2024年に始まった新NISAでは、毎年360万円の、無期限の非課税枠が付与されます。このメリットを最大限生かそうと、特定口座で保有している株や投信を売却してNISA口座へ乗り換えることを考える人もいます。
※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の窪田 真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 NISAへの乗り換え、やるべき?注意すべきデメリット 」
ちょっと待て!NISA枠を使い切るために特定口座から乗り換えて良い?
2024年にスタートした「新しいNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)」で、非課税投資枠は年間360万円に拡大しました。ところが、年間360万円も貯蓄・投資に回せる人はあまりいません。そのため、年間360万円のNISA枠を使い切ることができず、余ったままの人が多いと思います。
ただ、2025年のNISA枠を使い切れない人の中に、特定口座などで保有する株・投信など合わせて、かなりの金額をお持ちの人もいます。NISA枠を使い切るために、特定口座で保有している株などを売却してNISA口座で買い直す【注】ことを検討する人もいます。
【注】NISA口座で買い直す
特定口座(または一般口座)で保有している株や投資信託を、NISA口座に直接移管することはできません。一度売却してから、NISA口座で買い直す必要があります。
特定口座で保有する株を減らしてNISA口座で保有する株を増やせば、一見、税制面で有利と思われます。
<特定口座からNISA口座に乗り換えるメリットとデメリット>
売買手数料は、楽天証券のゼロコースで株や投資信託を売却する場合は不要です。それでも、売却益が出ると源泉税が大きくなる可能性があり、要注意です。売却益から源泉税(20.315%)が引かれます(分離課税の場合)。
またNISA口座のデメリットとして「損益通算できない」ことも忘れてはなりません。デメリットが大き過ぎて、乗り換えが損になることもあります。
以下、失敗談を参照ください。
NISA乗り換えの失敗談
私が読者の方から聞いた「NISA失敗談」に以下があります(話を分かりやすくするために一部内容を改変)。
【失敗談】2022年に課税口座(特定口座)で10万円の売却益を出し、NISAで10万円の売却損を出したが、損益通算できなかった。
NISAの欠点として知っておく必要があるのは「損益通算」できないことです。課税口座(特定口座)で10万円の売却益が出た場合、20.315%(2万315円)の源泉税が差し引かれます(分離課税を選択している場合)。その際、同じ特定口座で10万円の売却損を出せば「損益通算」されます。
ところが、課税口座で10万円の売却益を出した後、NISA口座で10万円の売却損を出しても、損益通算は適用されません。この場合、10万円の売却益に対し、分離課税で2万315円(20.315%)の税金が差し引かれます。NISA口座で10万円の売却損を出しても、払った税金は戻ってきません。
特定口座で急騰した株を売却してNISA口座で買い直すのは「損」かも
特定口座からNISA口座への乗り換えが「損」になることもあります。以下の例を考えてください。
特定口座で100万円で買った小型成長株が1カ月で急騰して2倍(200万円)になったとします。
<急騰した小型成長株(イメージ図)>
この株がさらに値上がりすると期待して、NISA口座に移すことにします。その場合、特定口座でいったん売却し、売却代金を使ってNISA口座で買い直すことになります。この乗り換えはやらない方が良いと思われます。
【理由1】さらに値上がりしないと保有額が200万円に戻らない
小型成長株の売却代金は源泉税差し引き後で約180万円です。長期的に上昇を期待しているのに源泉税が差し引かれるため、保有金額が約20万円減ってしまいます。そこからさらに約11%株価が上昇しないと保有金額は200万円に戻りません。
値上がり益に対する税金は、いつか売却した時に必ずかかるものです。そして、いつ売却していつ源泉税を払うかは、投資家が選択できます。10年20年にわたり長期保有すれば、その間は値上がり部分に課税されません。複利で高いパフォーマンスを稼ぐことができます。
【理由2】NISA口座では売却損を出しても損益通算できない
すでにご説明した通り、NISA口座で買い直し、株価が下落してから売って、売却損が出ても、損益通算できません。
乗り換えた方が良いと判断されることもある
2025年のNISA「成長投資枠」が余っている場合、保有している特定口座の株・投信を売って、NISA口座で買い直すことを考えて良い場合もあります。
例えば、特定口座で売却益の出る銘柄と売却損の出る銘柄を合わせて売り、ネットで売却益があまり出ないならば、税金はかかりません。その代金を使い、余っているNISA「成長投資枠」でさらに投資することができます。
他にも、いろいろ考えられます。今年、すでに特定口座でかなりの実現益が出ているならば、特定口座で含み損のある銘柄を売って売却損を出せば、損益通算ができます。その売却代金を使って、余っているNISA「成長投資枠」で、今後有望と思われる銘柄を買っていけば、ポートフォリオの改善につながる可能性があります。
このように、税制面のメリット・デメリットも考えながら、保有ポートフォリオを改善していけると良いと思います。
NISA制度概要
最後に、NISA制度についてよくご存じない方のために、以下、制度概要を説明します。
<2024年から始まった新しいNISA制度概要>
NISA「成長投資枠」の年間投資可能額は240万円、「つみたて投資枠」は120万円です。両方とも上限まで投資すると、合わせて1年間に360万円の非課税投資が可能です。また非課税となる期間は、「無期限」です。売却しない限り、非課税での運用が可能です。
2024年から始まった新NISAでは、生涯投資額の上限額1,800万円が設定されました。毎年360万円の投資枠が付与されます。もし毎年上限360万円の非課税投資を行って、いっさい売却しなかった場合、5年間で1,800万円(簿価ベース)の非課税投資が可能です。それが生涯投資額の上限となるので、それ以上の新規の投資枠は付与されません。
ただし、新NISAで投資した有価証券を売却した場合、上限1,800万円の範囲内で、新たに非課税で投資できる枠が復活します(簿価ベース)。ただし、復活する投資枠は年間360万円までです。1年間に付与される非課税枠は360万円ですから、復活する非課税枠も1年間に360万円が上限となります。
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2025年7月15日: iDeCoとNISA、どっちを優先?「iDeCoファースト」と考える理由を解説!(窪田真之)
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(窪田 真之)

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