米マコーミックは調味料の世界大手でスパイス・ハーブ分野では世界トップです。買収を通じてポートフォリオ多角化とグローバル展開を進めており、直近10年間で利益が倍増しました。
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著者の西勇太郎が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 スパイス大手マコーミックを買い推奨!36年連続増配、過去10年で利益倍増も株価は頭打ちで割安感 」
19世紀創業の飲料会社が1900年代初頭にスパイス事業に進出。買収を通じて世界トップ企業に
先週のレポート、「『オリゴのおかげ』の塩水港精糖を買い推奨!寡占化が進む環境下、利益は2年で4倍に」では製糖企業を取り上げました。今回は、調味料大手の米マコーミックを取り上げます。
2025年10月30日: 「オリゴのおかげ」の塩水港精糖を買い推奨!寡占化が進む環境下、利益は2年で4倍に(西勇太郎)
マコーミック ( MKC NYSE 、株価64.16ドル、時価総額172億1,600ドル、 10月31日終値)は、1889年にウィロビー・M・マコーミックが米国メリーランド州ボルチモアで、ルートビア(米国発祥のアルコールを含まない炭酸飲料)やフルーツシロップの製造事業で創業した会社です。
地下室で製造したルートビア、フルーツシロップ、香料抽出物などを戸別訪問で販売していましたが、家庭料理の味付けに対するニーズの高まりを受け、1900年代初頭にスパイスやシーズニングの製造に注力するようになりました。
1950年代からはレストランや食品メーカー向けに業務用スパイスやシーズニングの供給を開始。20世紀後半から世界各国に進出し、地域ごとの味覚に合わせた製品開発とブランド買収によりグローバル化を推進しました。
直近10年間では2017年に英消費財メーカー、レキットベンキーザーの食品部門を約43億ドルで買収し、ソース・ドレッシング分野に本格参入しました。2019年にはIBMと提携してAIによる味覚設計を開始し、開発サイクルを効率化する体制を確立しました。
2020年にはフレーバーカプセル化技術(香料や風味成分を微小なカプセルに閉じ込めて食品や飲料の香りを長持ちさせる技術)企業のFONAインターナショナルを買収して業務用市場向けの製品開発力を強化しました。
日本では1967年に ライオン(4912 東京) と業務提携し、製品を販売していましたが、2007年に業務提携先をユウキ食品(非上場 東京都調布市)に移行し、国内工場を中心とする生産体制を構築しました。
10年間で利益倍増も株価は頭打ち感から水準を切り下げる展開
マコーミックの2014年11月期の売上高は4,243百万ドルでしたが2024年11月期には6,724百万ドルと1.6倍に増加しました。他方、当期純利益については売上高の増加率を上回る増加を示しており、2014年11月期の438百万ドルから2024年11月期には789百万ドルへと約1.8倍に増加しました。
これは、買収によるソース市場でのシェア拡大とフレーバー関連技術力強化による高利益率のBtoB売上拡大、そしてAIを活用した味覚設計による開発サイクル短縮、などによるものです。
<マコーミックの当期純利益推移(2014年11月期以降)>
他方、株価については2020年以降当期純利益が安定的に推移する中、頭打ち感から徐々に水準を切り下げる展開となっています。
<マコーミックの株価推移(2014年11月期以降)>
PBRが過去平均水準に回復すれば株価は110ドル
過去10年間の変化で見ると、売上高が1.6倍に増加したのに対して営業利益は1.8倍、当期純利益も1.8倍と増加ペースが売上高を上回っており、利益率上昇を伴いながらの事業拡大が実現できたことが確認できます。株主資本蓄積も順調に進み3.0倍に達しているものの、時価総額の変化率は1.8倍にとどまっています。
結果的に株価純資産倍率(PBR)は5.3倍から3.3倍へと低下し、割安感が出ている状況です。この割安感が解消され、PBRが過去10年間の平均水準である5.0倍にまで上昇した場合、株価は110ドルとなります。
<マコーミックの業績推移(2014年11月期と2024年11月期)> (百万ドル) 2014年11月期 2024年11月期 変化(倍) 売上高 4,243 6,724 1.6 売上総利益 1,730 2,591 1.5 営業利益 608 1,070 1.8 当期純利益 438 789 1.8 株主資本等合計 1,792 5,291 3.0 ROE(%) 24 15 0.6 時価総額 9,574 17,216 1.8 PBR(倍) 5.3 3.3 0.6 PER(倍) 22 22 1.0 ※時価総額は、2014年11月期は期末時点値、2024年11月期は直近値
出所:マコーミックの資料などより楽天証券経済研究所が作成
ちなみにセグメント別では、食品メーカーや外食チェーン向けにカスタムフレーバーや食品成分を提供するBtoB型事業を行っているフレーバーソリューションズセグメントが、増収増益に大きく貢献しました。
2020年のFONAインターナショナル買収の結果、味覚センサーで得られたデータをAIで解析し、味の最適化モデルを構築しました。これにより、苦みの中和や塩味の補完が実現できる「Optify技術」と、味を長持ちさせるカプセル化技術「FlavorCell」を得られたため製品の差別化力が高まり、利益率上昇につながりました。
また、一般消費者セグメントも消費者の健康志向や時短ニーズに応えるため、低塩・低糖・オーガニック製品、およびフライパン一つで調理が完結するようにスパイス、ハーブ、調味料をブレンドした「One」シリーズなどの簡便調理向け商品を開発して、家庭用市場でのシェアを拡大しました。
コロナ禍以降、家庭での調理機会が増えてスパイスや調味料の需要が急増したことも追い風となり、増収増益につながりました。
<マコーミックのセグメント別業績推移(2014年11月期と2024年11月期)> (百万ドル) 2014年11月期 2024年11月期 変化(倍) 売上高 4,243 6,724 1.6 一般消費者 2,626 3,848 1.5 フレーバーソリューションズ 1,618 2,875 1.8 営業利益 608 1,070 1.8 一般消費者 474 737 1.6 フレーバーソリューションズ 134 323 2.4 営業利益率 14% 16% 1.1 一般消費者 18% 19% 1.1 フレーバーソリューションズ 8% 11% 1.4 出所:マコーミックの資料などより楽天証券経済研究所が作成
今後については、2025年11月期、2026年11月期の市場予想ともに増収増益の見通しであり、株主資本の蓄積は着実に進むことが見込まれています。株価水準がこのまま変わらなければ、2026年11月期にはPBRが3倍を割り込む水準となる計算です。
<マコーミックの業績予想> (百万ドル) 2024年11月期 2025年11月期 2026年11月期 実績 予想 予想 売上高 6,724 6,827 7,260 当期純利益 789 809 855 株主資本等合計 5,291 5,806 6,332 時価総額 17,216 17,216 17,216 PBR(倍) 3.3 3.0 2.7 PER(倍) 22 21 20 ※時価総額は直近値
出所:マコーミック、FactSetの資料などより楽天証券経済研究所が作成
調味料同業他社比でPBRに割安感があり、解消されれば株価は90ドル
マコーミックの比較対象に適した調味料の上場同業他社には米 クラフト・ハインツ(KHC NASDAQ) 、 味の素(2802 東京) 、 キッコーマン(2801 東京) 、中国の フォーシャン・ハイテン・フレイバリング・アンド・フード(603288 上海) 、 キユーピー(2809 東京) 、中国の エンジェル・イースト(600298 上海) 、米 マルゼッティ・カンパニー(MZTI NASDAQ) などが挙げられます。
これらの企業について自己資本利益率(ROE)を横軸、PBRを縦軸とした散布図を作成すると、おおむね比例関係にあることが見て取れます。その中で、マコーミックについては割安な位置にあり、株価に割安感があると言えます。この割安感が解消された場合のマコーミックのPBR(下図の青破線に乗る水準)は4.3であり、相当する株価は90ドルです。
<主な調味料企業のROEとPBRの関係>
<主な調味料企業10社のROEとPBR> 社名 証券
コード 取引所 売上高 ROE PBR 百万ドル % 倍 CJ Corp 001040 韓国 32,011 2 0.8 Kraft
Heinz KHC NASDAQ 25,846 6 0.6 味の素 2802 東京 10,038 9 5.8 Mc
Cormick MKC NYSE 6,724 15 3.3 キッコー
マン 2801 東京 4,650 12 2.3 Daesang
Holdings 084690 韓国 3,930 3 0.4 Foshan
Haitian 603288 上海 3,749 21 7.2 キユーピー 2809 東京 3,212 7 1.9 Angel
Yeast 600298 上海 2,118 13 3.1 Marzetti MZTI NASDAQ 1,909 17 4.3 出所:各社資料などより楽天証券経済研究所が作成
これらの企業の予想配当利回りを比較すると、マコーミックは2.7%の利回り(1株当たり配当1.8ドルで計算)となっており同業他社比で遜色ない水準です。なおマコーミックは36年連続増配を行っており、今後も増配継続が期待できる点が魅力の一つです。
<主な調味料企業10社の配当および総還元利回り> 社名 証券
コード 取引所 2024年度 2025年度 実績配当 総還元 予想配当 % % % CJ Corp 001040 韓国 1.7 1.7 1.8 Kraft
Heinz KHC NASDAQ 6.1 9.2 6.3 味の素 2802 東京 1.9 4.0 1.5 Mc
Cormick MKC NYSE 2.5 2.8 2.7 キッコー
マン 2801 東京 1.9 3.2 1.9 Daesang
Holdings 084690 韓国 2.1 2.1 3.0 Foshan
Haitian 603288 上海 2.0 2.0 2.9 キユーピー 2809 東京 1.3 1.3 1.5 Angel Yeast 600298 上海 1.5 1.0 1.4 Marzetti MZTI NASDAQ 2.2 2.4 2.3 出所:各社資料などより楽天証券経済研究所が作成
ここまで述べた通り、マコーミックは今後も高水準の収益が継続して見込まれる一方、株価は過去実績比、同業他社比で割安感があるため、投資判断を「買い推奨」とします。
(西 勇太郎)

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