暫定税率の廃止が決定し、ガソリンの小売価格が大きく下がり始めました。しかし、ガソリンの原材料である原油の国際相場は長期視点で高止まりしています。
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著者の吉田 哲が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 ガソリン価格を左右する「OPECプラス」はどう動く? 」
さらなる高値を望む主要産油国
以下のグラフは原油の国際指標の一つであるドバイ原油の推移です。足元65ドル近辺で推移しています。この65ドルという水準は1990年代のおよそ3倍、リーマンショックや新型コロナショックの直後につけた安値のおよそ1.5倍です。
図:ドバイ原油(名目・実質)価格(年足) 単位:ドル/バレル
確かにリーマンショックの直前やウクライナ戦争勃発直後の高値に比べれば安いかもしれません。ですが、1970年代後半のオイルショックの時の名目および実質価格よりも高いこともあり、長期視点ではやはり高いと判断せざるを得ません。
また2010年ごろ以降底上げが起きていることにも注目が必要です。以前のレポートで述べた通り、自由民主主義指数の世界平均が低下し始めたタイミングです。自由で民主的な状態がよいと考える西側諸国とそう考えない非西側諸国の間での分断が深まり始めたタイミングでもあります。
こうした世界規模の分断が発生したことにより、資源を持っている非西側諸国は「資源の武器利用」を行うようになりました。世界規模の分断が発生しているときに行う資源の武器利用には大きく三つのメリットがあります。
一つ目は自国の資源の安定供給です。二つ目は分断発生時の相手方である西側諸国に対する影響力を大きくすることです。三つ目は需給バランスを引き締めることによって資源価格の高騰が期待できることです。
まさに今、原油相場において、産油国という非西側の資源国による資源の武器利用の影響が生じていると考えられます。2016年に協議が本格化し、2017年に始まった石油輸出国機構(OPEC)プラス(詳細を後で述べています)の原油の減産もまた、資源の武器利用の意味を伴っているといえるでしょう。
さらに2010年ごろは、2008年に勃発したリーマンショックからの経済の立て直しを急ぐために西側諸国が提唱し、強力に進めた脱炭素の政策によるマイナス面の影響が大きくなったタイミングです。
当時、「石油は悪だ」「石油は使うな」「石油を生産する国が地球をダメにしている」などと、地球温暖化の原因の多くが石油にあるという論調が世界に急速に拡大しました。これにより非西側の産油国たちの政治的な立ち位置が危うくなり始めました。同時に、原油の輸出量減少という経済的な危機にひんし始めました。
図:サウジアラビアの財政収支が均衡する時の原油価格 単位:ドル/バレル
このことが一因で、非西側の代表的な産油国の一つであるサウジアラビアの財政収支が均衡する原油価格の水準が大きく上昇しました。
このように、世界分断深化そして脱炭素推進は、原油を生産する非西側の産油国において、原油価格が今よりも高くなることを強く望む動機になりました。
重要な会合で各減産の方針を維持した
11月30日、足元の原油相場を分析したり今後の原油相場の動向を占ったりする上で大変に重要な会合がありました。OPECプラスの会合です。OPECプラスは以下の図の通り、合計23の主要な産油国で構成されています。
石油輸出国機構(OPEC)に加盟する12カ国、そしてロシアやカザフスタンなどの非加盟の11カ国です。原油の生産シェアはおよそ59%です(2025年10月時点)。
図:OPECプラスについて(2025年12月時点、原油生産シェアは2025年10月時点)
このOPECプラスは、以下の会合を定期的に開催しています(臨時に開催する場合もある)。11月30日は半年に一度行われるOPEC・非OPEC閣僚会議、そして二カ月に一度行われる共同閣僚監視委員会(JMMC)、また毎月行われる自主減産を行っている八カ国の会合も行われました。
OPEC・非OPEC閣僚会議のタイミングは、OPECが単体で開催しているOPEC総会のタイミングと同様です(5月下旬or6月上旬、11月下旬or12月上旬の2回)。協調減産の実施期間や規模を決定するなど、OPECプラスの最高意思決定機関です。
JMMCは、OPECプラスの中の主要国が参加し、協調減産・自主減産といった各減産について、監視・分析をする委員会です。OPEC・非OPEC閣僚会議に、臨時会合の開催、減産の延長、減産の規模拡大(縮小)など、さまざまな勧告を行います。
自主減産を実施している八カ国の会合については、翌月に自主減産をどの程度縮小するのかを決定します。自主減産は2023年の5月に始まりました。自主減産の縮小が2025年の4月に始まり、それ以降毎月、翌月の方針を決める会合が行われています。
図:OPECプラスの各種会合について(2025年12月時点)
11月30日に行われたOPEC・非OPEC閣僚会議では、協調減産を2026年の年末まで継続することの再確認(2024年12月に決定)、2027年の協調減産の基準量設定に向けた仕組みを導入することの再確認(2024年12月に決定)、協力憲章(CoC)の枠組みとその目的を再確認(2019年7月に署名済)しました。
同日の自主減産実施八カ国の会合においては11月2日の会合で決定した2026年1月から3月の自主減産縮小(≒増産)を停止することを再確認しました。これら三つの会合において真新しい決定事項はなかったといえます。この点が各種メディアにて「減産維持」と報じられているゆえんです。
減産をしながら増産をするOPECプラス
以下は、OPECプラスにおいて協調減産に参加している国々の原油生産量、協調減産の基準量、協調減産における生産量の上限の三つをイメージしたグラフです。
日量200万バレルの協調減産は2026年の年末まで続くことが決定しています。そして八カ国による自主減産を含んだ実際の原油生産量を見てみると、自主減産が始まった2023年5月から減り始めたことが分かります。また自主減産の縮小が始まった2025年4月から生産量が増加し始めたことも分かります。
図:OPECプラスの原油生産量と協調減産の動向(2020年4月~) 単位:千バレル/日量
以下の図のとおり、自主減産を実施している八カ国の動向を見ても現在停止している増産が再開したとしても、増加が想定される原油生産量は限定的です。2026年4月以降、日量166万バレルの自主減産の縮小が本格化すると考えられますが、この場合でも今から日量百数十万バレルの増加にとどまります。
図:自主減産実施八カ国の原油生産量と協調減産の動向(2020年4月~) 単位:千バレル/日量
足元、自主減産の縮小はまだ完了していないため、実質的に自主減産は継続しています。そのためOPECプラスは協調減産と自主減産縮小という名前の増産を同時進行させていることが分かります。
このことはOPECプラスの動向をつかみにくくしている大きな原因ですが、時間軸を加味して考えると分かりやすくなります。協調減産は長期視点の活動です。
一方で自主減産あるいは、自主減産の縮小という名前の増産は短期視点の活動です。ですので、原油相場へは、協調減産継続については長期視点の上昇圧力をかける要因、自主減産の縮小という名前の増産については短期視点の下落圧力をかける要因といえます。
サウジの「ダブルフェイス」は限界か?
自主減産を行っている八カ国の減産順守率を確認します。減産順守率は実際に削減した量が本来削減するべき量に比べてどの程度かを示す目安です。100%を上回ると減産順守、下回ると減産非順守を意味します。
実際に削減した量は、減産の基準となる量から実際に生産した量を引いた値です。本来削減するべき量は減産の基準となる量から決められた生産量の上限に相当する量を引いた値です。
図:自主減産八カ国の自主減産における減産順守率(2023年5月から2025年10月)
上の図の通り、サウジアラビア、クウェート、アルジェリア、オマーン、ロシアなどについては減産を順守することができなかった月があったものの、全体としては決められたルール通りあるいはそれ以上の自主減産を行ってきたことが分かります。
特にクウェートについては、決められた削減量を大きく超える削減を長期間続けてきたことが分かります。
一方、自主減産を十分に順守することができなかった国もありました。イラク、UAE、カザフスタンです。これらの国々については、短い期間において減産順守となった月があったものの、減産非順守の期間が長く、全体としては自主減産実施に貢献できなかった国だといえます。
現行の減産のルールにおいては、「埋め合わせ」の条項があり、基準を超えて生産してしまった分については、近い将来において生産を削減して埋め合わせなければなりません。そしてその埋め合わせのための削減の計画を提出しなければなりません。
このように、現行の減産のルールは大変に厳格です。以前のOPECの減産の際には、「抜け駆け増産」や「闇増産」などという言葉が飛び交っていましたが、現在はそのようなことが起きないルールが導入されています。
とはいえ自主減産を十分に順守していない国が複数あることから、OPECプラスという組織は一枚岩ではないと判断せざるを得ません。OPECプラスという組織のリーダー格の一つであるサウジアラビアは、以下のとおり二つの顔を持っていると考えられます。
図:サウジアラビアの「二つの顔」
米国から武器などの提供を受けつつ中東での影響力を維持したい「西側の顔」、そして産油国のリーダーとしての影響力を維持したい「産油国の顔」です。原油相場への思惑は前者が下げてもよい、後者が上げたいとなるでしょう。
足元の自主減産の減産順守率を確認する限り、サウジアラビアの産油国の顔は薄れつつあるといえます。いかにして、今後この産油国の顔を取り戻すかが、サウジアラビアにとって自主減産、そしてその後の協調減産を厳格に進めていく上で、大きなポイントになると考えられます。
もしサウジアラビアが産油国の顔を取り戻そうと考えているのであれば、11月30日に行われたOPEC・非OPEC閣僚会議で協調減産を2026年の年末まで継続したことは、原油の需給バランスを引き続き緩めないという意図があると思われます。
さらに、2027年の協調減産の基準量設定に向けた仕組みを導入することの協議を継続したことは、協調減産をさらに長い期間継続して需給バランスを長期にわたり引き締め続けることを、意図していると考えられます。
また、協力憲章の枠組みの目的を確認したことについては、現在協力憲章の配下にあるイラン、リビア、ベネズエラ、ブラジルのいずれかを協調減産実施国に引き入れる段取りを進める意図があると考えられます。実際に同会合では、次回の第41回の会合で協力憲章の目標を完全に達成するための計画を策定し、それをプログラムへと転換して提出するよう要請しました。
同日の自主減産実施八カ国の会合において、11月の会合で決定した2026年1月から3月の自主減産縮小(≒増産)を停止することを再確認したことについては、一時増産を停止し、その間に埋め合わせの条項によって減産を約束した国々がきちんと減産をしているかを見極める意図があると考えられます。
OPECプラスのリーダー格であるサウジアラビアは、このような意図を持って11月30日の会合に臨んだと筆者は考えています。
協調減産継続で原油の長期高止まり続く
以下は、この数年間の原油相場の動向、およびその要因を示した図です。先ほど述べたとおり自主減産の縮小という名前の増産は、その規模に限度があるため短期視点の下落要因であるといえます。また協調減産の継続については、少なくとも2026年の年末まで続く比較的長い時間軸の上昇要因であるといえます。
もし仮に、2026年6月7日に予定されている次回のOPEC・非OPEC閣僚会議において、2027年も協調減産を続けることを決定すれば、長い時間軸の上昇要因がさらに継続することを意味します。
図:NY原油先物(期近)日次平均 単位:ドル/バレル
現在、協力憲章の配下で減産を実施していないブラジルや、(可能性は低いかもしれないが)例外的に減産を行っていないイラン、リビア、ベネズエラといった国が協調減産に参加するようになれば大きな規模の協調減産が長い時間軸で続くことになります。これは原油相場を比較的長い時間軸で支える大きな上昇圧力になり得ます。
なぜOPECプラスは減産を実施するのでしょうか。短期視点で原油相場を反発させるため、と報じられることがありますが、冒頭で述べた通りOPECプラスにとって原油の減産は「資源の武器利用」という意味があると考えられます。世界の分断が進んだり、「石油悪玉論」が横行したりしているからこそ、自分の身を守るために減産をしているという考え方です。
下の図の通り、世界の分断は世界の民主主義の後退、世界の民主主義の後退は、人類が良かれと思ってつくり出した新しい技術・考え方のマイナス面がきっかけによって発生していると考えられます。石油悪玉論もその流れの中で台頭し始めたと考えられます。
新しい技術や考え方のマイナス面が世の中からなくならない限り、世界分断の深化や石油悪玉論の横行はなくならないと考えられます。新しい技術や考え方は人類が良かれと思ってつくり出したものであるため、世の中からなくすことはほぼ不可能です。
図:2010年ごろ以降の世界分断と高インフレ(長期視点)の背景
新しい技術や考え方のマイナス面は今後も世の中に残るでしょう。その結果、世界の民主主義の後退や世界分断の深化が続き、加えて石油悪玉論も続くでしょう。そしてこれらは、これからもOPECプラスの原油の減産を行う動機となるでしょう。
その意味で筆者は、2026年6月7日に予定されている会合で、規模や実施する国はどうあれ、2027年の協調減産の継続が決定すると考えています。このことは長期視点で原油相場を支える大きな原動力になると考えます。
産油国が関わる戦争・紛争の動向、主要国の景気や株価指数の動向、米国の石油の需要・供給に影響を与えうるさまざまな政策の動向など、留意すべき材料は他にもありますが、こうした材料とともにOPECプラスの協調減産継続による上昇圧力が原油相場を押し上げ、例えばサウジアラビアが満足するであろう83ドルを大きく超える場面も、近い将来、見られる可能性があると考えています。
日本でガソリンの暫定税率の廃止が決定し、ガソリンの小売価格が大きく下がり始めました。
しかしこれは、減税による値下がりであるため、今後の原油の国際相場やドル円相場の動向によっては、全国平均で再び1リットルあたり180円、190円、あるいは200円を超える可能性も否定はできません。引き続き原油相場にとって大きなテーマの一つであるOPECプラスの動向に注目していく必要があります。
[参考]エネルギー関連の投資商品(例)
国内ETF・ETN(NISA成長投資枠活用可)
NNドバイ原油先物ブル(2038)
NF原油インデックス連動型上場(1699)
WTI原油価格連動型上場投信(1671)
NNドバイ原油先物ベア(2039)
外国株式(NISA成長投資枠活用可)
エクソン・モービル(XOM)
シェブロン(CVX)
オキシデンタル・ペトロリアム(OXY)
海外ETF(NISA成長投資枠活用可)
iシェアーズ グローバル・エネルギー ETF(IXC)
エネルギー・セレクト・セクター SPDR ファンド(XLE)
投資信託(NISA成長投資枠活用可)
シェール関連株オープン
海外先物
WTI原油(ミニあり)
CFD
WTI原油・ブレント原油・天然ガス
(吉田 哲)

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