結婚、子ども、住宅の購入など何かと忙しいアラフォー世代は、iDeCoとどう向き合うべきでしょうか。今回は、理想の加入時期や、難問となる眼前のマネープランとの両立についてなど、アラフォー世代のiDeCoについて考えていきます。


アラフォー世代のiDeCo:「ゆとりある老後」へ向けたマネー...の画像はこちら >>

アラフォー世代のiDeCo加入について考える

 前回は20代から30代前半のiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)活用プランを考えてみましたが、今回は35歳からのアラフォー世代にスポットを当ててみます。


 35歳という年齢は、仕事において、若さだけでなく、深い知識や経験が求められるようになります。昇格・昇給のステップを踏んでいれば、収入面でも新卒の頃とは大きく差がつき始める時期でしょう。


 プライベートにおいては、結婚を意識していた人たちの多くが既婚者となったり、住宅の購入や子どもの誕生といった大きなライフイベントが相次ぐ時期でもあります。


 あるいは、シングルライフを楽しむ人たちが、おひとりさまの人生について、覚悟を決め始める時期でもあるでしょう。


 こうした何かと忙しいこのアラフォー世代は、iDeCoとどう関わっていけば良いのでしょうか?


 この時期こそiDeCoへの加入を積極的に考えたいタイミングです。


35歳でiDeCo加入できれば、月2万円でも大きく育つ

 2025年12月現在では、企業年金がない会社員なら月2.3万円、企業年金がある会社員は月2万円がiDeCoの上限額です(企業年金の掛金相当額が月3.5万円を超えた場合は、iDeCoの枠が減少する)。


 仮に、35歳から65歳まで30年間、月2万円の積立投資を続け、年4.0%の運用収益を確保したとします(口座管理手数料相当として毎月の積立額からは月171円を控除してあります)。


 最終的な受け取り額は約1,376万円となります。これに退職金・企業年金を加えたり、NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)でも少し積立投資を行っていれば、納得のいく老後資金となりそうです。


 しかし、iDeCoを始めるのが45歳からとなると、どうなるでしょうか。積立期間が20年に減ってしまう分、最終的な受け取り額は大きく減ってしまいます。


 他は同一条件として月2万円の積み立てをしても、受け取り額は約727万円となってしまいます。積立元本が3分の2に減り、運用期間が短くなることが大きく影響するのです。


 こうなってくると、退職金や企業年金を加えても、老後の準備額としては微妙なラインに下がってしまいます。


 アラフォー世代にとって、「遅くとも45歳までにスタートする」ことが課題となってきます。


月6.2万円、70歳まで積み立ての世界ではさらに資産を大きく増やせるチャンス

 もちろん、もし月6.2万円の枠をフル活用できれば、iDeCoの資産額は大きくふくらみます。45歳スタートであっても、いきなり月6.2万円の積立投資を20年間行ったとすれば、約2,268万円まで増やすことができます。


 この場合、掛金相当額の2割が所得税・住民税の軽減額と概算すれば、約297万円の税負担が浮き、かつ老後の資産もこれだけたまることになります。


 受取時に課税が若干生じたとしても、十分に満足いく資産額です(どんなに課税強化されても、入り口の2割ほどの税負担を超えることはないでしょう。またこの年代だと税負担率が3割になっている可能性も高く、非課税メリットも強くなります)。


 そして、そのまま70歳まで積み立てを継続できれば、70歳時点で約3,179万円まで増やすことも可能です。この場合、退職所得控除枠も5年分増え、5年分の追加掛金にも所得控除が適用されるため、お得度も増します。


 もし会社員夫婦でそれぞれ積み立てができるのであれば、非課税枠は倍増します。月6.2万円×2人分の月12.4万円をフル活用して資産形成に励むことも可能です。ただ、そこまでやると目の前の生活に支障が出てくるかもしれません。


 むしろ、「夫婦で6.2万円規模の積み立てを協力して頑張る」のように、無理のない範囲で考えてみるといいでしょう。


難問は、眼前のマネープランとの両立

 しかし、アラフォー世代には「iDeCoだけに集中できない」という難問があります。


 頭金を確保して住宅を購入し、住宅ローンの返済をスタートさせた場合、数十年にわたってそれが最優先の返済として続きます。ボーナス払いを多めに設定していると、ボーナス支給額が確定するまでヒヤヒヤすることもあります。


 お子さんがいる家庭では、成長するにつれて通塾費用や学費負担が大きくなります。可能なら早めに貯金して備えておきたいものの、中学から大学までの間は家計に重くのしかかるでしょう。


 これらの大きな出費と同時に、老後の積み立てを行うのはなかなか大変です。この場合は、無理に上限の「月6.2万円」は意識せず、現在の枠組みである「月2万円程度」を老後資産形成の目標としておくといいでしょう。


 例えば、毎月1万円を確保し、ボーナス時などに年間の残りの必要額を確保すれば、月2万円の積み立てになります(iDeCoにはボーナス月増額はないので注意)。


 また、iDeCoは「積み立ての減額」「積み立ての中断」が可能ですので、覚えておきましょう。積立額は1,000円単位で減らすことができ、月5,000円まで下げることができます。


 積み立てを一時的に中断することも可能ですが、できれば積み立てゼロは避けたいところ。月5,000円でも継続しつつ、他の負担が落ち着いてきたら、改めてiDeCoの積立額を増額してみるといいでしょう。


シングルライフを意識したら、iDeCo加入は必須

 アラフォー世代になると、「自分はこのまま、おひとりさまかな」と考えることが増えてくるかもしれません。生涯未婚率は男女平均で4人に1人の割合になってきましたから、これはごく一部の人の話題ではなく、多くの人の課題となってきます。


 おひとりさまの場合、夫婦の家計支出と比べて半分で済むわけではなく、3分の2くらいの費用がかかると意識しておく必要があるでしょう。


 一方で、年金だと国民年金と厚生年金を合わせたモデルケースでは、月16万円程度のため、少し物足りません。しっかり働いた会社員の場合でも月20万円超となりますが、これだけでは十分といえないでしょう。


 さらに、体の自由が利かなくなってきた時、介護サービスなどを頼るのであれば予算を多く確保しておく必要があります(配偶者や子に頼れない分、厚く備えておきたい)。老人ホームへの入居なども、最終的には費用負担の問題になります。


 こうした点を考えると、iDeCoの積極的な活用を考えたいものです。


 子どもの教育資金負担がない分(誕生から社会人になるまで、トータルで2,000万円以上、ケースによっては3,000万円かかることもある大きな出費がないと考えてみましょう)、その分は自分の老後資産形成に積極的に積み立てをしていきたいところです。


 おひとりさまであれば、月6.2万円の上限に近いiDeCoの積立投資をしておけると理想的でしょう。


すでにiDeCo加入済みという人は「積立増額」を意識

 アラフォー世代で、iDeCoにすでに加入済みという人は、そのまま積立投資を継続していきましょう。iDeCo最大のハードルである「加入手続き」がすでに完了していることは大きな強みです。


 最初に面倒だと感じて数年スタートが遅れると大きなマイナスになりますが、これはよくやってしまいがちな失敗です。その点では、一歩有利な立場にあります。


 すでに加入している方で、「とりあえずこのくらい…」と月1万円で始めた方は、年収が増えたタイミングで増額をしておくといいかもしれません。


 また、マイナポータル経由で、国民年金基金連合会に変更手続きをペーパーレスで行える「e-iDeCoサービス」がスタートしています。掛金の増額もここで行えますので活用してみてください。


 2027年1月から予定されているiDeCoの限度額引き上げにも対応していきましょう。手続きは2026年下半期にスタートすると思われますので、各金融機関からの案内をよく確認し、忘れずに手続きをしてください。
(※2027年1月から拠出がスタートする場合です。現状は予定であり確定していません)


 次回は「アラフィフ・アラ還」世代のiDeCoプランについてお話しします。


 iDeCo2.0の世界においては、「もうこの年でiDeCoに入るのは遅い」がなくなります。むしろ、50代あるいは60代でのiDeCo加入も有力な選択肢となってくるのです。


(山崎 俊輔)

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