師走に入り、中国経済を巡る議論が活発化しています。12月8日、最高意思決定機関の中国共産党中央政治局が2026年の経済政策を審議しました。
※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の加藤 嘉一が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 習近平氏が2026年の経済政策を審議。「日中対立」の影響は? 」
中国にとって師走は経済情勢・政策を語る時期
中国の最高意思決定機関である中央政治局(委員は24人、うち常務委員が7人で「チャイナセブン」と呼ばれることもある)が12月8日の常務会議で2025年の経済情勢を振り返り、2026年の経済政策を審議しました。
中国共産党指導部の経済情勢・政策を巡る議論には一種の周期(サイクル)があります。毎年12月に「中央経済工作会議」という、中国にとって1年で最も重要な経済に焦点を当てた会議が開かれます。その場で、その年の経済情勢に関するレビュー(検証)がなされ、翌年に向けた経済政策の方向性や大枠が審議されます。
年越し、春節(旧正月)を経て、3月上旬にこちらも毎年開催される全国人民代表大会(全人代)の場で、国務院総理が「政府活動報告」(日本の「首相施政演説」に相当)を発表し、その年の経済成長率などの数値目標が発表されるという流れです。
この周期・流れに沿って言えば、12月は中国経済を見る上で非常に重要な時期であると言えます。そして、冒頭で提起した中央政治局常務会議がこの時期に2026年の経済政策を審議したという意味は重く、今月この後開催予定の「中央経済工作会議」に向けた前哨戦という位置づけが可能であると言えます。
中国共産党にとって、経済は治安と並んでガバナンス(統治)の要です。14億以上の人口を抱える中国において、経済政策で失敗し、雇用や物価が安定せず、人民が路頭に迷うようになれば、治安が悪化し、暴動が発生し、国家が「崩壊」の危機に陥るリスクすら否定できません。
中国共産党が自らの存在意義・価値を不断に保証していくために、経済は「一丁目一番地」と言っても過言ではないほどの重要性を内包しているのです。
2026年の経済政策の中身と方向性は?
中央政治局の会議の内容を見ていきましょう。
2025年は「第14次五カ年計画」のラストイヤーに相当します。会議は過去5年間について次のように振り返っています。
「過去の5年間、我々はあらゆるショックや課題に有効に対応した。我が国の経済、科学技術、国防といったハードパワーおよび文化、制度、外交といったソフトパワーが明らかに向上した」
ハードパワーとソフトパワーとして区分し、国力が向上したと総括している点は興味深いです。コロナ禍や米中対立などいろいろあったけれども、その中で国力を巡るあらゆる要素は着実に向上したというのが中国の自己認識ということでしょう。
会議の内容の中で私が注目したポイントをいくつか挙げてみます。
●国内経済政策と国際通商闘争をより良く統合すること
●従来以上に積極的で有為的なマクロ政策を実施すること
●内需を拡大し、供給を最適化すること
●「全国統一大市場」の建設を推進すること
●雇用、企業、市場、期待値を安定させること
●経済を巡る「質」を有効に向上させ、「量」を合理的に増加させること
●従来以上に積極的な財政政策と適度に緩和的な金融政策を継続的に実施すること
●マクロ経済ガバナンスの効果を着実に向上させること
●内需主導を堅持し、強大な国内市場を建設すること
●イノベーションによる成長を堅持し、新たな成長の原動力を育成すること
●経済のグリーントランスフォーメーションを全面的に推進すること
●国民生活を優先し、人民が果実を得られる仕事をすること
これらの項目を俯瞰(ふかん)して見ると、基本的には従来の経済政策を継承している現在地が見て取れます。
また、1番目の「国際通商闘争」というのは中国共産党的な用語ですが、要するに、米国のトランプ政権が発動した追加関税やレアアース、半導体を巡る協議の不確実性が、国内経済に与え得る影響やショックにきちんと対応していく、という意味合いでしょう。
さらに、会議が次のポイントを挙げているのも興味深いです。
●年末年始に向けて、国民生活の必需品の供給をしっかり保証すること
●企業への未払い金や農民工(農村からの出稼ぎ労働者)の報酬問題を解決すること
●安全な生産現場を責任持って確保し、深刻な事故の発生を断じて防ぐこと
年末年始という季節を念頭に、低所得層や社会の弱者と認識されている人々、お金に苦労している企業や国民を救出すること、および火災や倒壊といった重大な事故を未然に防ぐことといった内容が提起されました。
中国共産党指導部として、それらを適切に管理しないと、治安が極度に悪化し、社会が不安定化し、自らのガバナンスに深刻な影響が生じ得るという危機意識を露呈していると解釈できます。
「日中対立」の影響は?
直近の中国景気指標を見てみましょう。
中国政府の発表によれば、11月の輸出はドル建てで前年同月比5.9%増と、市場予想の3.8%増を上回りました。米国以外との貿易を多角的に増加させてきた経緯が一定程度功を奏していると言えます。また、1~11月の貿易黒字は前年同期比21%増の1兆758億ドル(約170兆円)で、統計をさかのぼれる2000年以降で初めて1兆ドルを超えました。
一方、11月の製造業購買担当者指数(PMI)は49.2%で、景況拡大・縮小の分かれ目となる50%を8カ月連続で下回っています。非製造業PMIは約3年ぶりに50%を割り込み、サービス業を含めた消費の低迷という悪循環から抜け出せていない現状を示していると言えます。
中国政府は2025年の経済成長率目標を5.0%前後と設定しています。
然る状況下、先週、先々週のレポートでテーマとして扱った「日中対立」の影響にも注目していくべきだと私は考えます。
11月以降、高市早苗首相の台湾関連の言動に中国が猛反発し、日中関係が荒れ始めて、1カ月以上が過ぎました。直近では、中国軍機の自衛隊機へのレーダー照射問題で、両国間の緊張度はさらに上がっていると言えます。中長期戦になるという前提で見ていくべきです。
一方、自国民の日本渡航を制限したり、水産品の輸入を禁止したり、日本とのヒト、モノ、カネの流れを制限しようとしている中国政府としても、あまりやりすぎると、景気の低迷に拍車をかける事態にもつながりかねません。
それは、日本との関係だけではなく、外国の企業や投資家、消費者たちの認識や判断にも影響するからです。レピュテーションリスクともいえるでしょう。中国政府による「対日制裁」の加減は、師走に入り議論が加速している中国経済の動向を見ていく上でも重要な指標になるでしょう。
(加藤 嘉一)

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