高利回りの外国債券は魅力的ですが、円高のリスクが懸念されます。為替ヘッジを付けることでその不安を軽減する一方、見過ごせない「コスト」がかかります。
※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の窪田 真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 外債投資、為替ヘッジする?ヘッジコストはいくら?【クイズでわかる!資産形成】 」
今日のクイズ:米ドルで為替ヘッジするコストを考える
今日のクイズは難問ですが、外債投資に関心のある方には、ぜひ学んでいただきたい内容です。
質問文を読んでも「答えがまったく想像つかない」という方は、外債投資の解説を読んでから、改めて答えを考えてみてください。
<クイズ>米ドルを1年間、為替ヘッジするコストは約何%ですか? 以下の説明を読んだ上、正解を【1】~【3】のうちから選んでください。
【1】約1%
【2】約2%
【3】約3%
Aさんは、円を米ドルに両替し、米国債に1年間投資します。1年後に、米国債を売却して、売却代金(米ドル)を円に戻します。その間、円高が進むと、投資元本が目減りするので、円高が進んでも良いように、あらかじめ為替ヘッジすることとしました。1年間のヘッジコストは約何%でしょう。
<参考:米ドルおよび円の金利(年利):2025年11月11日>
クイズは以上です。
外国債券の代表的なリスクは「通貨下落リスク」
外国債券の高利回りは、一見魅力的です。
<世界各国の10年金利(10年国債利回り):2025年11月11日>
ただし、外国債券の利回りは、「確定利回り」ではありません。元本割れするリスクを含んだ利回りです。外国債券には、主に以下のようなリスクがあります。
【1】為替リスク(通貨下落リスク)
相場格言で「There is no free lunch(ただのランチはない)」とあるように、高い利回りには、それに応じたリスクがあります。最も代表的なリスクが為替リスクです。円高になると(投資した国の通貨が円に対して下落すると)、投資元本が目減りします。
米ドル建ての米国国債で説明しましょう。11月11日時点で、為替レートは1ドル=約154円です。日本の個人投資家が1ドル=154円で1万ドル買い(投資額154万円)、利回り約4.1%の米国10年国債に投資して償還まで持ち続けるとしましょう。
10年後も1ドル=154円のままならば、償還資金を円に戻すと、10年間年率4.1%(税金を勘案しないベース)の運用ができたことになります。
ところが、10年後に1ドル=120円まで円高(ドル安)が進んでいたとしましょう。
【2】高金利国ほど通貨下落リスクが大きい
上記の表で「高金利国」として挙げた国は、いずれも対外負債が大きい国です。海外からたくさん借金をしているため、高い金利でなければ国債が発行できない国です。対外負債(借金)の大きい国ほど、長期金利が高く、長期的に通貨が下落するリスクが高いと言えます。
一方、日本は世界最大の対外純資産を保有し、国債のほとんどを国内で調達しているため、長期金利を低く維持しています。
ちなみに、高金利国トルコの通貨、トルコリラの対円クロスレートは、以下の通り、年々大きく下落してきました。
<1トルコリラの価値(対日本円):2011年1月~2025年11月(11日)>
いくら利回りが高くても、こんなに通貨が下落すると、投資元本が大きく減り、損失が発生することがあります。トルコリラは派手に暴落した極端な例です。
この例で分かる通り、外債投資は利回りが高ければ高いほど良いというわけではありません。金利がほどほどに高く、経済がそこそこ安定していて、通貨もそこそこ安定している国を選別して投資していくことが大切です。
米国国債やオーストラリア国債などが投資対象として良いと判断しています。一つの国に集中投資するのではなく、複数の先進国に分散投資した方が良いと思います。
「為替ヘッジ型」投資信託には、為替ヘッジコストがかかる
外国債券や外国株式に投資する投資信託で、「為替ヘッジ型」「為替ヘッジなし」の2種類が設定されているのを、よく見かけます。
外貨に投資する時、為替が円高になると差損が発生しますが、あらかじめ為替予約をすることで、為替が円高になっても損失が発生しないようにすることを、「為替ヘッジ」と言います。
例えば、円をドルに替えて1年間ドルで運用して、1年後に円に戻すとします。その間、円高(ドル安)が進むと、為替差損が発生します。円をドルに替えると同時に、1年後にドルを円に戻す為替予約をしておけば、円高による損失を回避できます(反対に、円安になっても為替差益は得られません)。
金利の高い外債に投資しながら、為替ヘッジをしておけば、「円高になっても損失が拡大することがないので安心」と思い、「為替ヘッジ型」投資信託を選ぶ人がいます。そこに落とし穴があります。
為替ヘッジにはかなり大きなコストがかかります。今日のクイズは、米ドルで為替ヘッジすると、どのくらいのコストがかかるか考えるものです。
クイズの正解
詳しい説明は割愛しますが、米ドル・円の為替ヘッジコストは、おおむね米ドル金利と円金利の差です。3カ月間米ドルを為替ヘッジするならば、そのコストは年率約3%(3カ月の金利差)です。1年間の為替ヘッジならば、そのコストは約3%(1年金利の差)です。
1年間の為替予約は実際には取りにくいので、実務上は3カ月の為替ヘッジを4回つないでいって、1年間ヘッジします。今後、金利差が変動する可能性はありますが、そのコストは、1年間でおおむね3%前後になると考えられます。
従って、正解は、【3】約3%です。
これは、あくまでも2025年11月11日時点の数値です。今後、米国および日本の金利が変われば、ヘッジコストも変わります。
為替ヘッジしながら、外債に投資すべきか?
米国債の利回りは日本の国債より約3%高いですが、米ドルを為替ヘッジするコストは約3%です。ということは、米国債に投資しても為替ヘッジすれば、高利回りメリットは失われます。為替ヘッジ付きの米国債投資の期待利回りは、同じ年限の日本国債とほぼ同じになります。
以下の点は覚えておきましょう。
<これだけは覚えよう>
外国債券の利回りは高いが、為替ヘッジして投資すると、そのコストで高利回りの魅力はほぼ失われる。
外貨金利と円金利の差が、ヘッジコストとしてかかるため。
ご参考までに、ドル/円為替レートのフォワードレートを以下にお示しします。詳しい解説は割愛します。
<ドル/円為替の、フォワードレート(1ドル当たりの円換算額):2025年11月12日10時時点>
外国株と外国債券に為替ヘッジしないで分散投資
私は、25年間日本株のファンドマネージャーをやってきて、公的年金の日本株も運用していました。公的年金の運用で、海外投資は極めて重要です。為替ヘッジしないで、米国株・米国債などに分散投資しています。
ただし、円高になれば、海外投資で為替差損が発生します。短期的には円高でマイナスが大きくなることもあります。それでも、長期投資で考えると、為替リスクを負いながら海外投資を続けていくことが資産形成に重要と判断しています。
為替ヘッジを短期的にかけることは考えられますが、何十年にわたり為替ヘッジをかけ続けることは、ヘッジコストが高いため、合理的な選択肢とは考えていません。
(窪田 真之)

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