ゼネラル・ミルズは菓子製造の世界大手です。製粉工場として創業し、「チェリオス」でシリアル市場に参入。
※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の西 勇太郎が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 ハーゲンダッツ擁するゼネラル・ミルズを買い推奨!配当利回り5%、10年で利益倍増も株価下落 」
19世紀創業の製粉会社が1940年代にシリアル事業に進出し、21世紀にアイスクリームやペットフード事業に拡大
先週の記事、「ヤクルト本社を買い推奨!海外展開拡大やヒット商品販売により過去10年で利益倍増」では乳酸菌飲料の業界を取り上げました。今回は、菓子製造大手の米ゼネラル・ミルズを取り上げたいと思います。
2025年10月16日: ヤクルト本社を買い推奨!海外展開拡大・ヒット商品販売で利益が10年で倍増(西勇太郎)
ゼネラル・ミルズ(GIS NYSE) (株価48.39ドル、時価総額258億1,200万ドル:10月17日終値)は、1866年にミネソタ州ミネアポリスでカドワラダー・C・ウォッシュバーンが設立した製粉工場、「ウォッシュバーン・ミル」を起源とします。その後複数の製粉工場の合併を経て、1928年に「ゼネラル・ミルズ」が誕生しました。
1930~1940年代にかけて米国でオフィスワーカーの割合が上昇するとともに、肉体労働を前提としたそれまでの重い朝食はオフィスワーカーにとっては不健康との認識が広まると、シリアルやオートミールなどの加工穀物製品の需要が増加しました。
ゼネラル・ミルズは製粉技術を応用して加工食品へと事業を拡大し、1941年に最初のシリアル製品「チェリオッツ(CheeriOats)」(後の「チェリオス(Cheerios)」)を発売しました。
「チェリオッツ」は、トウモロコシや小麦よりも食物繊維が多いオーツ麦を原料とした世界初のオーツベースのシリアルです。押出成形技術(ドーナツ型や星型など多様な形状に成形可能で、水分量や温度、圧力を調整することで、サクサク・カリカリなどの食感を自在に設計できる)を導入した点で画期的でした。
この「チェリオッツ」により、ゼネラル・ミルズは一気にシリアル製造の代表的なメーカーとしての地位を確立しました。
2001年には朝食・間食主体の製品ポートフォリオに夕食・デザートも加えて家庭用食品の幅広いラインアップを構築すべく、米ピルズベリーを買収して冷凍ピザ、ビスケット、ベーキングミックスなどの製品群を獲得しました。さらに、「ハーゲンダッツ」事業も獲得し、プレミアムアイスクリーム市場に本格参入しました。
2018年には、ペットフード製造企業「Blue Buffalo(ブルーバッファロー)」の買収を通じてペットフード事業に進出しました。これは、ペットを「家族の一員」として扱う傾向が強まり、高品質・栄養価の高いフードへの需要が急増していることに加え、ゼネラル・ミルズの食品加工技術がペットフード製造にも応用可能であることから決断したものです。
その後も複数のペットフード事業を買収しており、ペットフード事業の売上高は全体の約12%に達しています。
日本においては1960年代から 森永製菓(2201 東京) と合弁事業を行った実績があるほか、1978年には ハウス食品グループ本社(2810 東京) と提携し、ゼネラル・ミルズのスナック「Bugles(ビューグルズ)」を日本向けにアレンジした商品、「とんがりコーン」を発売しました。
現在は「とんがりコーン」に関する技術提携がハウス食品と継続していることに加え、「ハーゲンダッツ」事業が日本における主たる事業となっています。
10年間で利益倍増も株価は下落
ゼネラル・ミルズの2015年5月期の売上高は176億3,000万ドルでしたが2025年5月期には194億8,700万ドルと1.1倍に増加しました。他方、当期純利益については売上高の増加率を上回る増加を示しており、2015年5月期の12億2,100万ドルから2025年5月期には22億8,500万ドルへと倍増しました。
これは、グルテンフリー、高タンパク、オーガニックなどの健康志向、機能性、プレミアム感を備えた高付加価値製品へと製品ポートフォリオをシフトしたことと、2018年にブルーバッファローの買収を通じて参入したペット事業において生鮮・冷蔵ペットフードを展開してプレミアム市場に対応したこと、そして追加的買収によるペットフード製品ポートフォリオ強化を実現したこと、などによるものです。
なお、2022年5月期以降当期純利益は減少傾向にありますが、これは特別利益計上がなくなったことを主因とするものです。営業利益ベースでは2021年5月期に初めて30億ドル台にのせて以降、その高水準を維持している状況に変化はありません。
<ゼネラル・ミルズの当期純利益推移(2015年5月期以降)>
他方、株価については2023年5月期に下落に転じて以降、当期純利益の減少ペースを上回って下落しており、現在は2015年5月期をも下回る水準となっています。
<ゼネラル・ミルズの株価推移(2015年5月期以降)>
PBRが過去平均水準に回復すれば株価は86ドル
過去10年間の変化で見ると、売上高が1.1倍に増加したのに対して営業利益は1.3倍、当期純利益率は1.9倍と増加ペースが売上高を上回っており、利益率上昇を伴いながらの事業拡大が実現できたことが分かります。
株主資本蓄積も順調に進んで1.8倍に達している中、時価総額はむしろ減少しており、変化倍率は0.9倍となっています。結果的に株価純資産倍率(PBR)は6.7倍から直近では2.9倍へと大きく低下しており、割安感が出ています。この割安感が解消され、PBRが過去10年間の平均水準である5.0倍にまで上昇した場合には、株価は86ドルとなります。
<ゼネラル・ミルズの業績推移(2015年5月期と2025年5月期)> (百万ドル) 2015年5月期 2025年5月期 変化(倍) 売上高 17,630 19,487 1.1 売上総利益 5,949 6,733 1.1 営業利益 2,621 3,287 1.3 当期純利益 1,221 2,285 1.9 株主資本等合計 4,997 9,199 1.8 ROE(%) 21 25 1.2 時価総額 33,470 29,713 0.9 PBR(倍) 6.7 3.2 0.5 PER(倍) 27.4 13.0 0.5 出所:ゼネラル・ミルズの資料などより楽天証券経済研究所が作成
セグメント別では、北米小売セグメントと2018年に買収した北米ペットセグメントが利益率の上昇に大きく貢献しました。
他方、国際セグメントでは減収減益となり、利益率も大きく低下しました。売上構成比の高い中国にてハーゲンダッツの競合となるブランドが出てきたことによる競争激化などが要因です。
<ゼネラル・ミルズのセグメント別業績推移(2015年5月期と2025年5月期)> (百万ドル) 2015年5月期 2025年5月期 変化(倍) 売上高 17,630 19,487 1.1 北米小売 10,507 11,907 1.1 北米ペット - 2,471 - 北米フードサービス 1,995 2,303 1.2 国際 5,128 2,798 0.5 営業利益 2,077 3,305 1.6 北米小売 2,159 2,730 1.3 北米ペット - 501 - 北米フードサービス 353 355 1.0 国際 523 96 0.2 営業利益率 12% 17% 1.4 北米小売 21% 23% 1.1 北米ペット - 20% - 北米フードサービス 18% 15% 0.9 国際 10% 3% 0.3 出所:ゼネラル・ミルズの資料などより楽天証券経済研究所が作成
2026年5月期、2027年5月期の市場予想ともに、2025年5月期対比で小幅ながら減収減益の見通しとなっていますが、これはトランプ関税による米国内でのインフレ影響を考慮したものです。
いずれにしましても株主資本の蓄積は着実に進むことが見込まれているため、株価水準がこのまま変わらなければ、2026年5月期にはPBRは2.7と一層割安な水準になってしまう計算になります。
<ゼネラル・ミルズの業績予想> (百万ドル) 2025年5月期 2026年5月期 2027年5月期 実績 予想 予想 売上高 19,487 18,596 18,526 当期純利益 2,285 1,961 2,011 株主資本等合計 9,199 9,699 9,862 時価総額 29,713 26,537 26,537 PBR(倍) 3.2 2.7 2.7 PER(倍) 13.0 13.5 13.2 出所:ゼネラル・ミルズ、FactSetの資料などより楽天証券経済研究所が作成
菓子製造同業他社比でPBRに割安感があり、解消されれば株価は72ドル
ゼネラル・ミルズの比較対象に適する菓子製造の上場同業他社には米 モンデリーズ・インターナショナル(MDLZ NASDAQ) 、米 ケラノバ(K NYSE) 、米 ハーシー(HSY NYSE) 、米 ザ・キャンベルズ・カンパニー(CPB NASDAQ) 、米 ポストホールディングス(POST NYSE) 、米 ツリーハウス・フーズ(THS NYSE) 、 江崎グリコ(2206 東京) 、森永製菓(2201 東京)などがあります。
これらの企業について、自己資本利益率(ROE)を横軸、PBRを縦軸とした散布図を作成すると、おおむね比例関係にあることが分かります。その中で、ゼネラル・ミルズについては大きく割安方向にずれており、この点から、株価に割安感があると言えます。
この割安感が解消された場合のゼネラル・ミルズのPBR(下図の青破線に乗る水準)は4.2であり、相当する株価は72ドルです。
<主な菓子製造企業のROEとPBRの関係>
<主な菓子製造企業10社のROEとPBR> 社名 証券
コード 取引所 売上高 ROE PBR 百万ドル % 倍 Mondelez International MDLZ NASDAQ 36,441 17 3.0 General Mills GIS NYSE 19,487 25 2.9 Kellanova K NYSE 12,749 39 7.6 Barry Callebaut BARN スイス 11,714 7 2.2 Hershey HSY NYSE 11,202 50 8.1 Campbell's CPB NASDAQ 10,253 16 2.4 Post Holdings POST NYSE 7,923 9 1.4 Treehouse Foods THS NYSE 3,354 2 0.7 江崎グリコ 2206 東京 2,185 3 1.2 森永製菓 2201 東京 1,502 14 1.7 出所:各社資料より楽天証券経済研究所が作成
また、これらの企業の予想配当利回りを比較すると、ゼネラル・ミルズは5.1%の利回り(一株当たり配当2.44ドルで計算)となっており同業他社比で高い水準です。また、2025年5月期については自社株買いも行っており、総還元率は同業他社比で10%に迫る水準でした。
<主な菓子製造企業10社の配当および総還元利回り> 社名 証券
コード 取引所 2025年5月期 2025年度 実績配当 総還元 予想配当 % % % Mondelez International MDLZ NASDAQ 2.9 5.7 3.3 General Mills GIS NYSE 4.8 9.5 5.1 Kellanova K NYSE 2.7 2.0 2.8 Barry Callebaut BARN スイス 2.6 2.6 2.5 Hershey HSY NYSE 2.9 4.1 2.9 Campbell's CPB NASDAQ 4.9 5.5 5.2 Post Holdings POST NYSE 0.0 5.4 0.0 Treehouse Foods THS NYSE 0.0 13.7 0.0 江崎グリコ 2206 東京 1.8 1.8 1.9 森永製菓 2201 東京 2.3 7.8 3.6 出所:各社資料などより楽天証券経済研究所が作成
ここまで述べさせていただいた通り、ゼネラル・ミルズは今後も高水準収益継続が見込まれる中で、株価は過去実績比、同業他社比で割安感があり、かつ高配当であるため、投資判断を「買い推奨」とします。
(西 勇太郎)

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