50代で投資家デビューし、今では年間約140万円もの配当を得るシニアちゃん。YouTubeを通じて発信するのは、シニア世代だからこそ味わえる優待投資の楽しみ方だ。

「寂しくない投資」に行き着いたシニアちゃんの投資哲学とは?


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投資家シニアちゃんさまプロフィール

投資歴5年で配当140万円!50代で始める人生を豊かにする投資とは?優待投資家・シニアちゃんインタビュー[前編]
58歳。老後の不安を解消するために5年前に日本株投資を開始。いつの間にか趣味と実益を兼ねたライフワークへと成長し、現在の保有銘柄は約100銘柄、年間配当金(税引後)は約140万円を達成。自身の投資経験を包み隠さず発信するYouTubeチャンネルは、同年代の女性を中心にファンを増やし続けている。YouTube: シニアちゃんの株主優待Vlog (チャンネル登録者数4万人)

 


眠れない老後への不安、生前贈与を元手に投資家の道へ

トウシル:シニアちゃんさま(以下シニアちゃん)は株主優待と配当中心の投資生活をYouTubeで配信されています。「シニアちゃんの株主優待Vlog」のチャンネル登録者数は4万人を超える注目チャンネルですが、投資を始められたのは2020年。意外にも最近のことなのですね。


シニアちゃん:そうなんです。ちょうど5年前、2020年9月に最初の株を買いました。それまでは投資とは無縁、とまでは言いませんが、自分が投資に手を出すとは考えていなかったんです。


 実は父が投資をしており、実家に企業から封筒が届いたり、配当金のお知らせが来たりするのを日常生活の中で普通の情景として見ていました。気になって投資の話を聞こうとしたこともあるんですが、父からは「お前は絶対に株なんてするな。銀行に預けておくのが一番だぞ」ときつく言われてしまいました。


トウシル:ご自身は投資をしていたのに、ご自身のお嬢さんには止めていたんですね。


シニアちゃん:そうなんですよ(笑)。母に聞くところによると、父も長く投資をする中でリーマンショックなどの暴落局面で危ない思いをしたことがあったようです。娘にはそんな怖い思いをさせたくないという親心だったのかもしれません。


 一方で、はたから見ている私には、投資をしている父がどこか楽しそうだったんですよ。あれほどきつく私を止めるのに、父本人は決して投資をやめようとはしません。薄々とですが「きっと投資って面白い世界なんだろうな」と感じていました。


トウシル:止められるほど気になっちゃいますよね。実際に投資に一歩踏み出したきっかけは何だったのでしょうか?


シニアちゃん:デフレからインフレへと時代の空気感が変わってきたこと、そして何より切実だったのが老後の不安です。当時は「人生100年時代」や「長生きリスク」という言葉が盛んに言われ始めた頃でした。


 私、もともとすごく心配症なんです。性格的に臆病で。「このまま貯金を切り崩して生きていって、お金が減っていくことに私は耐えられるだろうか…」と考えると、夜も眠れないほど不安になることがありました。


 そんな時、父からの生前贈与でまとまった資金を譲り受けたんです。「この大切なお金を自分の将来の不安を消すために使わせてもらおう」と決心し、投資を始めることにしました。


トウシル:元手となる資金はどれくらいだったのですか?


シニアちゃん:当初は2,000万円くらいを投資用資金として銀行から楽天証券に移しました。

もちろん、いきなり全額を使ったわけではありません。まずは精神的な安定を図るために「この2,000万円は投資に使っていいお金」という枠を決めました。そうして迎えた2020年の9月、震えるような思いをしながら初めての注文を出しました。


好きだから応援したい。株式投資の始まりは3銘柄から

トウシル:当時はコロナ禍の真っただ中ですよね。初心者が投資を始めるにはなかなか不安な時期だったと思います。最初はどのような銘柄を選んだのでしょうか。


シニアちゃん:順番は忘れてしまいましたが、「 三越伊勢丹ホールディングス(3099) 」「 ANAホールディングス(9202) 」「 三井物産(8031) 」の3銘柄を100株ずつ購入しました。


 実は最初は外国株式のインデックス投資を始めようとしていたんです。一番安全で確実だといわれていたので、楽天証券さんで口座を開設するときのアンケートにもそう答えました。でも、なんだかワクワクしないんですよ(笑)。あんまり面白くなさそうだな、でも投資ってそういうものなのかな、と思っていました。


トウシル:お父さまは楽しそうだったのに…。


シニアちゃん:そんな時に、たまたまテレビで「月曜から夜ふかし」に桐谷広人さんが出演された回を拝見したんです。投資は「我慢するもの」「つらいもの」かもしれないと思っていたのに、桐谷さんは優待を使い切るために毎日自転車を漕いで、人生を謳歌(おうか)されていました。


 そのお姿が本当に楽しそうで。私もテレビを見ながら大笑いしちゃいました。こんなに楽しい投資ならやってみたい! と思い、優待株の世界に飛び込みました。あの日にたまたまテレビをつけなかったら、もしかしたら投資家になってなかったかもしれません。


トウシル:それで選んだのが、百貨店と航空会社、商社だったんですね。しかし、当時の株価やご時世を考えれば、やっぱり逆張りのような選択に見えますが…。


シニアちゃん:臆病だからこそ、そうしたんです。もし投資を始めてすぐに大暴落が来たら、初心者の私はきっと怖くなって辞めてしまうだろうと、自分で分かっていました。それなら、もし株価が下がっても「応援しているからいいや」「この企業が好きだから運命を共にしよう」と思える企業を買おうと決めました。


 三越伊勢丹は当時、1株550円くらい。デパートも休業していて「倒産するかも」なんてうわさもありましたが、5万5,000円で一生お買い物が10%引きになるなら、もし紙くずになっても「高いお買い物したな」で諦めがつくと思えました。


トウシル:まさに応援投資! ANAや三井物産も同じような理由で選んだのでしょうか?


シニアちゃん:三井物産は、あの投資の神様ウォーレン・バフェットさんが日本の商社株を買ったというニュースを見たのがきっかけです。当時は商社株も株価純資産倍率(PBR)1倍割れで、配当利回りも高かったので「投資の神様が買うなら安心かな」というミーハーな気持ちで購入しました(笑)。


 一番怖かったのはANAですね。ANAも応援の気持ちで購入した銘柄です。当時2,000円後半をうろうろしていたものの、飛行機も飛んでいないし、空港に人がいません。JAL(日本航空)と合併するんじゃないか、なんてうわさも流れていたので、とにかく不安でした。全然「運命を共にしよう」なんて思えませんでしたね(笑)。


 少し下がると「もっと下がるかも!」とパニックになって売り、また上がると「やっぱり欲しい」と買い直す…。いわゆる往復ビンタのようなことを3回くらい繰り返しました(笑)。3度目の正直で「今度こそ売らない」と決めて買って、それからは手放さずに5年間保有し続けています。


失敗から学んだ「守破離」。独自の銘柄選定ルールとは

トウシル:YouTubeのチャンネル「シニアちゃんの株主優待Vlog」を拝見するといつも楽しそうなお姿なので、最初から順調だったのかと思っていました。そうでもなかったんですね。


投資歴5年で配当140万円!50代で始める人生を豊かにする投資とは?優待投資家・シニアちゃんインタビュー[前編]
明るい声で淡々と楽しそうに今月の投資戦績や配当金について語る「シニアちゃんの株主優待Vlog」。高配当株にコツコツ投資してたら年間100万円の不労所得をゲットし、老後の不安が軽くなった。目標は高く年間240万円!年金プラス月20万円で「長生きリスク」の解消を目指す

シニアちゃん:全然です! もう失敗ばかりでした。値下がりが怖くて売ってしまったり、逆に高値づかみをしてしまったり。


  良品計画(7453) なんて買った途端に暴落しちゃったので、何度もナンピン(保有している通貨や株の価格が下がった際に、追加で購入して平均取得単価を下げる取引方法)しちゃったんです。でも、そうやって市場に居続けるうちに、だんだんと自分のスタイルが見えてきました。


トウシル:シニアちゃん流の投資術がどのように確立していったのか気になります!


シニアちゃん:最初は桐谷さんの本を熟読して「配当利回りと優待品の合計が4%以上ある銘柄」を選ぶという桐谷さんルールを忠実に守っていました。これが武道でいう「守」ですね。そうして続けていくうちに、だんだんと増配の力に気づき始めました。


 企業が増配をしてくれて、買った時の値段に対する利回りがどんどん上がっていきます。これに気づいてからは、現在の利回りだけでなく株主還元に対する姿勢を重視するようになりました。

このあたりが「破」ですかね。


トウシル:ついに桐谷師匠(笑)の教えから独立を始めたんですね。現在の「シニアちゃんルール」はどのような形になったのでしょう?


シニアちゃん:私が今、銘柄選びで大切にしているのは、以下の五つのポイントです。


[1]累進配当を宣言しているか
[2]高配当(3.5%以上目安)か
[3]大型株か
[4]株主優待があるか
[5]財務状況が良いか


 特に[1]の累進配当は重要視しています。過去の実績だけでなく、IRページや中期経営計画を読み込んで「減配しません」「利益が出たら還元します」と未来の約束をしてくれている企業が大好きです!


トウシル:未来を約束してくれる企業。すてきな表現ですね!


シニアちゃん:今は利回りが少し物足りなくても、この会社なら将来もっと増やしてくれるはず、と信じて買います。実際、メガバンクや5大商社などは今の株価で見ればそこそこの利回りですが、私の買値ベースだと利回り10%を超えている銘柄もあります。


「一緒に夢を見られるか」が、私が長く保有できる銘柄の条件になりました。これが私なりの「離」ですね。守破離*を通して、独自の投資スタイルを確立できたと思います。


**守破離(しゅはり)とは:物事を学ぶ過程で成長するべく三つのステップのこと
守(しゅ):基本を忠実に守り、師の教えを徹底的に模倣する段階。
破(は):学んだ内容を応用し、自分なりの工夫を加える段階。
離(り):型から離れ、自立した新たな境地を切り開く段階。 

シニアこそ個別株のつながりを。「寂しくない投資」を目指そう

トウシル:新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)が始まり、世の中は全世界株式(オール・カントリー)などのインデックス投資一色という雰囲気もあります。シニアちゃんは、インデックス投資についてはどうお考えですか?


シニアちゃん:若い人、私の息子や娘世代には「絶対にインデックスがいいよ。時間は味方だし、一番合理的だから」と勧めています。でも、私たち50代、60代のシニア世代にとっては、必ずしも正解ではないと思っているんです。


トウシル:年代によって投資戦略は変わりますよね。なぜシニア世代にはおすすめしないのでしょう?


シニアちゃん:理由は二つあります。一つは「時間が足りない」こと。「30年後に資産が倍になります!」と言われても、その時に自分が健康で、そのお金を使って遊べるかは分かりませんよね。


 もう一つは「取り崩しの恐怖」です。インデックス投資の出口戦略は一般的に、資産を取り崩して売却することになりますが、徐々に資産額が減っていくのを見るのは心配性の私には精神的に毒です。今は寿命も延びてるじゃないですか。80歳、90歳になってから「長生きして資産が尽きたらどうしよう」という不安と戦い続けるのは絶対つらいですよ。


トウシル:確かに、資産が目減りしていくストレスは相当なものでしょうね…。


シニアちゃん:その点、高配当株投資なら「金の卵を産むニワトリ」を持っているようなものなので、元本(ニワトリ)を売らずに、卵(配当金)だけを食べて生活できます。これなら資産が減る恐怖におびえることなく、入ってきたお金を気持ちよく使えます。それに、優待株って面白いんですよ。持ってるだけで幸せな気分になれるんです。


トウシル:持ってるだけで幸せ! お父さまが楽しそうだった理由を理解できたのではないでしょうか?


シニアちゃん:そうかもしれません。私、個別株投資には「孤独を癒やす力」があると思っているんです。私は今、子供も独立して独身で一人で暮らす「おひとりさま」ですが、個別株を持っていると、年に数回、企業からすてきなラブレター(決算報告書)とプレゼント(株主優待)が届きます。


 ポストを開けて、企業からの封筒がたくさん入っていると「私は社会とつながっているんだ」「企業の一員として経済を回しているんだ」という所属欲求が満たされるんです。


 この充実感は、インデックス投資では味わえません。退職して社会との接点が減ってしまうシニア世代にこそ「寂しくない個別株投資」をおすすめしたいんです。


トウシル:寂しくない投資。まさにシニアちゃんの優しさが詰まったキーワードですね。


シニアちゃん:ありがとうございます。もちろん、リスク管理は必要ですが、日本株なら為替リスクもありませんし、応援したい企業の株を持つことは精神衛生上も良いと思います。株価が下がっても配当は変わりませんし。それにね、私のVlogでもたくさんお伝えしていることなんですが、何といっても「株主優待」が楽しくて仕方ないんですよ。


 前編では、投資を始めたきっかけから、シニア世代ならではの「個別株投資の意義」まで、熱い思いを伺いました。後編では、シニアちゃんのポートフォリオを彩る具体的な優待銘柄や、ご自身のYouTube活動の裏話、そして気になる「出口戦略」についてお話を伺っていきます。


▼後編はこちら

心がときめく銘柄選びと「DIE WITH 1,000万円」の出口戦略とは?優待投資家・シニアちゃんインタビュー[後編]


(トウシル編集チーム)

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