肉乃小路ニクヨさんプロフィール


挫折だらけの20代、全てが今の自分への投資だった
トウシル:ご経歴を見ると、有名進学高校→慶應義塾大学→金融業界大手と、ピッカピカのエリートなので驚きました。プロフィールを見ると、挫折の少ない人生のように見えるのですが…。
肉乃小路ニクヨさん(以下、ニクヨさん):とんでもない。
大学時代も、父親ががんになり、看病するために一年休学した後、復学してやっと卒業しています。卒業後に新卒で入った証券会社も、入社とほぼ同時に急性肝炎になってしまい、研修もほとんど受けられず、病床で二種外務員(証券会社の社員に必須な資格)の勉強をしていました。
やっと復職しても、病みあがりで体力が持たず、数カ月で退職してしまいました。その後も非正規雇用が長かったのでお金もなくて、風呂トイレ共同の4畳一間に住むなど、けっこう苦労した20代でしたよ。
トウシル:メンタル面でも経済面でも、いくつもの壁を乗り越えて今があるんですね。
ニクヨさん:はい。大学在学中に父が亡くなったんですが、ローンが完済してない不動産を持っていたので、私が20歳になるや否や、強制的に億単位の連帯保証人にさせられました(笑)。わけも分かんないのに紺のブレザーを着せられて、金融機関に連れていかれて、自分の将来も見えていないのに「連帯保証人」の欄にハンコを押しました。
トウシル:うわー。20歳にして億単位の連帯保証人とは、なかなか怖いですね…。お金のありがたさと責任の重さ、両方を痛感する事件ですね…。
ニクヨさん:はい。この不動産からの家賃収入のおかげで、無事、大学を卒業できたのですが、「これからはあんたが連帯保証人だからね」って母親に言い渡されて、内心とてもビビっていました(笑)。
トウシル:社会人になられてからは、ニクヨさんは証券会社→非正規の証券会社コールセンター→銀行→生命保険会社の正社員、と金融業界に長くて、人とお金の関係をさまざまな面から見てこられたと思います。
ニクヨさん:いろいろやりましたね。証券会社のコールセンターやったり、銀行で投資信託と外貨預金、仕組み預金などを電話で営業していました。その時、変額保険や個人年金保険も販売していたんですがこれが面白くて、もうちょっとちゃんと働きたいなと思って30歳直前で外資系生命保険会社の正社員になったんです。
トウシル:生保ではどんなお仕事をされてたんですか?
ニクヨさん:今まで営業最前線で金融商品を販売してきたんですが、生保では、営業支援の仕事をしました。銀行でも生命保険を販売していたので、自社の保険の販売方法を指導したり、研修に必要な資料を作成したりする部門にいました。
トウシル:生保はノルマが厳しい、というイメージがあるんですが、辛いことはなかったですか?
ニクヨさん:生保って、お客さまの人生に寄り添って、何十年以上っていう長期で手数料をいただくビジネスなので、収益モデルが短期ではなく長期スパンだったのが私の性格に合っていたみたいで、特に大変なことはなかったですね。生保時代に、金融系の難関資格をたくさん取得したのも大きな成長になりました。
そして、私は大学在学中から女装を始めたんですけど、生保時代は会社員をしながら、夜や週末は女装してショウガールをしたりして、とても充実していました。
トウシル:あの、変なこと聞くんですけど、昼間の会社は…女装していなかったんですね?
ニクヨさん:しないわよ(笑)。
トウシル:女装のクオリティも高いし、ご自身がエンターテイナーでもあるので、圧勝だったんでしょうね(笑)。
人生の終わりは選べない…42歳で正社員を辞めフリーランスへ
トウシル:ニクヨさんは、42歳で約10年務めた外資系保険会社を退職し、経済愛好家・ニューレディとしてフリーランスになられています。正直、42歳以降の人生のほうが何かあったとき大変じゃないですか? 勇気のある決断だなと思うんですが。
ニクヨさん:仕事自体が嫌だったわけではないんです。でも、そのころ、マツコ・デラックスさんやミッツ・マングローブさんがテレビで活躍し始めているのを見て、こんな生き方のほうが楽しそうだな、自分を生かせるなって思ったんですよね。
私は人生=経営、自分=自分株式会社の社長だと思ってるんです。父が50代で死んでいるので、自分に残された時間は長くないかもしれない。それならば、自分自身を商品として売り、自由に生きていく方を選びたいなと思って、フリーランスになりました。
トウシル:20~30代をがむしゃらに生きた経験が全て、今のニクヨさんの人生に生かされていますよね。YouTubeなどを見ると、楽しく自由に生きている様子がよく分かります。

ニクヨさん:はい。今は自分を愛して、自由で幸せに生きていますが、20代で苦しんだこと、30代でがんばったことなどが、全て今の自分にリターンを生み出すための「投資」だったなと思います。
コンプレックスを抱えて苦しんだり、非正規社員の期間も長かったりして、経済面でも順調ではなかったのですが、その分、自分が幸せになるために必要なことや不要なことを見分ける力が身に付いたように思います。
20代の方へ、若いうちこそお金を使うべき!
トウシル:金融業界に約20年いて、さまざまな知識や経験を積まれたニクヨさんですが、「金融XXX」「ファイナンシャルXXX」的な肩書を名乗っても不思議ではないのに、公式プロフィールの肩書が「経済愛好家」なのがとてもシンプルで、印象的でした。
ニクヨさん:はい。たくさんのチャンスや出会いをくれる「お金」を愛おしく思っています。ただ、お金は幸せになるために必要な「道具」であって、お金が直接自分を幸せにしてくれるわけじゃないんですよね。
「自分がどんな時に幸せか」を知れば、お金の使い方が変わってくると思います。そこが分かっていなければ、お金もうけに成功して「お金持ち」になっても、「幸せ」にはなれないと思います。
トウシル:著書『確実にお金を増やして、自由な私を生きる! 元外資系金融エリートが語る価値あるお金の増やし方』では「ためる」「使う」「稼ぐ」「増やす」のステップでお金との付き合い方を解説しておられます。「稼ぐ」「ためる」「増やす」「使う」の順ではないのですね。
ニクヨさん:お金は、自分を幸せにするための「道具」なので、使わないと意味がないです。
40代以降になると、老後のために資産形成をしなければならない時期に入ってきますし、家庭を持っている人は教育費なども重くなってくる世代で、新しいことにお金を使えなくなってきます。必要な支出を最低限に抑えた後は、しっかりお金を使って、さまざまな経験をすることをお勧めしたいです。
今の若い人ってどうなんでしょうね? 車も乗らないしお酒も飲まないし、モノにお金を使わないって聞いてるんですけど…。
トウシル:最近、取材でお目にかかる個人投資家さんの中には、若い間にお金を使うっていう人も増えてきました。
世界一周旅行に出かけたり、沖縄に移住したり、不要なモノは捨ててミニマリスト生活を送ったりするなど、自分の「幸せ」がどこにあるかをしっかり把握している方も増えてきたように思います。並行してしっかり投資もしていて、お金と幸せのバランスが取れている方も多いように感じます。
ニクヨさん:いいことですね。昔は敬遠されていた「お金もうけ」という言葉が、「投資」っていう言葉に置き換わったタイミングかもしれません。
トウシル:ニクヨさんが今、「幸せだな…」と思う瞬間ってどんな時ですか?
ニクヨさん:やっぱり、モノよりも思い出に残る経験をしているとき「幸せ」と感じることが多いですね。ドラマや映画を見ても、「若い頃はこの手の内容では泣かなかったけど、今は泣けるわー」っていうことも多いんです。
過去の経験と重なって、若い頃にはなかった今の感性を刺激してくるということがあるので、若いうちにいろんな経験をすることにお金を使うといいと思いますよ。
▼後編はこちら
一度きりの人生、自分を幸せにできるのは自分だけ!肉乃小路ニクヨさんインタビュー後編
(トウシル編集チーム)