高市ラリーで保有株が値上がりした今、「売るべきか、持ち続けるべきか?」と悩んでいませんか? 長期的な資産形成には、適切な「アセット・アロケーション(資産配分)」と「リバランス(資産の再配分)」が大切です。日本最大の公的年金GPIFも実践する賢いリバランス術を、クイズ形式で学びましょう。
※このレポートは、2025年2月1日付「窪田真之のクイズでわかる!資産形成」のアップデート版です。
クイズの前に、アセット・アロケーションとは
最初にアセット・アロケーションについて説明します。その後でクイズを出します。
長期の資産形成において、投資成果のほとんどはアセット・アロケーションによって決まります。国内株式、外国株式、外国債券、国内債券などの資産に、保有する投資資金を何パーセントずつ配分するかが重要です。
例えば、日本最大、かつ世界でも最大の公的年金で、運用資産260兆243億円を保有する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の基本ポートフォリオは以下の通りです(2025年6月末時点)。
<GPIF基本ポートフォリオ>
基本ポートフォリオ
乖離許容幅
国内株式
25%
± 6%
外国株式
25%
± 6%
外国債券
25%
± 5%
国内債券
25%
± 6%
(出所:GPIF「基本ポートフォリオの考え方」)
基本ポートフォリオとは、260兆円の運用資産のアセット・アロケーションを示すものです。決められた比率から±5%から±6%の範囲内に、実際のアセット・アロケーションが収まるように管理しています。
GPIFは2001年度以降、運用で累計165兆円もの収益を稼いでいます。途中で基本ポートフォリオの変更はありましたが、基本的にはシンプルなアセット・アロケーションで運用しつつ、適切なリバランスをしながら、高い収益を上げました。
今日のクイズ
Aさんは、老後のための資産形成として2年前の2023年9月末に400万円で運用を始めました。GPIFの基本ポートフォリオに倣い、日本株、外国株、外国債券、国内債券に25%(100万円)ずつ投資しました。国内債券では、安全資産として個人向け国債「変動金利型10年」に投資しました。
<2023年9月、運用開始時のポートフォリオ>

外国株・日本株の値上がりが大きく、2年間で運用ポートフォリオの時価総額は約30%増加して520万円となりました。
<2年後、2025年10月のポートフォリオ>

値上がり率が資産ごとに異なるため、時価ベースの構成比率がスタート時点とは異なるものとなっています。
ここで、リバランスを行って、スタート時点のアセット・アロケーションに戻すためには、以下の【A】【B】【C】のうち、どのアクションを取ったらよいのでしょうか?
売買コスト・税金はかからないものと仮定してください。
【A】個人向け国債(102万円)を全て売却して、国内株式を51万円、外国株式を51万円買い増しする。
【B】国内株式を20万円売却、外国株式を28万円売却して、外国債券を20万円購入、個人向け国債を28万円購入する。
【C】国内株式(150万円)、外国株式(158万円)を全て売却して、個人向け国債を308万円買い増しする。
アセット・アロケーションで投資の成果はほとんど決まる
アセット・アロケーションの次に大切なのが銘柄選別です。従って、まずアセット・アロケーションを決めて、その次に銘柄を決めるのが理想的です。
ところが、個人投資家には「何を買うか」だけ考えてアセット・アロケーションをどうするか考えない方がたくさんいます。「これいいですよ」と勧められた投資商品を次々と買っていった結果、雑多な投資商品をいくつも持っていて、全体でどういうリスクを取っているか分からなくなっている人もいます。
もし、皆さんが、以下のように質問されたらすぐに答えられますか?
【質問】あなたが今、保有する金融商品(投資信託、株、上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(REIT)、債券、銀行預金など)全体で、どういうアセット・アロケーションになっているか、分かりますか? 国内株式、外国株式、外国債券、国内債券、現金預金、その他にそれぞれ何%投資しているか分かりますか?
すぐに答えられる人はほとんどいないかもしれません。ちょっと調べた上で、きちんと答えられますか? 複雑な金融商品をいろいろなところで購入していて、全体でどうなっているか、調べようがなくなっている人もいると思います。
どういうリスクを取っているか分からない方は、分かるものだけ分類してください。
【国内株式】日経平均インデックスファンド・A社株…
【外国株式】全米株式インデックスファンド・G社株…
【外国債券】米国債…
【国内債券・現金預金】個人向け国債・銀行預金…
【その他】金プラチナ・複雑なリスクをとっている投資信託・暗号資産…
複雑なリスクを伴い、そのリスクの中身が何であるか理解していない金融商品は、極力減らしましょう。
理想的なのは、「プレイン・バニラ」と呼ばれる単品商品だけでポートフォリオを組むことです。最初は、国内株式だけ、外国株式だけ、外国債券だけのように、取っているリスクの種類が明確で分かりやすいものから投資していった方が良いと思います。
正解は…
正解はBです。
Bを実施したあと、アセット・アロケーションは、運用開始時点と同じ比率に戻ります。
<リバランス後のポートフォリオ>

このように、アセット・アロケーションが大きく変動した時に、元に戻すアクションを、リバランスと言います。
株などの高リスク資産は値動きが激しく、急騰・急落を繰り返す傾向があります。急騰した資産を少しだけ売り、急落した資産を少しだけ買うリバランスは、長期のパフォーマンス向上とリスク管理に貢献するので、できればやった方が良いと思います。
長期投資のために構築したポートフォリオを、何もせず放置しておいても悪くはありませんが、できれば、数年に1回、あるいは相場が大きく動いた後に、リバランスを検討したら良いと思います。
クイズの設問にある【A】と【C】は、リバランスの悪い例です。
【A】は、安全資産をゼロにして、値上がり率の高かった国内株・外国株を買い増しする行動です。ポートフォリオのリスクが高くなり過ぎるので、望ましくありません。
【C】は値上がり率の高かった国内株式・外国株式を全て売ってしまうものです。安全資産の比率が高くなり過ぎるので、望ましくありません。
長期の資産形成において適切なリスク管理とは、「リスクを取り過ぎる」ことを避けるだけではありません。「リスクをまったく取らない」ことも避ける必要があります。このように、適切なリスク管理が必要です。
今日のレポート、難しくて分かりにくかった方に
ちょっと難しいと思った方に、すごくシンプルに説明します。
適切なリバランスとは、日本株や外国株が大きく値上がった時、その「値上がった部分の一部を利益確定売りする」ことです。100万円投資していた外国株が150万円になったならば、値上がり部分(50万円)の一部を利益確定する一方、投資元本(100万円)はそのまま売らずに持ち続けるという考えです。
GPIFを応用したアセット・アロケーション
皆さまが資産形成するためのアセット・アロケーションとして、GPIF型をそのまま使っても良いですが、個人の事情に合わせて、以下のように修正することも可能です。
<GPIF基本ポートフォリオを応用したさまざまなアセット・アロケーション>

GPIFの基本ポートフォリオをたたき台として、皆さまに合ったアセット・アロケーションを工夫してください。
(窪田 真之)