金販売の税優遇廃止で税負担増、価格転嫁でマイナス影響は限定的か

 中国当局が11月1日付で金販売に関する税優遇措置を見直したのに伴い、宝飾品小売企業の株価は10月後半以降に大きく調整した。ただ、BOCIは業績への影響は中程度とみて、今回の調整は過剰との見方。


 金価格の下落や米国の政府閉鎖期間中の利益確定売りといった他の偶発要素が影響した可能性があるとした。引き続きカバー銘柄の周大福珠宝(01929)と六福集団(00590)を前向きに評価し、この先の決算発表が投資家の安心感につながる見通しを示している。


 中国財政部は11月1日、金取引に絡む増値税(VAT)改革を実施。最終用途別に分けた新たな税制を導入した。上海黄金取引所(SGE)や上海期貨交易所(GFEX)で取引される金を購入する際にはVATを免除するものの、現物引き渡し時に異なる税率を適用する内容。投資用の金地金や金貨の場合、販売目的の購入者を税額控除の対象外とした。


 一方、非投資目的(主に宝飾品)の場合は従来、特別インボイスの適用による13%のVAT減税の対象だったが、この仕組みを変更した上で、6%の固定税率の控除のみが認められる運びとなった。税務裁定取引(税制上の差異を利用した税負担の軽減)の抑制やコンプライアンスの向上、SGEの役割強化などが目的という。


 BOCIによれば、この新税制は宝飾品小売業者に直接的に影響する可能性がある。例えば非投資用途で金100万元を購入した場合、従来は11万5,000元(13%)の控除が可能であり、税抜き150万元で販売した場合の正味納税額は8万元だった。


 新たな制度下では控除額が6万元に減り、最終的な納税額は13万5,000元に増える。投資目的の場合は仕入税額の控除率が13%から0%に低下するため、影響はさらに大きい。


 それでも、BOCIは宝飾品企業への悪影響は限定的とみる。その理由の一つは小売価格への転嫁が可能なこと。実際、上場企業の多くは政策発表後、直ちに5-6%の値上げに動いた。もう一つは、主力の固定価格製品(金製品全体のおおむね3割超)の利益率が税負担の増大分を十分吸収できる点。


 三つ目は投資商品の収益比率が極めて小さいこと。新税制は投資用の金に最も大きく影響し、市場もこの点を警戒したとみられるが、実際には金地金や金貨が宝飾品小売企業の売上高に占める割合は1%以下にとどまるという。


 従って、この政策が周大福珠宝や六福集団、老鳳祥(A株600612)など主要企業の事業モデルを損なうことはなく、むしろこの3社に代表されるSGE加盟各社の競争優位を高める可能性があるという。


 こうした理由から、BOCIは10月後半以降の株価下落は過剰反応だと指摘。この間の調整は、固定価格製品の比重が高く、デザイン能力に優れ、集中調達制度を持つ優良銘柄の買い場につながる可能性があるとした。周大福珠宝と六福集団の株価の先行きに対し、いずれも強気見通しを継続している。


(Bank of China int.)

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