英ノマド・フーズは冷凍野菜と冷凍魚で欧州1位、冷凍食事セットで欧州2位の欧州冷凍食品大手です。2014年に投資家のマーティン・E・フランクリンらが設立して上場し、複数のM&Aを経て設立6年で欧州最大の冷凍食品企業となりました。

積極的なM&Aの継続による利益拡大が見込まれる一方、株価は頭打ちで割安感があるため、買い推奨と致します。


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著者の西 勇太郎が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 ノマド・フーズを買い推奨:M&Aで欧州冷凍食品首位も株価割安 」


群雄割拠の欧州冷凍食品市場で買収を繰り返し、6年でトップ企業に

 先週の記事では調味料企業を取り上げました。今回は、冷凍食品大手の英ノマド・フーズを取り上げます。


2025年11月13日: キッコーマンを買い推奨!海外事業拡大で最高益計上も株価は頭打ちで割安感あり(西 勇太郎)


  ノマド・フーズ(NOMD NYSE) (株価12.20ドル:11月14日終値)は、2014年に著名な投資家のマーティン・E・フランクリン(アウトドア用品、家電、化学業界などにも幅広く関わる)とノーム・ゴッテスマン(ヘッジファンド出身で食品、外食、アートコレクションなどに携わる)が、欧州の冷凍食品企業の買収を目的とする投資会社として設立しました。


 欧州の冷凍食品市場では国ごとに有力な冷凍食品企業やブランドがバラバラの状態であったため、ノマド・フーズが買収や合併(M&A)することにより、スケールメリットと効率化が図れると考えての設立でした。


 設立翌年の2015年には早くも欧州最大の冷凍食品企業であるIglo Group、そして同じく欧州にて冷凍食品事業を展開するFindus Groupの英国以外の事業を買収しました。その後も2018年には冷凍ヨークシャープディングなどで有名な英国のAunt Bessie’sと、アイルランドの冷凍ピザ企業Goodfella’sを買収。


 さらに2021年にはクロアチアのFortenova Groupから冷凍食品部門を、2022年にはベルギーの冷凍ポテト企業Belvivaを買収しました。現在ノマド・フーズの欧州冷凍食品市場におけるシェアは約15%でトップ企業となっています。


 ノマド・フーズは今後もM&Aを継続する方針ですが、規律ある買収を重視する方針であり、今後は買収した企業のシナジー効果と株主リターンに焦点を当てると明言しています。

特に冷凍鶏肉・ポテト製品の新製品開発に注力する方針であり、この戦略を実行していく上で必要に応じて補完的にM&Aを行っていく見通しです。


7年で利益1.7倍も株価は下落

 ノマド・フーズの2017年12月期の売上高は1,957百万ユーロでしたが2024年12月期には3,100百万ユーロと1.6倍に増加しました。また当期純利益は、2017年12月期の137百万ユーロから2024年12月期に227百万ユーロと売上高を上回る伸び率を示しました。


<ノマド・フーズの当期純利益推移(2017年12月期以降)>
ノマド・フーズを買い推奨:M&Aで欧州冷凍食品首位も株価割安(西 勇太郎)
※2025年は予想値出所:ノマド・フーズ資料などより楽天証券経済研究所が作成

 他方、株価は下落しました。2021年以降ロシアによるウクライナ侵攻の影響で、欧州でエネルギー価格や農産物価格が上昇したために売上総利益率が低下したことが材料視された形です。


 ただし、他社買収後の本社機能やマーケティング費用の統合・最適化、製造拠点とサプライチェーンの統合などによって営業利益率はおおむね横ばいとなっており、当期純利益の増加トレンドという結果につなげることができています。結果的に、株価には割安感が出ている状況です。


<ノマド・フーズの株価推移(2017年12月期以降)>
ノマド・フーズを買い推奨:M&Aで欧州冷凍食品首位も株価割安(西 勇太郎)
※2025年は直近値出所:ノマド・フーズ資料などより楽天証券経済研究所が作成

PBRが過去平均水準に回復すれば株価は25ドル

 過去7年間の変化で見ると、売上高が1.6倍、営業利益も1.6倍、当期純利益率は1.7倍と大きく増加しました。株主資本蓄積も順調に進んで1.4倍に達しているにもかかわらず、株価はむしろ下がり、時価総額変化率は0.7倍となっています。


 結果的に株価純資産倍率(PBR)は1.3倍から0.6倍へと低下しており、割安感が出ている状況となっています。この割安感が解消され、PBRが過去7年間の平均水準である1.3倍にまで上昇した場合には、株価は25ドルとなります。


<ノマド・フーズの業績推移(2017年12月期と2024年12月期)> (百万ユーロ) 2017年12月期 2024年12月期 変化(倍) 売上高 1,957 3,100 1.6 売上総利益 599 918 1.5 営業利益 280 457 1.6 当期純利益 137 227 1.7 株主資本等合計 1,853 2,663 1.4 ROE(%) 7 9 1.3 時価総額 2,341 1,537 0.7 PBR(倍) 1.3 0.6 0.5 PER(倍) 17.2 6.8 0.4 ※時価総額は、2017年12月期は期末時点値、2024年12月期は直近値
出所:ノマド・フーズの資料などより楽天証券経済研究所が作成

 2025年12月期、2026年12月期の売上高がおおむね31億ユーロ近辺での横ばいに推移すると予想される一方、当期純利益については増益トレンド継続見通しとなっています。これは、インフレによる消費者の節約志向などで売上の伸び悩みの可能性がある一方、買収後の効率化によるコスト削減は着実に継続するため、利益増加が見込まれているためです。


 今後はM&Aよりもすでに買収した企業とのシナジー効果と株主リターンに焦点を当てるという戦略転換から株主還元を積極化する方針で、株主資本については小幅ながら減少していく見通しです。

それでも株価水準がこのまま変わらなければ、今後もPBR0.6倍という状況が継続することになります。


<ノマド・フーズの業績予想> (百万ユーロ) 2024年12月期 2025年12月期 2026年12月期 実績 予想 予想 売上高 3,100 3,039 3,099 当期純利益 227 251 254 株主資本等合計 2,663 2,547 2,525 時価総額 1,537 1,537 1,537 PBR(倍) 0.6 0.6 0.6 PER(倍) 6.8 6.1 6.1 出所:ノマド・フーズ、FactSetの資料などより楽天証券経済研究所が作成

冷凍食品同業他社比でPBRに割安感があり、解消されれば株価は25ドル

 ノマド・フーズの比較対象に適する冷凍食品の上場同業他社には米 コナグラ・ブランズ(CAG NYSE) 、 ニチレイ(2871 東京) 、中国の アンジョイ・フーズ・グループ(603345 上海) 、 日東ベスト(2877 東京) などがあります。


 これらの企業の自己資本利益率(ROE)を横軸、PBRを縦軸とした散布図を見ると、おおむね比例関係にあることが分かります。その中で、ノマド・フーズについては大きく割安方向にずれており、この点から、株価に割安感があると言えます。この割安感が解消された場合のノマド・フーズのPBR(下図の青破線に乗る水準)は1.3倍であり、それに相当する株価は25ドルです。


<主な冷凍食品企業のROEとPBRの関係>
ノマド・フーズを買い推奨:M&Aで欧州冷凍食品首位も株価割安(西 勇太郎)
出所:各社資料より楽天証券経済研究所が作成

 <主な冷凍食品企業10社のROEとPBR> 社名 証券
コード 取引所 売上高 ROE PBR 百万ユーロ % 倍 Conagra Brands CAG NYSE 11,613 13 1.0 ニチレイ 2871 東京 4,605 10 1.7 Ebro Foods EBRO スペイン 3,399 9 1.2 Nomad Foods NOMD NYSE 3,355 9 0.6 Anjoy Foods
Group 603345 上海 2,108 12 1.8 Sanquan Food 002216 深セン 924 12 2.1 Besler Gida BESLR イスタンブール 762 14 0.8 Frosta NLM ミュンヘン 691 17 2.6 日東ベスト 2877 東京 366 2 0.6 Zhejiang
Wufangzhai 603237 上海 314 8 2.0 出所:各社資料より楽天証券経済研究所が作成

 また、これらの企業の予想配当利回りを比較すると、ノマド・フーズは5.1%の利回り(1株当たり配当0.6ドルで計算)となっており同業他社比で2番目に高い水準となっています。また、2024年度には自社株買いを行ったこともあり、総還元利回りは12.4%に達しました。


 前述の通りノマド・フーズは株主リターンに焦点を当てるという戦略を示しており、今後も高水準の株主還元が期待できる状況です。


 <主な冷凍食品企業10社の配当および総還元利回り> 社名 証券
コード 取引所 2024年度 2025年度 実績配当 総還元 予想配当 % % % Conagra Brands CAG NYSE 7.5 8.2 7.6 ニチレイ 2871 東京 5.2 7.5 4.1 Ebro Foods EBRO スペイン 3.7 3.7 3.1 Nomad Foods NOMD NYSE 5.1 12.4 5.1 Anjoy Foods
Group 603345 上海 4.2 4.1 4.8 Sanquan Food 002216 深セン 2.6 2.6 2.7 Besler Gida BESLR イスタンブール 0.0 0.0 0.0 Frosta NLM ミュンヘン 2.0 2.0 2.5 日東ベスト 2877 東京 1.6 1.6 1.6 Zhejiang
Wufangzhai 603237 上海 5.7 5.7 2.9 出所:各社資料より楽天証券経済研究所が作成

 ここまで述べさせていただいた通り、ノマド・フーズは今後も高水準収益継続が見込まれ、かつ、積極的な株主還元が期待できる中で、株価は過去実績比、同業他社比で割安感があるため、投資判断を「買い推奨」と致します。


(西 勇太郎)

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