米グラフィック・パッケージングは紙パッケージの世界4位で飲料用では世界トップです。脱プラスチックの流れを追い風にM&Aとグローバル展開を進めており、10年間で当期純利益は7倍となりました。

今後も高水準の利益継続が見込まれますが、株価は直近期の小幅減益に大きく反応して下落しており割安感があるため、買い推奨とします。


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著者の西 勇太郎が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 米グラフィック・パッケージングに割安感:10年で利益7倍も株価大幅下落 」


高い技術力に裏打ちされた高収益性を武器に積極的な買収戦略を展開

  グラフィック・パッケージング・ホールディングス(GPK NYSE) (株価16.18ドル、時価総額47億7,500万ドル:11月28日終値)は紙パッケージ市場で世界4位であり、飲料用に限れば世界トップの企業です。食品用紙パッケージ大手のGraphic Packaging Corporationと飲料用紙パッケージ大手のRiverwood Internationalが統合して2003年に設立され、2007年に上場しました。


 Graphic Packaging Corporationの主力製品は食品用折り箱で、高品質印刷、特殊ラミネーション、冷凍食品や油分を含む食品に耐えるパッケージ技術に強みを有していました。他方、Riverwood Internationalの主力製品は飲料用キャリアパックでした。


 漂白しないため紙繊維の分断がなく強度を維持しながらも、特殊コーティングによって高品質印刷を実現するとともに耐油性・耐水性を付加するという画期的な技術を有し、飲料用キャリアをプラスチックから紙に置き換えるというパラダイムシフトを起こしました。


<グラフィック・パッケージングの紙製飲料用キャリアパック>
米グラフィック・パッケージングに割安感:10年で利益7倍も株価大幅下落(西 勇太郎)
出所:グラフィック・パッケージング資料

米グラフィック・パッケージングに割安感:10年で利益7倍も株価大幅下落(西 勇太郎)
出所:グラフィック・パッケージング資料

 2社の優れた技術力は統合後のグラフィック・パッケージングの高い利益率そして潤沢な買収資金に結実しており、同社は脱プラスチックの流れを追い風に、積極的な買収戦略を展開しています。2012年には北米市場で食品折り箱事業を行うAltivity Packagingを買収。


 さらに2014年にはグローバル展開するMeadWestvacoの食品・飲料用折り箱事業を買収し、世界的な事業ポートフォリオを構築しました。2017年には米 インターナショナル・ペーパー(IP NYSE) の消費者包装事業を買収して北米での事業規模を拡大。

2021年にはスウェーデンのAR Packagingを買収し、欧州市場に本格進出しました。


<グラフィック・パッケージング製品の対象市場売上高構成比と主要顧客>
米グラフィック・パッケージングに割安感:10年で利益7倍も株価大幅下落(西 勇太郎)
出所:グラフィック・パッケージング資料

10年間で利益7倍も株価は下落

 グラフィック・パッケージングの2014年12月期の売上高は42億4,100万ドルでしたが2024年12月期には88億700万ドルと2.1倍に増加しました。


 他方、当期純利益については売上高の増加率を上回る増加を示しており、2014年12月期の9,000万ドルから2024年12月期には6億5,800万ドルへと7倍になりました。これは、積極的な買収や合併(M&A)実行、環境対応型製品の需要増加、グローバル展開の強化などによるものです。


 なお、2022年12月期に当期純利益が前期比で急増しているのは、2021年11月に買収したAR Packagingの買収効果が通期に反映されたことによるものです。


 また、2024年12月期は前期比で減収減益となりましたが、これは、収益性低下が続く化粧品・医薬品向け高級パッケージ用漂白紙板事業からの撤退に伴い、ジョージア州オーガスタ工場を売却したことなどによるものです。同要因がありながらも、当期純利益は高水準を維持しました。


<グラフィック・パッケージングの当期純利益推移(2014年12月期以降)>
米グラフィック・パッケージングに割安感:10年で利益7倍も株価大幅下落(西 勇太郎)
※2025年は予想値出所:グラフィック・パッケージング資料等より楽天証券経済研究所が作成

 他方、株価については利益拡大に伴って上昇していましたが、2025年に入って大きく落ち込んでいます。2024年12月期の減収減益などが要因と考えられますが、株価水準自体は当期純利益が2024年12月期の4分の1に過ぎなかった2020年12月期の水準にまで落ち込んでいます。


<グラフィック・パッケージングの株価推移(2014年12月期以降)>
米グラフィック・パッケージングに割安感:10年で利益7倍も株価大幅下落(西 勇太郎)
※2025年は直近値出所:グラフィック・パッケージング資料等より楽天証券経済研究所が作成

PBRが過去平均水準に回復すれば株価は33ドル

 過去10年間の変化で見ると、売上高が2.1倍に増加したのに対して営業利益は2.6倍、当期純利益率も7.3倍と増加ペースが売上高を上回っており、利益率上昇を伴いながらの事業拡大が実現できたことが分かります。これはM&Aを通じたスケールメリットや高付加価値の環境対応製品導入などによるものです。


 株主資本蓄積も順調に進んで3.0倍に達している中、時価総額変化率は1.1倍にとどまっています。結果的にPBRは4.4倍から1.6倍へと低下しており、割安感がある状況です。この割安感が解消され、PBRが過去10年間の平均水準である3.0倍にまで上昇した場合には、株価は33ドルとなります。


<グラフィック・パッケージングの業績推移(2014年12月期と2024年12月期)> (百万ドル) 2014年12月期 2024年12月期 変化(倍) 売上高 4,241 8,807 2.1 売上総利益 787 1,962 2.5 営業利益 425 1,124 2.6 当期純利益 90 658 7.3 株主資本等合計 1,012 3,012 3.0 時価総額 4,454 4,775 1.1 PBR(倍) 4.4 1.6 0.4 PER(倍) 50 7 0.1 ※時価総額は、2014年12月期は期末時点値、2024年12月期は直近値
出所:グラフィック・パッケージングの資料等より楽天証券経済研究所が作成

 ちなみにセグメント別では、欧州板紙パッケージング事業が売上高で3.2倍、営業利益で3.7倍と最も大きく伸びました。これは、2021年にスウェーデンのAR Packagingを買収したことによるものです。また、米州板紙パッケージング事業についても複数のM&Aを行ったことにより、売上高2.0倍、営業利益2.6倍と大きく伸びました。


<グラフィック・パッケージングのセグメント別業績推移(2014年12月期と2024年12月期)>   (百万ドル) 2014年12月期 2024年12月期 変化(倍)   売上高 4,241 8,807 2.1 米州板紙パッケージング 3,007 6,101 2.0 欧州板紙パッケージング 597 1,893 3.2 板紙製造 381 655 1.7 営業利益 425 1,124 2.6 米州板紙パッケージング 412 1,072 2.6 欧州板紙パッケージング 33 122 3.7 板紙製造 9 ▲60 ▲6.7 営業利益率 10% 14% 1.3 米州板紙パッケージング 14% 18% 1.3 欧州板紙パッケージング 6% 6% 1.2 板紙製造 2% ▲9% ▲3.9 出所:グラフィック・パッケージングの資料等より楽天証券経済研究所が作成

 今後については、2025年12月期、2026年12月期の市場予想ともに2024年12月期比で減収減益の見通しとなっております。これは、インフレによる包装需要の減少を反映したものです。


 減益とはいっても当期純利益は500百万ドル台を維持する見通しとなっており、株主資本の蓄積は着実に進むことが見込まれています。株価水準がこのまま変わらなければ、2026年12月期にはPBRが1.4倍にまで低下してしまう計算になります。


<グラフィック・パッケージングの業績予想> (百万ドル) 2024年12月期
 実績 2025年12月期
予想 2026年12月期
予想 売上高 8,807 8,561 8,597 営業利益 1,124 - - 当期純利益 658 579 555 株主資本等合計 3,012 3,325 3,418 時価総額 4,849 4,849 4,849 PBR(倍) 1.6 1.5 1.4 PER(倍) 7 8 9 ※時価総額は直近値
出所:グラフィック・パッケージング、FactSetの資料等より楽天証券経済研究所が作成

板紙・紙包装資材同業他社比でPBRに割安感があり、解消されれば株価は33ドル

 グラフィック・パッケージングの比較対象に適する板紙・紙包装資材の上場同業他社には、米 スマーフィット・ウェストロック(SW NYSE) 、米インターナショナル・ペーパー(IP NYSE)、 王子ホールディングス(3861 東京) 、中国の ナインドラゴンズ・ペーパー(02689 香港) 、米 パッケージング・コーポレーション・オブ・アメリカ(PKG NYSE) 、 日本製紙(3863 東京) 、 レンゴー(3941 東京) 、米 ソノコ・プロダクツ(SON NYSE) などがあります。


 これらの企業について、自己資本利益率(ROE)を横軸、株価純資産倍率(PBR)を縦軸とした散布図を作成すると、おおむね比例関係にあることが分かります。その中で、グラフィック・パッケージングについては割安方向にずれており、この点から、株価に割安感があると言えます。


 この割安感が解消された場合のグラフィック・パッケージングのPBR(下図の青破線に乗る水準)は3.0であり、相当する株価は33ドルです。


<主な板紙・紙包装資材企業のROEとPBRの関係>
米グラフィック・パッケージングに割安感:10年で利益7倍も株価大幅下落(西 勇太郎)
出所:各社資料より楽天証券経済研究所が作成

<主な板紙・紙包装資材企業10社のROEとPBR> 社名 証券
コード 取引所 売上高
百万ドル ROE
% PBR
倍 Smurfit
WestRock SW NYSE 21,109 3 1.1 International
Paper IP NYSE 18,619 7 2.6 王子
ホールディングス 3861 東京 12,129 4 0.7 Graphic Packaging
HD
GPK NYSE 8,807 23 1.6 Nine Dragons
Paper 02689 香港 8,764 2 0.5 Packaging Corp of
America PKG NYSE 8,383 19 4.2 日本製紙 3863 東京 7,755 1 0.3 レンゴー 3941 東京 6,514 7 0.6 Sonoco
Products SON NYSE 5,305 7 1.8 Huhtamäki HUH1V ヘルシンキ 4,466 12 1.5 出所:各社資料より楽天証券経済研究所が作成

 また、これらの企業の予想配当利回りを比較すると、グラフィック・パッケージングは2.7%の利回り(一株当たり配当0.44ドルで計算)となっており同業他社比でそん色ない水準です。

また、2024年度には自社株買いを行っており、総還元性向は6.2%と王子ホールディングスに次ぐレベルでした。


<主な板紙・紙包装資材企業10社の配当および総還元利回り> 社名 証券
コード 取引所 2024年度
実績配当
% 2025年度
総還元
% 2025年度
予想配当
% Smurfit
WestRock SW NYSE 5 5.1 4.6 International
Paper IP NYSE 4.2 4.3 4.2 王子
ホールディングス 3861 東京 3.1 6.5 3.8 Graphic Packaging
HD
GPK NYSE 2.5 6.2 2.7 Nine Dragons
Paper 02689 香港 0.0 0.0 0.0 Packaging Corp of
America PKG NYSE 2.5 2.7 2.5 日本製紙 3863 東京 0.9 0.9 1.3 レンゴー 3941 東京 3.2 3.2 3.2 Sonoco
Products SON NYSE 5.1 5.3 5.2 Huhtamäki HUH1V ヘルシンキ 3.7 3.7 3.9 出所: 各社資料等より楽天証券経済研究所が作成

 ここまで述べさせていただいた通り、グラフィック・パッケージングは今後も高水準収益継続が見込まれる中で、株価は過去実績比、同業他社比で割安感があるため、投資判断を「買い推奨」と致します。


(西 勇太郎)

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