金(ゴールド)相場は今年、幾度となく高値を更新しました。そのため、「価格の水準が高すぎて買えない」と耳にするようになりました。
※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の吉田 哲が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 金(ゴールド)、「高すぎて買えない」は本当なのか? 」
「これ」は売れるが「それ」は買えない
仮に、以下の値動きを演じている銘柄があったとします。2010年ごろに下落の芽が生じ、2020年ごろから本格的な下落が始まり、近年は過去に類を見ないスピードで急落しています。この銘柄の今後の動向について、「まだ下がりそう」と感じる人は多いのではないでしょうか。
図:[参考1]とある銘柄の価格推移(1973年1月5日~2025年10月30日)
では、以下の銘柄についてはどうでしょうか。「まだ上がりそう」と感じる人はどれくらいいるでしょうか。
図:[参考2]とある銘柄の価格推移(1973年1月5日~2025年10月30日)
しばしば、「この銘柄は高くなり過ぎたので今は買えないが、興味はある。この銘柄を買うきっかけとなる材料はあるのか」という趣旨の会話を耳にします。
過去の高値よりも高い今を「高所」と認識し、高所ゆえ先行きを見通しにくい不安定さを感じながら、関心のあるその銘柄を買うために背中を押してくれる強い理由を探している、という状況です。
高所と認識する理由に「相対評価」が挙げられます。
では、冒頭で示した急落中の値動きを演じる銘柄は、どうでしょうか。過去のどの価格よりも今が一番安いという最大級の割安感があります。(興味が湧くかどうかを抜きにして)方向性を見つけられない不安定さを感じるでしょうか。感覚的には、意外にもすんなり、不安定さを感じずに「下がる」と判断できるのではないでしょうか。
上がることをイメージする時は、理由を積み重ねる必要があります。特に価格が高ければ高いほど、不安定さと闘いながら強い理由を獲得する必要があります。しかし、下がることをイメージする時は、さほど強い理由を必要としません。
こうしたことは、自然界の法則である「重力」に通じると筆者は考えています。高さを獲得するためには、位置エネルギーを積み上げる必要があります。高いところを目指そうとすればするほど、必要なエネルギーは大きくなります。逆に下がることは容易で、「自由落下」と表現されることもあるくらいです。
先ほどの図、[参考2]とある銘柄の価格推移は、国内大手地金商の金(ゴールド)の小売価格(税込)推移です。そして、冒頭の図、[参考1]とある銘柄の価格推移は、国内大手地金商の金(ゴールド)の小売価格(税込)推移を上下で反転させて作った図です。つまり、[参考1]が下がると感じることは、[参考2]が上がると感じることと本質的に同じなのです。
二つの図は、同じ変動率を示す銘柄の値動きを示していますが、先行きを見通す上での感覚的な難易度や不安定さは、明確に分かれるでしょう。感覚に判断を委ねると、「上がると考える方が難しく不安定に見える」という事象が生じます。
コモディティ(国際商品)は売り手と買い手の立場がほぼ対等であるため、感覚よりも体系化された分析が有効であると、筆者は考えています。この点は、期待や懸念という思惑が支配的になりやすい株式市場と大きく異なる点です。
コモディティ銘柄の一つである金(ゴールド)においても、体系化された分析が必要です。歴史的な急騰局面であるからこそ、感覚に頼らない分析が欠かせません。株式市場を見る感覚で、金(ゴールド)市場を見てはいけない、と言えます。その意味で、感覚に基づいた分析は、現代の金(ゴールド)相場にはなじまないと言えます。
ほぼ常に上昇していた金(ゴールド)相場
金(ゴールド)相場の「感覚」の話を続けます。以下は、国内大手地金商の金(ゴールド)の小売価格(税込)推移です。
1970年代後半に、中東地域で複数の目立った有事が勃発し、不安感が強まったり、原油相場が急騰したりしたことを受け、後に「有事の金(ゴールド)」や「インフレの時は金(ゴールド)」という言葉が生まれるきっかけとなった上昇が見られました。
1990年代後半から2000年代の前半にかけて、米国で株式市場が活況を呈し、金利や配当が付かない金(ゴールド)が売られました。このことは、後に「株と金(ゴールド)は逆相関」という金(ゴールド)を説明する言葉の元となりました。
図:国内大手地金商の金(ゴールド)小売価格の推移(1973年1月5日~2025年10月30日) 円/グラム
1970年代後半から2000年代の前半にかけて、こうした「感覚的」で「分かりやすい」値動きが散見されました。不穏なことが起きた時は金(ゴールド)に注目が集まる、楽観的な時は金(ゴールド)に注目が集まらない、という見方が確固たる地位を獲得した期間だったと言えます。
では、2010年ごろ以降は、どうでしょうか。徐々に上昇の芽が出て、2020年ごろから本格的な上昇が始まり、近年は過去に類を見ないスピードで上昇しています。
振り返ってみれば、この間、主要国の株価指数は高値を更新し続けています。戦争が目立たない時期も、インフレが鎮静化する兆しが見えた時期もありました。しかし、金(ゴールド)相場は上昇し続けてきました。
上記は円建てですので、ドル/円が極端に円安に推移した影響も強く受けています。
以下は、先ほどグラフで示した国内地金大手の金(ゴールド)小売価格(税込)の前年比(年間平均)です。
図:国内地金大手の金(ゴールド)小売価格(税込)前年比(年間平均)
1970年代後半の「有事の金(ゴールド)」や「インフレの時は金(ゴールド)」が目立った時に大きく上昇したこと、1990年代後半から2000年代の前半にかけて、「株と金(ゴールド)は逆相関」が目立った時に下落する傾向があったことを、確認できます。
では、それ以降、つまり、金(ゴールド)相場が長期視点の記録的な上昇を演じ始めた時期以降の前年比はどうでしょうか。2001年から2025年(10月30日まで)の25年間、上昇した年が22回、下落した年が3回でした。
上昇した22回について、平均は+14.3%、最大が+41.2%(2006年)、下落した3回について、平均はマイナス1.6%、最大がマイナス3.7%(2016年)でした。
このおよそ四半世紀、国内地金大手の金(ゴールド)価格は、下落してもその規模は限定的で、ほぼ上昇し続けてきたことが分かります。「上昇し続けた」ことは、株価指数が上昇しても下落しても、有事ムードが高まっても後退しても、インフレが目立っても後退しても、上昇してきたことを意味します。
感覚的に株価指数が下落した時に上昇したのだろう、有事ムードが高まった時に上昇したのだろう、インフレが目立った時に上昇したのだろう、と考えてしまいそうになります。もちろん、その影響もありますが「それだけではない」と考える必要があります。
2000年代前半以降の金(ゴールド)相場が、かつての常識だけで分析できないこと、感覚に頼った分析が通じにくいことが、これらのデータから読み取ることができます。
感覚に頼らない「七つのテーマ」を再確認
2000年代前半以降、とりわけ2010年以降は、金(ゴールド)相場を分析するために、体系化された分析が必要になりました。先述の通り、感覚に頼った分析が通じにくくなったためです。そこで役立つ分析手法が、筆者が提唱する「七つのテーマ」です。
時間軸が短中期である(1)有事(伝統的)、(2)代替資産、(3)代替通貨の三つは、伝統的なテーマで、金融機関や一部の投資家の間で語り継がれている天動説のような存在です。これらの三つのテーマはそれぞれ、金(ゴールド)相場に対し、短中期的な上下の圧力を提供しています。
先ほど述べた「有事の金(ゴールド)買い」は(1)に、「株と金(ゴールド)は逆相関」は(2)に、「インフレの時は金(ゴールド)」は(3)に、当てはまります。つまり、かつて生まれた特徴は今、短中期の値動きのテーマとなって生きているのです。
時間軸が中長期である(4)宝飾需要、(5)鉱山会社、(6)中央銀行、時間軸が超長期の(7)有事(非伝統的)は、長期視点で金(ゴールド)相場に影響を及ぼすテーマです。特に(6)と(7)は、2010年ごろ以降の長期視点の金(ゴールド)相場の上昇トレンドを支える「土台」となっている、大変に重要なテーマです。
図:ドル建て金(ゴールド)に関わる七つのテーマ(2025年)
以下は、時間軸の異なる複数のテーマからもたらされる圧力のイメージ図です。こうした分析手法を採用するからこそ、長期視点の驚異的な値動きを分析する糸口を見つけることができるのです。逆に、有事だけ、逆相関だけ、といった感覚的な旧来の考え方で分析をしようとすればするほど、「高くて買えない」という結論が出てしまうのです。
時間軸の異なる複数のテーマがもたらす上下の圧力が絶えず相殺され、その結果、今日に至る長期視点の価格高騰が起きていると考えられます。
図:ドル建て金(ゴールド)価格の推移イメージ
中長期の柱「中央銀行」の買いは継続中
先ほど「七つのテーマ」の中で中長期のテーマに挙げた「中央銀行」について述べます。以下の通り、中央銀行による金(ゴールド)の買い越し量の推移は、近年、非常に高水準です。2024年は統計史上最大となりました。
1990年代や2000年代の前半の「株と金(ゴールド)は逆相関」と呼ばれた時期において、中央銀行の買い越し状況はマイナス、つまり売り越しでした。それが、2010年に買い越しに転じ、現在に至っています。
図:中央銀行による金(ゴールド)買い越し量の推移(2024年まで) 単位:トン
世界的な金(ゴールド)の調査機関であるワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)は、2018年から「中央銀行調査」を実施しています。調査項目をWGCが作成し、英国に拠点を置く世界規模の調査機関のYouGov(ユーガブ)の協力のもとで実施しています。
近年の調査では、多くの中央銀行が金(ゴールド)の保有量を増減する動機を問う質問(複数選択可)において、危機時のパフォーマンス、長期的な価値保全、インフレ・ヘッジ、効果的なポートフォリオの構築、地政学的リスクに対する分散策、デフォルト・リスクがない、歴史的ポジション、などを選択しています。
特に先進国の中央銀行は歴史的ポジション、新興国の中央銀行は危機時のパフォーマンスを選択する傾向が見られます。また、先進国の中央銀行はほとんど選択しないものの、新興国の中央銀行のいくつかは、国際通貨システムの変化への予期、制裁への懸念、金(ゴールド)に対する国民の意識、などを選択する傾向もあります。
10月30日にWGCが公開した四半期のレポートで、2025年第3四半期の中央銀行の買い越し量が、高水準を記録したことが分かりました。また、WGCは2025年第4四半期も高水準を維持し、2022年から続いている年間での高水準の傾向を2025年も維持する見込み(750から900トン)であると、述べました。
図:中央銀行による金(ゴールド)買い越し量の推移(2010年から) 単位:トン
中央銀行の買いが旺盛な状態が続いている背景には、以前の「高市首相は「真の物価高対策」に着手できるか?」の中で示した図「2010年ごろ以降の世界分断と高インフレ(長期視点)の背景」で示している「世界分断」が深く関わっていると考えられます。
2025年10月28日: 高市首相は「真の物価高対策」に着手できるか?
世界分断は、本レポートで述べた「七つのテーマ」のうち超長期のテーマである「有事(非伝統的)」に直接的に結びつく要因です。世界で分断が深まることで、非西側の資源国が資源を武器として利用し、世界全体で資源の需給バランスが引き締まり、長期視点の高インフレ傾向が強まっています。
また、分断が深まることで戦争が勃発したり、悪化したりしやすくなっています。長期視点の高インフレも、戦争の勃発や悪化も、中央銀行が長期視点で金(ゴールド)の保有高を増やす強い動機になり得ます。
こうした有事(非伝統的)を認識した中央銀行の買いは、長期視点の根深い世界分断を背景に、今後も継続し、金(ゴールド)相場を長期視点で底上げし続けると、筆者は考えています。揺るぎにくい「土台」の上で、短期的な上下を伴いながら、金(ゴールド)相場は近い将来、5,000ドルに到達する可能性があるとみています。
「七つのテーマ」という体系化された分析手法を採用するからこそ、長期視点の値動きを分析する糸口を見つけることができます。有事だけ、逆相関だけ、といった感覚的な旧来の考え方で分析をしようとすればするほど、「高くて買えない」という結論が出てしまいます。
「価格の水準が高すぎて買えない」と思われる方こそ、感覚による分析から離れ、「七つのテーマ」に基づいた分析を行うことを、お勧めします。
(吉田 哲)

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