米国と中国の間で貿易戦争が再燃しています。中国側がレアアース関連で一連の輸出規制を発表すれば、トランプ大統領は中国の製品に対して100%の追加関税を課すと表明。
※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の加藤 嘉一が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 米中貿易戦争「再燃」の兆し、2週間後にトランプ・習近平会談は実現するか? 」
「米中貿易戦争」が再燃?レアアース、追加関税、海運、ソフトウエア…
「トランプ関税」が発動されて以来、日本を含む各国と米国との間で多角的な協議が展開されてきました。
世界第一、第二の経済大国である米国と中国間の協議は、単なる追加関税率の設定にとどまらず、レアアースをはじめとする戦略物資、半導体やAIをはじめとする先端技術、それらを巡る輸出管理、および「TikTok」やエヌビディアといった個別企業の事業や製品の扱いなど、経済安全保障の核心や根幹に関わる部分にまで踏み込んで、5月にジュネーブ、6月にロンドン、7月にストックホルム、そして9月にマドリードで、計4回のハイレベル協議が行われてきました。
私はこれまで米中協議の実態を「合意なき対話」と形容してきました。合意には至らないものの、少なくとも対話は継続されており、交渉が破綻し、米中間の追加関税率が再び3桁の天文学的なレベルまで上昇するような壊滅的状況は避けられているという意味合いです。
追加関税率の24%分をどうするかの期限は11月10日で、それまでに交渉が妥結しなければ、この分が追加されることになります(再び延期の可能性も否定できません)。
ここにきて、米中間の攻防が三度激化しています。10月31日~11月1日に、韓国で開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)サミットで、トランプ大統領と習近平国家主席が初の対面での首脳会談を模索している状況下における、微妙なタイミングだと私は受け止めています。
攻防激化の内容を、時系列で具体的に見ていきましょう。
- 10月9日、中国政府がレアアースおよび関連製品、材料、技術の輸出管理を強化する一連の措置を発表
- 中国商務部は「これらの措置は中国政府が法律法規に基づいて打ち出したものであり、自国の輸出管理体制を改善することを目的とした正当な手段である」と説明
- 中国側の発表を受けて、10月10日、トランプ大統領がSNSを通じて、中国のレアアース輸出管理措置への対抗措置として、11月1日から中国製品に100%の追加関税を課すと発表
- トランプ氏は投稿で、「中国が非常に攻撃的な姿勢を示した」「中国が製造する製品だけでなく、中国が製造していない製品に対しても大規模な輸出管理を実施すると表明している」「国際貿易において前代未聞で、他国との取引における道義的冒涜だ」などとコメント
- トランプ氏は同時に、重要ソフトウエアの対中輸出管理措置を適用する意向を表明
- 10月10日、米国通商代表部(USTR)は1974年通商法301条に基づき、中国企業が運航・所有する船舶や、中国で建造された船舶の米国港湾への入港について、追加料金の徴収が10月14日から開始される
- 10月14日、中国政府は米国側への対抗措置として、韓国造船大手「ハンファオーシャン」の米子会社5社への制裁を発表。個人・法人を含め、当該企業との取引が禁じられる
米中それぞれの「本気度」は?
最後の中国政府による韓国企業の米子会社への制裁措置に関して、ハンファオーシャンは、韓国の造船会社として初めて米国の造船所を買収し、米国への技術移転を目指しているさなかです。中国政府がここに「メス」を入れてきた事実は要注意事項だと考えています。
要するに、昨今の米中対立の中でクリティカルな造船という分野において、韓国という第三国の企業が巻き込まれるという構造が顕在化したからです。日本企業にとっても他人事ではなく、関連企業は「明日はわが身」という姿勢で警戒すべきでしょう。
さて、ここからは、貿易戦争を再燃させているように映る米中の「本気度」、すなわち、本気でこれまでの協議や対話を放棄し、「解決」ではなく、「対決」に持ち込もうとしているのかという点を、私なりに考えてみたいと思います。
まず、中国側の意図や動向における三つの重要ポイントを説明します。
一つ目は、レアアース関連の一連の輸出規制に関してです。中国から見れば国家戦略であり、商務部報道官が主張するように、軍民両用、環境保護、戦略物資・希少資源の確保と有効活用といった観点から、中国自身の時間軸と工程表に基づいて、着々と進めている印象です。
この流れは今後も変わらず、不可避と言えますから、中国のレアアース(磁石)に相当程度依存している日本企業も留意した上で対策を練るべきでしょう。
二つ目は、このタイミングでレアアース関連の複数の輸出規制措置を同時に打ち出した背景です。中国自身の時間軸と工程表という次元を超えて、米国との戦略的競争、ハイレベル協議、および首脳会談を念頭に置いた上で、戦略的に打ち出してきているとみるべきです。
三つ目は、それでも中国は米国との対話を続け、米中間の一部関税の停止期限である11月10日までに追加関税率24%分を巡る交渉を妥結させ、大国同士であるがゆえに不可避である競争を穏便に「管理」していきたいと考えている、という点です。
次に米国側の意図や動向について、3点取り上げます。
一つ目は、経済・産業の観点から、米国政府として、中国のレアアース関連の輸出規制に相当過敏になっているという点です。裏を返せば、もし中国からレアアースの輸出を止められたら、米国の経済や企業が成り立たなくなるという危険性をはらんでいるということです。
故に何が何でもそれを阻止すべく、米国側として持てるツールをレバレッジすべく動いているのでしょう。その意味で、トランプ大統領による「100%の追加関税」発言には抑止や威嚇の意味が込められていると考えられます。
二つ目は、米国側としても中国側同様、両国間の対立激化や協議の破綻は望んでおらず、なんとか関係を管理し、交渉をソフトランディング(軟着陸)させたい、と考えている点です。
トランプ大統領による「100%の追加関税」発言後、対中協議の司令塔であるベッセント財務長官は、「直近の週末には実質的なコミュニケーションがあった」「APEC会談前に何立峰(ホー・リーフォン)副首相との協議を見込んでいる」「100%の追加関税を必ずしも課す必要はない」などと発言しています。
グリア米通商代表は、100%の追加関税を11月1日から発動するかどうかは「中国側の出方次第」とコメントしています。また、トランプ大統領はベッセント財務長官らと協議し、米国が対中貿易緊張を緩和したいというメッセージを国際社会に向けて発信する方針を確認しています。
三つ目は、やはり昨今の米国政府が打ち出す政策や言動には、トランプ大統領個人のスタイルが赤裸々に体現されているという点です。SNSを駆使して、交渉相手国を揺さぶり、圧力をかけるべく「内角高め」に直球を放り込んだかと思えば、関連閣僚が事態を穏便に抑えるべく、歩み寄りとも取れる発言を影響力のあるメディアを通じて発信しています。
大統領と閣僚たちが、事前の打ち合わせに基づいて役割分担をしているのか、閣僚が大統領発言の「火消し」に走っているのか、なかなか見えてこない部分もあります。要するに、トランプ政権の政策には依然として明白な不透明性と流動性(良く言えば柔軟性)が横たわっているということです。
以上、乱高下を見せる米中関係・協議を前に、米中それぞれの意図と動向を3点ずつ整理しました。米中攻防の影響をさまざまな形で受ける日本の官民としては、これまで以上に、米中それぞれの出方や発表、および両国の連動を注視しながら、米中協議の現在地と行き先を丁寧に観察、評価していく必要があるでしょう。
貿易戦争再燃でAPECでの首脳会談は開かれるのか?
最後に、今後の見通しとして、最大の注目ポイントである米中首脳会談についてです。
本稿で検証してきた内容を含め、トランプ第2次政権発足以降の米中間のあらゆるやり取りや駆け引きを総合的に評価すると、両国政府は依然として今月末に韓国で行われるAPEC首脳会議に際し、トランプ大統領と習近平国家主席による首脳会談を設定すべく協議を続けていると私は判断しています。
米中いずれも、相手に対して一歩も引かない、国益は譲らない、安易に妥協しないというスタンスで交渉・協議に臨んでいます。仮に今月末までに首脳会談を行えるだけのお膳立てができず、アジェンダを詰められない場合には、米中共に無理はしないでしょう。首脳会談を無理に実施し、そこで交渉が破綻し関係が決裂するリスクの方が高いからです。
一方で、立場の相違や利益の衝突があったとしても、互いにそれらを直視し、首脳同士のトップ会談によって矛盾の解消や問題の解決につなげられると両国指導部が判断するのであれば、首脳会談は行われるでしょう。
習近平、トランプ両氏は共に、首脳会談の開催を望んでおり、米中トップ会談の実現を通じて、国内外の市場関係者にポジティブなメッセージを発信することで、自国の景気を上向かせたいと考えているものと思われます。
(加藤 嘉一)

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