そろそろ2026年が始まろうとしています。コモディティ相場を見通すためには、この年が単体で存在しているのではなく「数十年単位の大きな流れの一幕」だと考える必要があります。
※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の吉田 哲が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 【必見】2026年のコモディティ相場を見通すための大前提 」
世界人口の7割以上が非民主国家に住む
多数の側面から民主主義の状態を数値化する取り組みをしているスウェーデンのV-Dem研究所が公表している「自由民主主義指数」に注目します。
同指数は、法整備、裁判制度、言論の自由など、民主主義に関わる多数の情報を数値化したもので、0と1の間で決定し、1に接近すればするほど自由で民主的な度合いが高いことを、0に接近すればするほど、その国が自由で民主的な度合いが低いことを意味します。
以下の図は、その自由民主主義指数の2024年時点の状況を示しています。青が濃ければ濃いほど1に接近します。青が薄ければ薄いほど0に接近します。図が示すとおり、自由で民主的な度合いが高い国と低い国の間に分断が生じていることが分かります。
図:自由民主主義指数(2024年)
人口のシェアで見てみると、分断がより深刻であることが分かります。同指数が0.6以上の自由で民主的な度合いが高い国に住んでいる人口のシェアは約17%です。一方同指数が0.4以下の自由で民主的な度合いが低い国に住んでいる人口のシェアは約77%です。
また以下の図は、同指数の推移です。1902年から2024年までの120年間以上の推移を確認することができます。第1次世界大戦が終わった1918年ごろから数年間、同指数が上昇したことが分かります。国際連盟が発足し、世界が自由で民主的なムードを強めたタイミングでした。
第2次世界大戦が終わった1945年からしばらくの間、そして冷戦が終結し民主化の潮流が目立った1970年代後半から1990年代後半まで、やはり同指数は上昇しました。逆に第2次世界大戦や冷戦の期間は、下落しました。また、新興国の台頭が目立った2000年代前半は、上昇が止まりました。
このように考えると、世界の自由民主主義指数は世界全体の自由度や民主度の大きさをおおむね適切に表していると言えます。その自由民主主義指数が今、かつてないスピードで低下しています。2010年ごろをきっかけとし、急低下しています。
図:世界の自由民主主義指数(人口加重平均)
このおよそ15年間、世界全体の自由度や民主度は低下してきました。
民主主義後退は2010年ごろから先進国で開始
ここから、自由民主主義指数の推移を一歩踏み込んで、確認します。以下の図は、自由で民主的な度合いの高い国の数と、低い国の数の推移を示しています。自由で民主的な度合いの高い国の数が、2010年ごろから、減少し始めたことが分かります。
図:自由で民主的な度合が高い国と低い国の数(自由民主主義指数ベース)
また自由で民主的な度合いの低い国の数が2020年ごろに、増加に転じたことが分かります。第2次世界大戦が終わったタイミングから、長期視点で減少傾向にありましたが、2020年をきっかけに本格的に増加する兆しが見え始めました。
つまり、この15年間続いている世界全体の同指数の急低下は、2010年ごろから始まった自由で民主的な度合いの高い国の数の減少を主因とし、2020年から始まった自由で民主的な度合いの低い国の数の増加によって拍車がかかり、続いていると言えます。
世界全体の自由民主主義指数の低下や、その要因である自由で民主的な度合いの高い国の数の減少および低い国の数の増加は、世界全体が2010年ごろ以降、自由さと民主的な傾向を失い始めたことを示唆しています。
自由さと民主的な傾向が失われることによって、秩序が損なわれます。法にのっとり、自由闊達に議論をし、時間をかけてお互いを認め合い、熟慮の上、妥協点を見いだす民主的な活動が損なわれれば、世界は秩序を失います。
多くの場合、秩序は法の支配によってもたらされています。自由さと民主的な傾向が失われ、秩序が損なわれれば、法の支配は後退します。実際に、以下のとおり、V-dem研究所が公表している「法の支配指数」は、まさにあの2010年ごろから低下が始まり、2020年に低下に拍車がかかっていることを示しています。
図:世界の法の支配指数(人口加重平均)
2024年の法の支配指数は0.428でした。同指数は、自由民主主義指数と同様、0と1の間で決定します。1に接近すればするほど法の支配が及んでいることを、0に接近すればするほど法の支配が及んでいないことを示します。
2024年の水準は、0.5という中間の水準よりも低く、なおかつ1960年代半ばから1970年代前半にかけて発生した急落の時につけた水準よりも低いことが分かります。この頃は、アフリカやアジアで独立したばかりの国が多かったこと、冷戦期にあって一部の国がさらに権威的な傾向を強めたこと、アフリカで複数の内戦が発生した時期でした。
足元の法の支配が、こうした時期よりも弱いことを考えれば、2010年ごろ以降、世界は甚大な変化に見舞われ、現在もその傾向が続いていると考えなければならないでしょう。世界は今、民主主義後退・分断深化という見えないリスクに苛まれているのです。
国家の行動の動機は「法」から「権威」へ
V-Dem研究所の統計の中では、国家体制が四つに分類される場面があります。「自由度が高い民主主義」「選挙による民主主義」「選挙による権威主義」「閉鎖的な権威主義」です。以下の図は、自由度が高い民主主義に分類された国の数と、閉鎖的な権威主義に分類された国の数の推移を示しています。
図:自由度が高い民主主義に分類される国、閉鎖的な権威主義に分類される国の数
「自由度が高い民主主義」に分類された国の数は、あの2010年に急減し始めました。また、「閉鎖的な権威主義」に分類された国の数は第2次世界大戦後、低下傾向にありましたが、あの2020年に増加に転じました。
おおむね、自由民主主義指数の動向の箇所で確認した、自由で民主的な度合いが大きい国の数の減少が始まったタイミング、そして度合いが小さい国の数の増加が始まったタイミングと同じです。
注目すべきは、近年の傾向です。「自由度が高い民主主義」に分類された国の数の減少と、「閉鎖的な権威主義」に分類された国の数の増加が同時進行したため、「閉鎖的な権威主義」に分類された国の数の方が、多くなっています。
このことは、全体的に国家の行動の動機の柱が「法」から「権威」へと移り始めたことを示唆していると言えます。言い換えれば、秩序は「法」からではなく「権威」からもたらされやすくなった、ということです。
図:国家体制(民主主義・権威主義)の四分類
このおよそ15年間を振り返れば、思い当たるふしがいくつもあります。国家のリーダーや要人たちがさまざまな場面で「国際法にのっとって対応する」「ルールに従って粛々と進める」などと発言をしてきました。
つまりそれだけ、世界全体を網羅する民主主義から醸成された法やルールが順守されない場面が増えてきたということです。「国際連合の機能不全」という言葉を聞くようになって久しいのもうなずけます。
なぜ、国際的な法やルールが順守されない場面が増えたのでしょうか。なぜ国連は機能不全に陥ってしまったのでしょうか。なぜ「閉鎖的な権威主義」に分類された国の数が「自由度が高い民主主義」に分類された国の数よりも多くなってしまったのでしょうか。
リーマンショック後の対応が分断深化の一因
時は2008年にさかのぼります。この年、リーマンショックが発生しました。史上まれに見る規模のショックとなった同ショックの後、西側諸国は経済の回復を急ぎました。経済回復を急ぐ中で、西側諸国は新しい技術を一般化させたり、新しい考え方をいくつか提唱したりしました。
具体的には、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)や人工知能(AI)、環境・社会・企業統治(ESG)や多様性・公平性・包摂性(DEI)などです。確かにこうした新しい技術や考え方は社会を西側諸国が目指す方向に向かわせました。実際にこれが功を奏し、経済回復が進んだことも事実です。
図:世界の民主主義後退・分断深化を進めたリーマンショック後の西側・非西側の動き
しかし同時にSNSは世界中でデマ(ニセ情報)や、誹謗中傷の温床になり、AIは人類から思考を奪い、ESGとDEIはそれらを実行しようとしない個人や企業などを一方的に批判するキャンセルカルチャーのきっかけとなりました。
デマ、誹謗中傷、思考低下、キャンセルカルチャーは、いずれも、法にのっとり、自由闊達に議論をし、時間をかけてお互いを認め合い、熟慮の上、妥協点を見いだす民主主義と正反対を向いています。法の支配の低下の主因、世界分断の遠因と言っても言い過ぎではありません。
西側諸国は、こうした新しい技術や考え方がもたらすマイナス面に直面しただけでなく、急速に進めたESGのE(環境)への対策のため、既存産業へのマイナスの影響にも向き合わなければならなくなりました。民主主義の後退も、既存産業の縮小も、いわば西側諸国の自己矛盾だと言えます。
西側諸国が自己矛盾と向き合う中、非西側諸国はどんどんと勢力を拡大しました。
また、ESGのS(社会)への対策を進めると言えば、自国への政治的とみられる干渉を「内政干渉」と激しく反発するようになりました。新しい考え方を提唱した西側諸国が、後戻りできなくなったことを確認した上で、それらを逆手に取るようにして勢力を拡大させてきたと言えなくもありません。
2020年の新型コロナウイルスのパンデミックの際も、混乱に乗じて勢力拡大を図ったふしがあります。ウクライナ戦争勃発後は、西側諸国がインフレであえぐ中、「資源の武器利用」を進め、長期視点のインフレを継続させていると、考えられます。
非西側の産油国の集団であるOPECプラスの原油の減産も、中国のレアアースの輸出制限検討も、武器利用の側面があります。また、同戦争勃発後、西側諸国の多くがESGのS(社会)の観点から、戦争を勃発させたロシアからエネルギーや農産物、金属などの購入を控えるようになりました。この点もまた、西側諸国が後戻りできなくなっていることを逆手にとった資源の武器利用であると言えます。
以下のとおり、世界分断深化時の、資源を持つ非西側諸国の思惑は、シンプルです。「資源の武器利用」を行うことで、複数のメリットを享受できます。
図:世界分断深化時の、資源を持つ非西側諸国の思惑(イメージ)
資源の供給を絞ることで、西側諸国の経済活動を抑え込んだり、需給を引き締めて相場に上昇圧力をかけてインフレを長期化させたりすることができます。分断深化時の西側への攻撃手段としては、大変に強力だと言えます。
リーマンショックから現在に至るまで、西側諸国の対応、それに乗じた非西側諸国の対応が何重にも重なり、それらが複雑に影響し合ってきました。
西側諸国がもたらした新しい技術は人類の生活インフラと化し、もはや取り除くことは不可能です。提唱した新しい考え方も、莫大(ばくだい)な資金を用いて設備投資・啓蒙を行っているため、なかったことにはできません。非西側諸国には、戦争を勃発させたり悪化させたりしている国さえあります。
お互い、もう後には引けないのだと思います。だからお互い、先に進むしかないのかもしれません。このことは、すでに世界の民主主義後退・分断深化が常態化する場面に入っていることを暗示していると言えます。
2026年は数十年単位の大きな流れの一幕
2026年は、2010年ごろから目立ち始めた世界の民主主義後退・分断深化の流れが継続する1年になると、筆者は考えています。西側の自己矛盾も非西側の資源の武器利用も、継続する(せざるを得ない)と考えているためです。
以下のように、2026年を単体で見れば、米国の中間選挙(11月)、利下げ動向(通年)、ウクライナ戦争の動向(通年)、中東情勢の動向(通年)、OPECプラスの原油の減産(年の半ばと終わりに協調減産の方針を決定する会合あり)、AI・半導体関連資源の供給(通年)、複数の世界的なスポーツの大会(2月に冬季オリンピック、6、7月にサッカーワールドカップ)などのイベントがあります。
さまざまな意味で、これらのイベントが各種コモディティ(国際商品)相場に影響を及ぼすことが想定されます。
図:2026年の位置付け
とはいえ、これらはあくまで2026年単体のイベントです。冒頭で述べたとおり、2026年は単体で存在しているのではなく「数十年単位の大きな流れの一幕」だと考える必要があると、筆者は考えています。こうした大前提は各種コモディティ(国際商品)を用いた長期資産形成を行う上で、大いに役立ちます。
2026年も日々、さまざまな値動きが生じることが想定されますが、そうした細かい上下が、「数十年単位の大きな流れの一幕」の上で起きているのだと考えることで、大局観を見失わずに済むでしょう。
2026年も西側諸国の自己矛盾の拡大と非西側諸国の資源の武器利用はこれまで通り続き、以下の経路を通じて、原油価格と金属価格の高止まり、食品価格の底上の同時進行、ひいては長期視点の高インフレを継続させると考えています。
西側諸国の自己矛盾の拡大と非西側の資源の武器利用は、長期視点の高インフレだけでなく、中央銀行の購入を促して金(ゴールド)価格を高止まりさせる要因にもなり得ます。
図:2010年ごろ以降の世界分断と高インフレ(長期視点)の背景
こうした大前提を踏まえた上で、次週以降、金(ゴールド)、プラチナ、原油などの具体的なコモディティ銘柄の2026年の見通しを書きたいと思います。
[参考]コモディティ全般関連の投資商品例
投資信託
SMTAMコモディティ・オープン (NISA成長投資枠活用可)
ダイワ/「RICI(R)」コモディティ・ファンド
iシェアーズ コモディティ インデックス・ファンド
eMAXISプラス コモディティ インデックス
DWSコモディティ戦略ファンド(年1回決算型)Aコース(為替ヘッジあり)
DWSコモディティ戦略ファンド(年1回決算型)Bコース(為替ヘッジなし)
海外ETF/ETN
Direxion オースピス・ブロード・コモディティ戦略 ETF(COM)
iPathブルームバーグ・コモディティ指数トータルリターンETN(DJP)
ファーストトラスト グローバル タクティカル コモディティ戦略ファンド(FTGC)
(吉田 哲)

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