投資はタイパ重視で全世界に投資するオールカントリー型インデックスがメイン。なぜなら自分の時間を大切な自分のために使いたいから。
「ほったらかしすぎ」は残念!自分のお金の行く末を知ろう
トウシル:証券、銀行、保険と、全方位的に金融業界を経験されたニクヨさんに伺いたいのですが、お金の価値、意味、役目って何だと思われますか?
肉乃小路ニクヨさん(以下、ニクヨさん):うーん。金融って、文字通り、「お金」を「融通」する仕事なんですよね。お金があるところから、そのお金を必要としている人のところに、お金を巡らせる、というのが金融業に共通している役割だなと思います。お金とは、体内を循環する血液とか、栄養のようなもの。お金が必要な人のところに、潤滑に回っている状態が理想ですよね。
トウシル:新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)が始まり、投資を通じてその循環に積極的に参加する人が増えたように思います。ニクヨさん自身は投資をされてるんですか?
ニクヨさん:もちろんしています。50代になり、「おひとりさま」に備えなければならないので(笑)。
トウシル:ニクヨさんのポートフォリオのメインは何ですか?
ニクヨさん:投資信託がメインです。あとはちょこちょこ、応援したい日本株を「推し活」的に買い足しているぐらいです。
トウシル:ニクヨさんくらい金融知識があるんだったら、米株やFXなどもリスクを避けながら売買しているのではと思っていたのですが…、予想外に堅実ですね。
ニクヨさん:うーん、株式や為替を本気でやるとなると、決算や市場をずっと見てないといけないから、時間をすごくとられますよね。私は旅行や友達との遊びやYouTubeなど、やりたいことがいっぱいあるから、投資に時間や手間をかけすぎたくないんです。
自分の時間を圧迫しないのが投資信託のいちばんの魅力です。最近は証券会社の努力とテクノロジーの進化で手数料も本当に少なくて済むので、こんな合理的な商品はないと思います。
トウシル:新NISAデビューした方々の間では、全世界に投資するオール・カントリー型の投資信託がとても人気なのですが、ニクヨさんから見てどう思いますか?
ニクヨさん:全世界に資産を分散するのが安心だ、という気持ちは分かります。楽だし。でも、世界中にばらまいておけば大丈夫だろう、なにかあっても運用会社がリバランスしてくれるだろうっていう考え方はちょっと安易かな。
全世界に投資するならば、今の世界がどうなっているか、ある程度俯瞰(ふかん)して状況を知っておくべきだと思うんです。欧州も米国もアジアも、永久に政情が安定してるわけじゃないでしょ。いつ何が起こってバランスが崩れるか分からないし。
トウシル:そう思うと、全世界型というのは、範囲が広すぎてなかなか大変ですよね。追いかけきれない情報も多そうです。
ニクヨさん:せっかく投資しても、経済循環に参加する経済ゲームに参加している実感が薄いままで終わっちゃうのは残念でしょ? 自分の時間を圧迫するほど血眼にならなくてもいいので、「知ろう」と思ってアンテナを張っておくと、自分のお金の投資先への理解が深まります。
自分の稼いだお金が自分の代わりに世界を回って、いろんな追体験をしてくれるんだから、その行く末はきちんと見届けたほうがいいと思います。
家族を持つと人生を3回分、味わえる
トウシル:ニクヨさんは今、何に一番お金を投じていますか?
ニクヨさん:私が今一番、時間とお金を配分したいのは、「健康」に関することですね。お金を持っていても、健康でなければ楽しい体験もできません。だから、まずは自分の体のためにお金を使っています。例えば私は食べることがとても大好きなんですが、同じ一食にしても、「おいしい」と「体にいい」の二つを実現できる食事が理想ですね。一回で二度、得するというか。
トウシル:FIRE(経済的な自立と早期リタイア)した投資家さんは皆さんそうおっしゃるんです。やはり、健康に気を配る=自分を大切にする、幸せを感じる土壌をつくる、というところに落ち着くんでしょうね。
ニクヨさん:そうですね。あと、私はゲイなので結婚もしないから、私にはできないことだけれど、可能ならば、子供を持つということも、別の面で幸せを感じやすくなるかもしれないと思います。
トウシル:ええー? 私、今、息子が中学3年生で、反抗期真っ最中で、めちゃくちゃむかつくことが多くて、幸せとはほど遠いんですけど(怒)。
ニクヨさん:今この瞬間はそうかもしれないけれど、子供を持つことで、人生の追体験ができるんですよ。
トウシル:うっ、確かに…。私が中3のとき、両親はこんな気持ちだったかもしれないと思うと…。
ニクヨさん:ね? 親の世代とも子の世代とも、つながりやすくなる経験が得られる、っていうのが、子育ての一番のご褒美だと私は思います。
自分だけの幸せの優先順位に早く気づいて!
ニクヨさん:でもね、したくないことを無理やりする必要はないんですよ。結婚も出産も、それが自分を幸せにしないと思ったら、ほかのコトで幸せを感じる経験を探していけばいいんです。
トウシル:ニクヨさんは今、「ニューレディ」として、自分が自分らしくいられる環境を築いておられるんですね。
ニクヨさん:うーん…。「自分らしい」っていうのとはちょっと違うんですよ。もしかして、ゲイ=オネエ(女装)って思ってない? ゲイと女装は違うのよ。ゲイは恋愛対象が同性っていうだけで、女になりたい男、っていうのとは全然違うんです。ゲイは男らしい男が好きな人が多いから、女装するとモテなくなっちゃうんです。
トウシル:じゃあ、女装していると恋愛しにくくなるんですけど、それはいいんですか?
ニクヨさん:大学生時代にパソコン通信を始めて、ゲイコミュニティとつながることができて、女装デビューしたんですけど…。もともと女装をしたかったわけじゃなくて、女装してしまったほうが恋愛にパワーを注がなくてもよくなるんじゃないかって思っちゃったんです。
ゲイの恋愛ってめんどくさいのよ。男同士だから、恋愛沙汰が一生続くんです。結婚するわけじゃないし、終わりがないのよ。
トウシル:ああー、なんか分かります。私も結婚した時は、「これで恋愛市場から退場できる。異性ウケするための努力をしなくてすむ」ってすごく開放されました(笑)。
ニクヨさん:それと似てますね。人生の中で華やかな恋愛沙汰って多くなかったんだけど、私はそれで十分、満足だし幸せです。メイクや女装をしていても、自分が男性であることに違和感はないんです。今だって「オジサン」として取材を受けてますよ(笑)。
トウシル:メイクや女装は、自分を解放することじゃなくて、自分をより生かすための「戦略」なんですね。
ニクヨさん:そうなんです。私にとって「女装」とは、手段であって目的じゃないの。幸せの優先順位って、人それぞれに違うでしょう? 私の中で、「恋愛」の優先順位はすごく低いんです。
20代でいろんな経験をして自分の優先順位に気づき、30代の外資系生保時代にしっかりと資産の土壌をつくれたので、42歳でフリーランスになるのに不安があまりありませんでした。自分の「やりたいこと」に全振りしているので、人生でやりがいを感じています。たまにちょっと体調が崩れたりすると不安になることもあるんですけどね。
「自分が何をしているときに幸せか」っていうのをいろいろやってみた上で、ちゃんと見つけられたら、それと向き合うことで幸せを感じやすくなるのではないかなと思います。
トウシル:周囲の声や平均値に惑わされないで、自分の優先順位を早めに理解するのが、幸せの近道ということですね。本日はありがとうございました!


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若い間は自分の投資にお金を惜しまないこと!肉乃小路ニクヨさんインタビュー前編
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(トウシル編集チーム)