上場株式の生前贈与は相続税の節税につながります。特に贈与後の大きな株価上昇にはかなりのメリットが期待できます。

ただ、特定口座内の上場株式を贈与した際の注意点もあります。


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贈与後に株価が上昇した場合に大きなメリットが享受できる

 前回のコラム「税理士が教えます!生前贈与で損しないテクニックと注意点[Vol.1]」にて、上場株式の生前贈与について取り上げましたが、これによる大きなメリットの一つが、「贈与後に株価が上昇した場合」です。


▼参考記事はこちら

税理士が教えます!生前贈与で損しないテクニックと注意点[Vol.1]


 例えば親御さんがお子さん(18歳以上)に時価500万円分の上場株式を贈与したケースで考えてみます。親御さんに相続が生じた場合の税率は40%とします。


 500万円を贈与した場合の贈与税は48万5,000円です。率にすると10%弱です。


 贈与から10年たち、500万円だった株式の株価は10倍の5,000万円になりました。


 もし贈与をせず親御さんがこの株をそのまま持っていたなら、株価上昇分の4,500万円に対して相続税が40%、1,800万円かかります。


 でも、贈与を行っていた場合、すでに親御さんの財産にこの株は存在しませんから、この1,800万円の相続税が節減できたことになります。


 また、生前に贈与したことで、相続時の500万円に対する相続税相当額(500万円×40%=200万円)も生前に軽減できています(ただし、相続開始が贈与から7年以内の場合は、加算対象となる可能性があります)。


 従って、上のケースでは贈与をすることにより、1,800万円+200万円-48万5,000円=約1,950万円の相続税節税につがなるのです。


贈与後に株価が上昇しなくても節税メリットは十分にある

 もちろん、贈与した後に、その株の株価が上昇しないもあります。それでも、上記のケースでいえば、「200万円-48万5,000円」の節税効果はあります。


「贈与税率<相続税率」であれば、生前に贈与しておいた方が一般的には税務上有利になる、ということはぜひ覚えておきましょう。


 なお、上記の説明はいわゆる「暦年贈与」(コツコツ贈与したい人向け。1年間に110万円まで非課税、という枠を活用できる)と呼ばれる通常の贈与の話です。


 このほかに「相続時精算課税制度」(大きな財産をまとめて贈与したい人向け。2,500万円まで贈与税がかからず贈与できる)を用いた贈与でも、上場株式その他の生前贈与はできますが、「相続時精算課税制度」は注意すべき点がかなり多く、安易に使わない方が良いケースもあるため、別の機会に活用法や注意点をお伝えしようと思います。


特定口座内の上場株式を贈与した場合の注意点

 意外と知られていないことですが、特定口座内の上場株式を贈与した場合、必ずしも受贈者(贈与を受けとる人)側の特定口座に受け入れることができるとは限らない点に注意が必要です。


 具体的には、受贈者側の特定口座内に、贈与したい上場株式(ここではA社株式とします)が、すでに存在している場合は、特定口座で受け入れることはできず、一般口座での受け入れになります。


 例えば次のような場合です。


〇贈与の前に受贈者が自分自身でA社株式を特定口座内で保有している
〇今回のA社株式の贈与が2回目で、1回目の贈与の時に受贈者の特定口座で受け入れたA社株式がそのまま特定口座内に残っている


 受贈者がA社株式を保有していない状態で贈与を受ける場合は、特定口座で受け入れることができます。


 また、贈与者の特定口座内にあるA社株式の数量が、贈与によりゼロになる場合も、受贈者の特定口座で受け入れが可能です。


贈与した上場株式が一般口座に受け入れられた場合の影響は?

 受贈者の一般口座に受け入れられた上場株式を、売却せずそのまま保有し続ける分には特段問題ありませんが、売却した場合は次のような点に注意が必要となります。


〇売却による利益を自分自身で計算し、確定申告および納税を行う必要がある
〇自営業者や年金生活者など国民健康保険、後期高齢者医療保険の対象者の場合、売却益が所得に加算されて保険料が増額される恐れがある


 いずれの点も、源泉徴収ありの特定口座で売却し、かつ確定申告しない場合には回避が可能なものです。


 ただ、こうした注意点はあるものの、やはり贈与をすることによるメリットの方が勝ると感じるのであれば、生前の上場株式の贈与を積極的に実行していくことを大いに検討すべきと筆者は考えます。


(足立 武志)

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