配当利回りが高い株はNISA成長投資枠での長期投資候補として有望です。ただし、減配になって株価が下がる銘柄は避けたいところです。

そのためには、配当利回りが高いだけでなく、営業利益率が高く、収益基盤が安定的な銘柄を選ぶことが重要です。今回は、そうした配当利回りも営業利益率も高い銘柄を選べるようになるためのクイズを出します。


【クイズ】JT、中外薬、ホンダ、ファストリ:配当利回りと営業...の画像はこちら >>

※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の窪田 真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 JT、中外薬、ホンダ、ファストリ 配当利回りも営業利益率も高い株はどれ?【クイズでわかる!資産形成】 」


今日のクイズ

<クイズ> 以下に、 JT(日本たばこ産業:2914) 、 中外製薬(4519) 、 ホンダ(本田技研工業:7267) 、 ファーストリテイリング(9983) の売上高と営業利益(今期予想:売上高を100とした比率で表示)と、予想配当利回りが出ています。


【クイズ】JT、中外薬、ホンダ、ファストリ:配当利回りと営業利益率が高いのは?
出所:営業利益は会社予想、売上高を100とした比率で表示。配当利回りは、今期1株当たり配当金(会社予想)を9月30日株価で割って算出

 A社、B社、C社、D社はそれぞれ、JT(2025年12月期)、中外製薬(2025年12月期)、ホンダ(2026年3月期)、ファーストリテイリング(2025年8月期)のうちのどれでしょう?


 なお、JTとは日本たばこ産業のことです。中外製薬はスイスの製薬大手ロシュの子会社です。ホンダは自動車大手の本田技研工業のことです。ファーストリテイリングはカジュアル衣料品店「ユニクロ」「GU」を展開しています。


NISA「成長投資枠」で高配当利回り株投資

 2025年もそろそろ終盤です。2025年のNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)「成長投資枠」(240万円)は、まだ余っていますか? 成長投資枠の範囲内であればNISAで個別株投資もできます。


「成長投資枠」というと、成長株に投資しなければならないのかと勘違いするかもしれません。そんなことはありません。

高配当利回り株へ長期投資するのも有効な戦略です。


 ところで、高配当利回り株を選ぶ時に、注意すべきことは何でしょう?


 予想配当利回りの高さだけで選ばないことです。


 なぜなら、予想配当利回りは、確定利回りではないからです。業績が悪化して減配(配当金が減らされること)となり、株価が下落することもあり得ます。そのため、なるべく減配リスクの低い銘柄を選ぶことが大切です。


 予想配当利回りが高すぎる(6%以上)銘柄には、減配リスクが高い傾向があります。減配リスクが低くても、配当利回りがそれなりに魅力的な銘柄の予想配当利回りは2.5~5%程度です。


 それでは、減配リスクの低い銘柄を選ぶには、何に気を付けたらいいでしょう。注意点を二つあげます。


【1】 時価総額1兆円以上:時価総額が大きい銘柄ほど、減配リスクは低い。
【2】 営業利益率10%以上:営業利益率が安定的に高い銘柄は、減配リスクが低い。 


 ここでクイズに出したA社、B社、C社、D社のデータを改めて見てみましょう。

営業利益率が10%以上で予想配当利回りが高めの銘柄は、B社とC社です。この2社は、高配当利回り株として長期投資の候補として検討に値します。


 A社は営業利益率が高いものの配当利回りが低く、D社は配当利回りが高いものの、営業利益率は低いです。


正解は…

 正解は以下の通りです。


【クイズ】JT、中外薬、ホンダ、ファストリ:配当利回りと営業利益率が高いのは?
出所:予想配当利回りは、今期1株当たり配当金(DPS)(会社予想)を9月30日株価で割って算出。ファーストリテイリングはDPS480円、株価4万5,040円。中外製薬はDPS250円、株価6,448円。JTはDPS208円、株価4,862円。ホンダはDPS70円、株価1,531円。ファーストリテイリングは2025年8月期、JT・中外製薬は2025年12月期、他は2026年3月期

 中外製薬とJTは、営業利益率の高い高配当利回り株として、NISA「成長投資枠」で投資する価値があると判断しています。ホンダはトランプ関税のダメージが大きく営業利益率が低いものの、長期的に関税影響を克服できると予想しています。高配当利回り株として、長期投資に適していると判断できます。


 以下、4社について簡単にコメントします。


【1】A社:ファーストリテイリング


 ファーストリテイリングは、中国およびベトナムの協力工場で製造する自社開発プライベートブランド品で日本およびアジアで高い競争力を有しています。アジアでの成長が続いているので、株式市場では成長株として評価されています。そのため、株価収益率(PER)などの指標で見ても高い株価がついています。結果として、配当利回りは低くなっています。


 かつて国内だけでビジネスをやっていた時は、株式市場の評価は高くなく、PERも低めでした。

ファーストリテイリングの営業利益に占める海外利益の比率が高くなるに従って、PER水準も高くなっていきました。今は、利益の過半を海外で稼ぎます。


【2】B社:中外製薬


 医薬品産業には、利益率が高く配当利回りの高い銘柄が多数あります。中外製薬はスイスの製薬大手ロシュの子会社で、バイオ技術を駆使した新薬開発でこれまで高い成果をあげてきました。自社開発の新薬では、特許が有効な間、高い利益率が稼げます。


【3】C社:JT


 JTは、配当利回りが5%と高く、かつ利益率が高いので、好配当利回りの長期投資候補として有望です。ただし、二つ不安材料があります。それは、同社のロシア事業の先行きと、次世代タバコのシェア争いです。


 ロシア経済と日米欧経済の分断が深まる中で、ロシア事業から撤退を余儀なくされる場合には、JTに大きな減損損失が発生して、減配になるリスクもあります。また、次世代タバコで、米フィリップモリスの「IQOS(アイコス)」に競り負けていることも不安材料です。


 日本国内で喫煙者数が減り続けていることもリスク要因ではありますが、値上げによって利益を確保していけると考えられるので、喫煙者の減少自体を重大なリスクとは考えていません。


【4】D社:ホンダ


 ホンダは今期、トランプ関税で大きなダメージを受けます。

会社予想では、関税のマイナス影響が4,500億円となります。ホンダは米国生産比率7割であり、将来的に9割に引き上げていく計画です。トランプ関税のダメージは短期的に大きいものの、長期的には克服できると予想しています。


 ホンダは、二輪車で世界トップです。アジアでホンダ二輪車は生活および仕事全般で使われており、安定的に高い利益をあげています。


テクニカル・ファンダメンタルズ分析を詳しく勉強したい方へ

 最後に、株式投資を書籍でしっかり勉強したい方に、私の著書を紹介します。ダイヤモンド社より、株価チャートの読み方をトレーニングする「株トレ」(黄色の本)と、決算書の見方などを学ぶ「株トレ ファンダメンタルズ編」(水色の本)が出版されています。どちらも一問一答形式で株式投資の基礎を学ぶ内容です。


「 2000億円超を運用した伝説のファンドマネジャーの株トレ 」


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【クイズ】JT、中外薬、ホンダ、ファストリ:配当利回りと営業利益率が高いのは?
「株トレ」 シリーズ2点の書影

(窪田 真之)

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