囲気があまり伝わってきません。
とりわけ、金価格の上昇については、海外の中央銀行などの公的機関において、米国債の保有額を減らす一方で、金を保有する動きも傾向として表れ始めています。
現在の米株市場は米債務への警戒感を材料として動いていませんが、予算をめぐる米議会の動きが長期化したり、米国債の入札状況が不調となる場面が増えたりした場合には、リスク材料として浮上してくるかもしれないことは、頭の片隅で想定しておく必要はありそうです。
従って、基本的には10月相場は前月からの株高基調を引き継ぎつつ、企業決算や景況感などを確認しながら、年末株高に向けた「布石」になるかどうかが試される月になりそうです。
(土信田 雅之)

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