自公連立解消に加え野党共闘の動きも見せ始め、ますます日本の政局は混迷を強めています。日本の政治要因がしばらくは円安材料もしくは円高の抑制要因として働きそうです。

米政府閉鎖や米中貿易などの懸念材料もある中、政局の行方がどちらに転ぶかに注目です。


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日本の政局混迷続く。今後のドル/円のシナリオは?

 先週、自民党総裁選での高市早苗氏選出によって、147円台から149円台にギャップオープンしたドル/円はそのまま円売りが続き、9日には153円台の円安となりました。しかし、10日の自公連立協議で公明党が自民党との連立解消の方針を伝えたことから、これまでの円売りの巻き戻し(高市トレード〈株買い、円売り〉の巻き戻し)が起こり円高になりました。


 そしてNY市場では、前日に中国がレアアースの輸出規制を発表したことから、トランプ大統領が「米国は11月1日から中国に100%の追加関税を課す」との考えを示したため米中関係悪化懸念から151円台前半まで円高が進みました。


 このままだと週明けには、日本の政局混迷と米中対立激化懸念によってドル/円は150円割れになるのではないかと警戒していましたが、週末にトランプ大統領が対中姿勢を和らげたことから、週明けには152円を挟んだ比較的冷静な動きとなりました。


 しかし、14日には、中国が韓国の造船大手の米国子会社に対して制裁を発表したため、米中対立激化懸念が再燃しドル売りとなりました。さらにパウエル議長が講演で、「労働市場の下振れリスクは高まっている」と警戒感を示し、「数カ月以内にバランスシートの縮小を停止する可能性がある」と発言したことから利下げ観測が高まりました。


 また、次の議長候補であるボウマン副議長は別の討論会で、「年内あと2回の利下げを見込む」と発言しました。これらのハト派的な発言や米中貿易摩擦の新たな材料によって米中対立激化懸念が再燃し、ドル/円は再び151円台の円高に動いています。


 ただ、高市トレードの巻き戻しによる円買いだけでなく日本の政局混迷は円売りとの見方もあるため、ドル/円は動きづらい状況となっています。野党共闘による首相候補一本化によって高市氏が首相になるかどうか不透明感が高まっています。


 また、公明党も野党とは一線を画してきた姿勢から野党共闘に同調する動きも見せ始めており、日本の政局はますます混迷の度合いが強まってきています。


 当初、首相指名選挙は15日ごろといわれていましたが、自民党は21日に臨時国会召集を野党に伝えたとのことです。高市氏が首相になっても野党陣営の誰かが首相になっても、以下のようなシナリオを考えると日本の政治要因がしばらくは円安材料もしくは円高の抑制要因として働きそうです。


シナリオ1

 野党がまとまらず、高市総裁が首相になるが、以前よりも少数与党になって思うような政策が取れない状況になる。また、自民党内融和も配慮され、大型の景気刺激策は困難となり、期待外れから円高の動きに。しかし、結局は野党の要望を受け入れ景気刺激策による財政拡大によって円安に。


シナリオ2

 野党陣営に公明党も加わり、高市氏は首相に指名されず、野党から首相が選出される。高市氏が首相になれなかったことから円高に動くが、野党は過半数で政権を奪取し、財政拡大路線を取るとの見方から、再び円売りに動く。


シナリオ3

 野党は政権を取るとすぐに解散総選挙に打って出て、自民党勢力を弱めることを画策。その結果安定した政権が誕生するのならば、財政拡大路線による景気刺激策への期待が復活し、円売りに。一方で野党陣営の躍進がなければ、野党陣営分裂・瓦解(がかい)などが起こり、政治混迷は続き、悪い円安状況が続く可能性。


 上記以外にもいろいろなシナリオが想定されますが、政局混迷が続く限り、なかなか円買いには進みづらく、また、日本銀行も政策変更に動きづらい環境が続くことが予想されるため、円売り気味の地合いが続きそうです。


 ただ、155円に向かって動き出すような円安になってくると、物価への影響が懸念され、与野党とも円安けん制発言が強まることが予想されます。日銀の利上げに反対していた意見も鎮まる可能性も想定されます。


 米国サイドからも円安の背景は日銀が利上げをしないことが要因として円安批判をしてくるかもしれません。

日銀にとっては、円安進行によって利上げをしやすい環境になるかもしれず、そうなると市場の期待が高まることが予想されます。


 警戒したいのは、日本政府が円安の対応に悠長に構えていると、トランプ大統領が円安を背景として関税引き上げを突然通知してくるかもしれないことです。避けたい事態です。


ドル/円は150円を割れるか

 米国の政局も米上院が14日から休会明けになることから、混乱が続くことが予想されます。人質解放で自分の成果に酔いしれていたトランプ大統領は、帰国後は政府機関の一部閉鎖問題が待っている状況です。


 閉鎖が長引けば長引くほど、米国の国内総生産(GDP)成長率を低下させ、政府職員の大量解雇も伴えば、米景気足踏み、利下げが市場の焦点になることが予想されます。ドルの上値も重たい地合いが続くことが予想されます。


 ドル売り、円売りの地合いのような相場となっていますが、ドル/円は高市総裁選出前の147円台半ばから153円台半ばまで6円程度円安に動きましたが、まだ2円ほどしか円高に戻していません。


 誰が首相になってもばらまき政策による財政拡大懸念から円安を期待しているのか、あるいは政局混迷を嫌気して円安になっているのかどうか分かりませんが、日本の政局要因による円高のブレーキも、米政府機関の一部閉鎖長期化による景気下押し懸念と利下げ観測の高まり、米中貿易摩擦の激化懸念の材料によってドル売り地合いの方が強まりそうです。


 まずはドル/円が150円を割れるかどうかに注目したいと思います。


(ハッサク)

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