米国株は「AIバブル」を巡る悲観論を引け、強気基調を維持しています。S&P500の年初来堅調は通年ではナスダック主力株がけん引。

今後もS&P500ベースのEPSは二桁増益と最高益更新が見込まれ、2026年末までにS&P500は8,000ポイントを目指す強気相場を予想しています。


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米国株式は「バブル崩壊」の悲観を引ける強気相場を持続

 米国市場では、S&P500種指数(S&P500)が11月末時点で年初来+16.4%上昇しました。特にナスダック主力株を象徴するナスダック100指数は+21.6%と相場全体をけん引してきました。


 S&P500は10月28日に今年37回目となる過去最高値を更新した後、「AI相場」を巡る過熱感や不安に揺れて軟調となりました。ただそのドローダウン(直近高値からの下落率)は5.1%で、定義上は押し目(Consolidation/Pull Back)にとどまり、調整局面(Correction=高値から10%超の下落)には至りませんでした。


 その後S&P500は11月21日以降に5日続伸となり、下げ幅の88%を取り戻す反発をみせました(11月28日)。テック株相場のガス抜き調整を消化し、12月10日の米連邦公開市場委員会(FOMC)に向けた追加利下げ観測が高まる中、債券市場金利が低下したことも追い風になりました。


 図表1が示すように、2020年以降の世界株式の動向を振り返ると、米国株式は堅調トレンド(強気相場)にあり、特に収益面の成長期待が高く、時価総額の大きいテック株を中心とするナスダック100指数が世界株式全体の上昇を主導してきたことが分かります。


図表1:ナスダック主力株が米国株式と世界株式の堅調をけん引してきた
S&P500は8,000を目指す!2026年の米国株見通し
出所:長期市場実績をもとに著者が作成

S&P500上位銘柄に物色変化:「アルファベットの逆襲」に注目

 10月下旬からの米国株軟調は、ナスダック主力株の物色変化が契機となりました。


 10月に時価総額が5兆ドルを突破した エヌビディア(NVDA) は過熱感が意識され、「空売り王」と呼ばれるヘッジファンドがプットオプションを積み増していたとの報道や、過剰投資不安に循環取引(Round-trip Transaction)疑惑も重なり、株価が一転軟調に。AI関連株が連想的に売られ、ナスダック全体が弱含みました。


 一方、目立ったのが「 アルファベット(GOOGL) の逆襲」です。同社傘下のグーグルが供給するAI半導体(TPU)と生成AI(Gemini 3)の高性能が評価され、11月に同社株は連日で最高値を更新。一時は年初来株価上昇率が7割を超える勢いとなりナスダック相場を下支えました。

「エヌビディアの軟調」を「アルファベットの逆襲」が補完する構図となりました。


 とはいえ、エヌビディアの年初来上昇率も+31.8%とS&P500の約2倍(11月28日)。エヌビディアが10月19日に発表した決算発表とガイダンス(業績見通し)の好調を踏まえると、予想株価収益率(PER)(23.2倍)に割安感も見てとれます。


 AI分野の競争激化は業界全体のイノベーションを促す健全な現象ともみられ、ナスダック相場の下落はテック業種内での物色シフトに伴う「中間反落」と捉えるのが妥当と考えられます。


 図表2が示すとおり、S&P500の時価総額上位は「MAG8」とも呼べるナスダック上位8社が占め、時価総額合計ウエートは同8社で約4割です。銘柄ごとの年初来騰落率に濃淡はありますが、8社の年初来騰落率平均は+25.85%とS&P500(+16.5%)を上回り、2025年もS&P500堅調をけん引してきました(11月28日)。


図表2:S&P500の時価総額上位銘柄を年初来騰落率で比較する
S&P500は8,000を目指す!2026年の米国株見通し
出所:市場実績および各種情報より作成 *予想PER=株価÷今後12カ月の市場予想平均EPS

2000年3月までの「ネットバブル」とAI相場の現在を比較する

 10月下旬以降にナスダックが下落すると、「ついにAI相場(米国株高)もバブル崩壊か」といったタイトルで報道されることが増えました。読者の関心を引きやすいキャッチーな見出しで、こうした論調が現れるのは仕方ありません。


 しかし、下段の図表3と図表4が示すように、現在のAI相場と2000年3月のネットバブル崩壊(最終局面)直前を同列に扱うことには注意が必要です。


「ネット相場」(「インターネット相場」「ドット・コム相場」とも呼ばれます)は1991年10月から2000年3月まで9年5カ月も続いた長期強気相場で、この間にナスダック100指数は約21倍となり、2020年3月には、同指数の予想PERが60倍に上昇しました。


 その途上の1996年12月、当時のグリーンスパン米連邦準備制度理事会(FRB)議長は株高傾向を「根拠なき熱狂」(irrational exuberance)と形容。その時点からでも、ネット相場は3年3カ月続いたことが検証できます。2000年3月時点で当時の主力企業シスコシステムズの予想PERは130倍に上昇し、実態的な業績よりも「夢」が評価される局面に至りました。


一方、現在のAI相場は、2022年11月にChatGPTが登場してからスタートした、と定義すると、約3年にすぎず、いまだ進化の途上(形成期)の段階にありそうです(図表3)。


 主力テック株群「GAFAM」の予想PERは30~40倍、エヌビディアの予想PERは株価下落後で23.2倍に低下し、2000年3月のバブル崩壊時に比べた場合、利益水準と成長期待をベースにすると、バリュエーション(株価評価)は、「バブル崩壊前」とは断定しにくい水準です。


 AI相場を支える業績成長も単なる思惑ではなく、クラウド企業の巨額のデータセンター投資やAIサービスの実需拡大が中心で収益(黒字)拡大が伴っています。また、FRBの金融政策も9月FOMCから利下げ方向に転じ、10年債金利は4%程度まで低下しています。


 2000年3月当時は「利上げ局面」(FRBは1996年6月から断続的な利上げを実施し10年債金利は当時6.3%まで上昇しました)とは対照的です。


 さらに、ネットバブル崩壊時は「2000年問題」に備えた1999年のPC販売拡大の反動で、2000年初にPCや通信機器の過剰在庫が顕在化して業界の業績が落ち込んだことも株価急落の要因となりました。


 こうして比較すると、現在のAI相場は「ブーム」ではあっても、ネットバブル時の末期のような脆い過熱状態には至っていません(図表4)。AI相場をネット相場と比較して野球に例えるなら「2~3回の裏表の攻防にすぎない」と言えそうです。


 AI普及という産業革命の立ち上がりと利活用(生成AI→AIエージェント→エッジAI→自動運転→フィジカルAI→医療AI→ヒューマノイドロボットなどへの実用化)はこれからが本番です。相場に短期的な需給波乱が幾度あっても、ネット相場と混同して過度に悲観せず、AI相場のメガトレンド(構造的な成長)として冷静に捉えるべきでしょう。


図表3:「ネット相場」と「AI相場」:ナスダック100の推移で比較する
S&P500は8,000を目指す!2026年の米国株見通し
出所:市場実績および各種情報をもとに作成

図表4:「ネットバブル崩壊時」と「AI相場の現在」はどう違う?
S&P500は8,000を目指す!2026年の米国株見通し
出所:市場実績および各種情報をもとに作成

「2026年にS&P500は8,000を目指す」と予想する理由

 本年も残り1カ月となり、市場参加者は早くも2026年の相場見通しを意識し始めています。図表5は、S&P500ベースのEPS(1株当たり利益/時価総額加重平均)の実績と、市場予想平均(2025~2027年はアナリストによるボトムアップ予想平均)を示したものです。


 本年のEPSは前年比11.5%増益と史上最高益で着地する見通しで、来年(2026年)も13.8%増益、2027年も14.0%増益と力強い増益基調が続くと予想されています(ボトムアップ予想平均)。


 AIブームの波及効果(データ収集や解析などにAIを利活用することで産業の効率化が進み、経済成長や企業収益拡大に寄与するとの期待)を背景に、ハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)や半導体企業を中心に設備投資は旺盛です。


 さらに、トランプ政権が海外から引き込んだ約5兆ドル(約780兆円)に及ぶ対米直接投資や電力供給などインフラ拡充策も株式市場の追い風となりそうです。


 11月末時点の株価水準で試算する予想PERは、2026年予想EPSを前提にすると約22倍、2027年予想EPSを前提にすると約19.5倍となります。


 上述のとおり、FRBの利下げトレンドと長期金利4%前後を織り込めば、2027年予想EPSをベースにしたPERは23倍程度まで拡張する可能性があり、この場合では2026年末までにS&P500は8,000ポイント到達(2027年予想EPS350.98×想定PER23倍=8,072)が現実味を帯びてきます。


 特に、AI普及に伴うモメンタム効果が続くなら、比較的高めの予想PERが許容される市場センチメントも想定されます。


 2025年に続き2026年、2027年も2桁増益で最高益更新が続くと、S&P500の7,000ポイント到達は時間の問題(通過点)で、適宜の需給悪化や株価波乱をこなしながら2026年末には2027年の利益水準を織り込む形で8,000ポイントを目指す強気相場の持続が見込めます。


 来年も米国株式は、将来の利益成長を織り込む成長証券(Growth Securities)としての存在感を失わないでしょう。


 目先は、12月10日のFOMCでの追加利下げ決定の有無、QT(量的引き締め)の緩和、金融当局が公表する最新の「経済・金利見通し」が2026~2027年の米国経済と金利が「ソフトランディングの継続と利下げサイクル」を示すかどうかに市場の関心が向かうとみられます。


 トランプ大統領は14日、約200品目の食料品を相互関税(輸入関税)から除外する大統領令に署名しました。今後、コーヒー、バナナ、オレンジ、トマト、牛肉など日常食料品の小売価格が下落する可能性が注目されています。


図表5:企業業績は2025年に続き2026年も2027年も二桁増益で最高益更新を続ける見通し
S&P500は8,000を目指す!2026年の米国株見通し
出所:S&P500ベースの時価総額加重平均EPSの実績と市場予想平均(Refinitiv集計)より作成

 注意すべきは、株式投資には常にリスク(リターンの変動)が伴うことです。

2026年も不定期に潜在リスクが顕在化するたびに株価が揺れ動く可能性を排除することはできません。2026年に警戒すべきリスク要因としては、


[1]トランプリスク:11月の中間選挙に向けてトランプ大統領が過激な言動や対外強硬姿勢を打ち出す可能性がある


[2]景気後退リスク:労働市場の鈍化が想定以上となる場面では「景気の軟着陸期待」が後退する可能性がある


[3]債券金利上昇リスク:予想を上回る物価高(インフレ再燃)に直面したり、財政収支悪化リスクの浮上で長期金利が反転上昇するとグロース株にとって逆風となる


[4]中国リスク:中国経済が不動産不況を起因とする構造的な供給過剰に陥りデフレ入りすると、中国向け事業に悪影響となる。米中貿易対立の再激化もリスク要因


[5]地政学リスク:中東情勢の悪化や台湾海峡での偶発的な緊張の高まり


 などが挙げられます。


 もちろん、上記したリスク要因以外にも「ブラックスワン」(思わず登場する「黒い白鳥」)に市場が驚き株価が下落する場面があるかもしれません。こうしたリスクが表面化するたびに株価指数はドローダウン(需給悪化に伴う直近高値からの下落)を余儀なくされ、そのタイミングや下落率を正確に予測することは不可能です。


 これまでと同様に2026年も、ドルコスト平均法を生かした時間分散(定時定額投資)と複利運用効果を最大化する積立投資を軸に、「押し目買い」(Buy the dips=株価下落局面を投資機会と捉える)を続ける姿勢こそが、長期的な資産形成に寄与していくとの基本原則に変わりはありません。


(香川 睦)

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