サカタのタネは種苗国内最大手で世界でもトップ10に入ります。創業100年の2013年以降、海外M&Aを積極化し、海外売上は全体の8割です。
アンデスメロンを開発し、2013年から海外展開加速
サカタのタネ(1377 東京) (株価4,000円、時価総額1,730億円:11月21日終値)は種苗国内最大手で世界でもトップ10に入る企業です。世界170カ国に花や野菜の種子を販売しており、特にブロッコリーの世界市場シェアは65%、トルコギキョウは70%を占めています。
欧州のメロンとマクワウリを掛け合わせて開発した「プリンスメロン」(1962年)、安定的に高い甘みの実ができることから「安心です」に名前が由来する「アンデスメロン」(1977年)でも知られます。
同社は、欧米で園芸技術を学んだ坂田武雄氏が1913年にユリ球根の輸出などを目的として横浜に設立した「坂田農園」を起源とします。1914年に第1次世界大戦が勃発して国際物流が混乱し苗木の輸出が困難になったことから、1916年に種子販売へと事業転換しました。
1921年に日本の民間企業で初めて発芽の安定性を研究する発芽試験室を設置し、1930年代には品種改良を本格化。第2次世界大戦下で政府主導の企業統合が進められていく1942年に、国際展開の経験と実績を持つ坂田農園が中心となって複数企業が合併し、「坂田種苗」(現在のサカタのタネ)が設立されました。
戦争中は海外との取引がほぼ停止し、国内向けの品種開発と供給に集中していましたが、終戦後は海外輸出を再開。1977年の米国現地法人を皮切りに海外進出を本格化させ、1980年代以降、欧州、チリ、メキシコ、ブラジル、中国などに相次いで現地法人を設立し、現地での育種、販売、マーケティング、安定供給体制の強化に努めました。
2007年に3代目社長に就任した坂田宏氏は海外駐在の経験から現地適応型の品種開発と販売が不可欠と認識しており、2013年に創業100年を迎えたことを機に、グローバル展開と事業強化の加速にかじを切りました。
2017年にはヨルダンのキュウリ育種企業McAVET、2023年にはオランダのキュウリ種苗企業Sana Seeds、ブラジルの家庭園芸・小規模農家向け種苗企業Isla Sementesなど、買収や合併(M&A)も積極的に実施。
当期純利益が7年間で2倍に
サカタのタネの2018年5月期の当期純利益は58億円でしたが、2025年5月期には97億円と2倍に近い水準になりました。
前期比では大幅減少となっていますが、これは前期に、保有していたカネコ種苗の株式を売却して特別利益122億円を計上したことによるもので、この要因を除けば、おおむね高水準の利益を維持し続けている状況となります。2026年5月期の当期純利益計画値は90億円と、高水準の利益が継続する見通しです。
<サカタのタネの当期純利益推移(2018年5月期以降)>
株価については2022年5月期に予想を上回る決算を受けて一時的に上昇する局面がありましたが、その後反落。現在は4,000円近辺と2018年5月期と同水準となっています。
<サカタのタネの株価推移(2018年5月期以降)>
PBRが過去平均水準の1.4倍に達すれば株価は5,000円
過去7年間の変化で見ると、売上高が1.5倍に増加したのに対して売上総利益は1.7倍、営業利益は1.6倍、当期純利益は1.7倍と増加ペースが売上高を上回っており、利益率上昇を伴いながらの事業拡大が実現しました。
株主資本の蓄積も順調に進んで1.6倍に達している中、時価総額は0.9倍に低下しています。結果的に株価純資産倍率(PBR)は1.9倍から1.1倍へと大きく低下し、割安感が出た状態になっています。この割安感が解消され、PBRが過去7年平均水準の1.4倍にまで上昇した場合には、株価は5,000円となります。
<サカタのタネの業績推移(2018年5月期と2025年5月期)> (億円) 2018年5月期 2025年5月期 変化(倍) 売上高 624 929 1.5 売上総利益 343 585 1.7 営業利益 76 123 1.6 当期純利益 58 97 1.7 株主資本等合計 995 1,618 1.6 時価総額 1,840 1,730 0.9 PBR(倍) 1.9 1.1 0.6 PER(倍) 32 15 0.5 ※時価総額は、2018年5月期は期末時点値、2025年5月期は直近値
出所:サカタのタネの資料などより楽天証券経済研究所が作成
ちなみにセグメント別では、海外卸売の増収増益のみが全体の増収増益に寄与しました。この海外卸売の増収増益は前述の通り、2013年以降のグローバル展開と事業強化の加速、そして積極的なM&Aによるものです。
<サカタのタネのセグメント別業績推移(2018年5月期と2025年5月期)> (億円) 2018年5月期 2025年5月期 変化(倍) 売上高 624 929 1.5 国内卸売 167 127 0.8 海外卸売 373 720 1.9 小売 71 45 0.6 営業利益 76 123 1.6 国内卸売 52 48 0.9 海外卸売 112 200 1.8 小売 1 ▲3 ▲3.0 営業利益率 12% 13% 1.1 国内卸売 31% 36% 1.2 海外卸売 28% 27% 1.0 小売 1% ▲6% ▲7.9 出所:サカタのタネの資料などより楽天証券経済研究所が作成
2026年5月期、2027年5月期はともに増収かつ高水準の利益を維持する見通しとなっております。株価水準がこのまま変わらなければ、2027年5月期にはPBRが1.0倍まで低下する計算になります。
<サカタのタネの業績予想> (億円) 2025年5月期 2026年5月期 2027年5月期 実績 予想 予想 売上高 929 955 1,013 営業利益 123 110 - 当期純利益 97 90 96 株主資本等合計 1,618 1,573 1,627 時価総額 1,730 1,730 1,730 PBR(倍) 1.1 1.1 1.0 PER(倍) 15 19 18 出所:サカタのタネ、FactSetの資料などより楽天証券経済研究所が作成
同業他社比でPBRに割安感
サカタのタネの比較対象に適する種苗の上場企業には米 コルテバ(CTVA NYSE) 、 カネコ種苗(1376 東京) 、 ベルグアース(1383 東京) などがあります。
これらの企業について、自己資本利益率(ROE)を横軸、PBRを縦軸とした散布図を作成すると、おおむね比例関係にあることが分かります。その中で、サカタのタネについては大きく割安方向にずれており、この点から、株価に割安感があると言えます。この割安感が解消された場合のサカタのタネのPBR(下図の青破線に乗る水準)は2.7であり、相当する株価は1万円です。
<主な種苗企業のROEとPBRの関係>
<主な種苗企業10社のROEとPBR> 社名 証券
コード 取引所 売上 ROE PBR 億円 % 倍 Corteva CTVA NYSE 25,648 4 1.9 UPL UPL インド 8,402 3 1.8 KWS SAAT KWS ドイツ 2,708 10 1.5 Yuan Longping High-tech 000998 深セン 1,810 2 3.0 Winall Hi-tech Seed 300087 深セン 995 6 5.7 サカタのタネ 1377 東京 929 6 1.1 カネコ種苗 1376 東京 645 5 0.7 Shandong Denghai Seeds 002041 深セン 263 2 2.4 Gansu Dunhuang Seed 600354 上海 244 8 5.2 ベルグアース 1383 東京 71 2 2.3 出所:各社資料より楽天証券経済研究所が作成
また、これらの企業の予想配当利回りを比較すると、サカタのタネは1.9%の利回り(一株当たり配当75円で計算)となっており、おおむね同業他社平均に近い水準です。また、2024年度については自社株買いも行っており、総還元率は同業他社比で相対的に高いものでした。
<主な種苗企業10社の配当および総還元利回り> 社名 証券
コード 取引所 2024年度 2025年度 予想配当 実績配当 総還元 % % % Corteva CTVA NYSE 1.1 3.3 1.1 UPL UPL インド 0.1 ▲2.9 0.6 KWS SAAT KWS ドイツ 1.5 1.5 1.9 Yuan Longping High-tech 000998 深セン 0.4 0.4 0.4 Winall Hi-tech Seed 300087 深セン 0.6 0.5 0.6 サカタのタネ 1377 東京 1.9 3.2 1.9 カネコ種苗 1376 東京 2.3 3.9 2.3 Shandong Denghai Seeds 002041 深セン 0.3 0.3 0.3 Gansu Dunhuang Seed 600354 上海 0.0 0.0 0.0 ベルグアース 1383 東京 0.3 0.3 0.3 出所:各社資料などより楽天証券経済研究所が作成
ここまで述べた通り、サカタのタネは今後も高水準収益継続が見込まれる中で、株価は過去実績比、同業他社比で割安感があり、配当利回りもそん色ないため、投資判断を「買い推奨」とします。
ROEがさらに上昇する可能性も
前述の通り、サカタのタネの現在のROE6%に対してPBR1.1倍は割安であり、PBR2.5倍が、割安感が解消された水準と示させていただきました。サカタのタネのROEが今後さらに高まればPBRの適正水準もさらに高まるわけで、さらなる株価上昇につながります。
ここでは、サカタのタネのROEを、同業他社との比較を通じてより詳細に分析し、さらなるROE上昇の可能性を検討してみたいと思います。
ROEを分析する際には、
ROE(当期純利益÷株主資本) = 当期純利益率(当期純利益÷売上高) × 総資産回転率(売上高÷総資産) × 財務レバレッジ(総資産÷株主資本)
の3要素に分解する手法(デュポン分析)を使用するのが一般的です。このやり方で種苗企業10社についてROEを分解した結果を下表に示しました。
<主な種苗企業10社のデュポン分析> 社名 ROE 当期純利益率 総資産回転率 財務レバレッジ % % 回 倍 Corteva 4 5 0.4 1.7 UPL 3 2 0.5 2.9 KWS SAAT 10 8 0.6 2.1 Yuan Longping High-tech 2 1 0.3 5.0 Winall Hi-tech Seed 6 2 0.7 3.7 サカタのタネ 6 10 0.5 1.2 カネコ種苗 5 2 1.3 2.0 Shandong Denghai 2 5 0.3 1.4 Gansu Dunhuang Seed 8 4 0.6 3.1 ベルグアース 2 1 1.3 2.8 平均値 5 4 0.6 2.6 出所:各社資料より楽天証券経済研究所が作成
主要10社の財務レバレッジ平均値は2.6となっており、サカタのタネの財務レバレッジが他社比で低い状況にあることが分かります。
2,000億円以上の使用可能資金
仮に、サカタのタネの財務レバレッジを平均水準の2.6倍まで高めるとすると、下表の通りとなって、2,579億円を使用可能資金として確保でき、新たな設備投資やM&A、株主還元に用いることが可能な計算となります。
<サカタのタネの使用可能資金試算(財務レバレッジを2.6倍に高めるケース)> (億円) 2024年度 補足 株主資本等合計 1,613 - 総資産 1,910 - 調整後総資産 4,194 = 1,613 x 2.6(財務レバレッジ2.6倍に調整) 負債増加可能額 2,284 = 4,194 – 1,910 現金 295 - 使用可能資金 2,579 = 2,284 + 295 利益剰余金 1,266 - 出所:サカタのタネの資料などより楽天証券経済研究所が作成
実際サカタのタネはこの潜在的な資金調達力を背景に、世界各地に育種研究所を設置し、ブロッコリーやトルコギキョウなど世界シェアの高い品目の改良を推進しています。また、種子生産施設や倉庫の整備を進め、安定供給体制を確立しています。さらにヨルダン、オランダ、ブラジルなど世界各国の企業のM&Aも積極的に行っています。
今後もサカタのタネは積極的な設備投資やM&Aの機会を狙っていくと考えられます。潤沢な資金調達力を活用した事業拡大が実現できた結果財務レバレッジが2.6倍にまで高まった場合には、ROEが13%に上昇し、PBRは3.0以上になる可能性があります。
(西 勇太郎)

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