2024年から大幅に使いやすくなったNISAですが、2026年でもう3年目に入ります。もし制度開始から投資していたら、現在はどのような運用成績になっていたのでしょうか。
全世界株式インデックスファンドへの投資、四つの戦略
2024年にリニューアルされたNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)は2026年には3年目に入ります。仮定の話にはなりますが、2024年の年初からNISAで投資をしていたらどのような運用結果になっていたか確認してみます。
NISAではさまざまな投資対象商品がありますが、今回はいわゆるオルカンなどの全世界株式インデックス(MSCI ACWI(オール・カントリー・ワールド・インデックス))に連動するインデックスファンドに投資した場合で試算します。
2024年1月から2025年11月までの全世界株式インデックス(MSCI ACWI)のデータ(月次)をもとに、NISA口座で年間60万円を投資する前提とします。
投資戦略は下記4パターンです。
- 各年の年初に60万円全額を一括で投資する「年初一括投資」
- 毎月5万円の「積立投資」
- 各年の最高値で全額60万円を一括投資する「最高値一括投資」
- 各年の最安値で全額60万円を一括投資する「最安値一括投資」
後半二つの「最高値一括投資」「最安値一括投資」は、マーケットの動きを事前に予測することはできないため、現実的には不可能な戦略ですが、参考として計算しています。
まず、2024年1月以降の全世界株式インデックス(MSCI ACWI)の推移(月次)は次のようになります。
2024年1月以降の全世界株式インデックス(MSCI ACWI 配当込み 円建て)の推移(月次)
2025年の年初から4月にかけてなど、一部下落局面も含まれていますが、おおむね右肩上がりのマーケットだったといえるでしょう。グラフでは2024年、2025年のそれぞれについて年初一括、最高値一括、最安値一括のタイミングを示しています。
新NISA 3年目、もし1年目から始めていたら?
これら四つの戦略での投資元本合計は120万円(積立投資のみ2025年12月の投資が未実行なので115万円)となります。
結果は次のグラフの通りです。2025年11月末時点の評価額は、
- 最安値一括投資:171万円
- 年初一括投資:162万円
- 積立投資が:148万円(評価額143万円+未実行分5万円)、
- 最高値一括投資:132万円
となりました(なお、投資未実行分の資金について金利は付与されないと仮定しています)。
四つの戦略について損益状況とともに評価額をまとめると、次の表のようになります。
NISAでの四つの戦略による投資結果の比較
一年のうちで最も安い価格で投資できれば最も成績はよくなるわけですが、現実的には不可能です。長期的には右肩上がりであることを期待して、少しでも投資期間を長くしたい場合には年初一括投資が、投資タイミングのリスクをできるだけ抑えて、時間分散していきたいという場合は積立投資が現実的な選択肢となります。
今回の2024年1月以降のようなおおむね右肩上がりのマーケット環境では、年初一括投資の方が利益は大きくなります。しかし、現実的には手元にまとまったお金がない、毎月の収入の中から投資していきたいということであれば、積立投資が現実的な選択肢となるでしょう。
ただし、この年初一括か、12カ月に分けての積立投資か、については長期的にはそれほど大きな差は生まれません。その後も5年、10年、20年と長期保有を継続していけば、この購入価格の差による影響は徐々に薄まっていきますので、資産形成が目的ならば特に気にする必要はないと考えています。詳しくは、過去のレポートでご説明していますので、併せてご覧いただけたらと思います。
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ちなみに、今回の場合、最も相場観が悪く最高値一括投資をしていたとしても、2年弱で12万円ほどの含み益が出ています。
年間60万円を老後に向けて積立投資もしくは一括投資していくと?
このままNISAで、年間60万円のペースで投資を20年間継続していくと、将来的にはどのくらいの金額になるのでしょうか。毎月5万円の積立投資をしていく場合と、年初一括60万円の投資をしていく場合について比較してみます。
投資対象は全世界株式インデックスファンドをイメージしつつ、利回りは0%、3%、5%、7%の4パターンで計算します。
まず積立投資の場合は次のようになります。
例1:毎月5万円の積立投資をした場合
この試算では確定利回りとして計算していますので、実際には途中で上がったり、下がったり、価格変動していくわけですが、利回り水準として、3%、5%、7%のそれぞれだったら、いくらぐらいになるのか、ということでご理解いただければと思います。
途中の5年後、10年後の時点も含めて、各時点における評価額と含み益は次のようになります。
投資期間が短いうちは利回りによる差がそれほど大きくは感じられないかもしれませんが、10年、20年と長期になるほど、その差は急速に拡大していく様子が確認できるかと思います。
次に、年初一括投資をした場合の結果です。毎年1月に60万円の一括投資をしていく形になりますので、グラフが階段状になっています。
例2:毎年年初に一括で60万円の投資をした場合
結果は積立投資の場合とほぼ同様ですが、一年で投資する60万円を12カ月にわたり分割して投資していくか、年初にまとめてやるか、という違いにより、年初一括投資の方が、各時点での評価額は大きくなっています。
実際のマーケットはこのように単調に上昇していくわけではありませんから、○○ショックのようなものが何度か発生し、波乱含みの展開になることも想定されます。しかし、長期的には株式へ投資していけば、一定のリターンが期待できることは間違いありません。
日々の生活やライフイベントで使うお金、何かあった時の生活防衛資金などはしっかりと確保しつつ、当面使わない予定のお金については、長期的な投資に回していくことが資産形成としては大切だと考えています。その際は利益に対して非課税となるNISAを優先的に活用していただければと思います。
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