年明けには確定申告シーズンがスタートします。株式投資に関連して申告が必要となるか、また事前の準備が必要となるかなど、直前で慌てることがないよう、早めに確認を進めましょう。


確定申告シーズン前に知っておくべき事前準備2点!の画像はこちら >>

事前準備その1:2025年の損益の状況の確認

 早いもので2025年もあと数日で終わりとなります。2025年の投資成果はいかがでしたでしょうか? 


 年明けには確定申告シーズンがスタートします。株式投資に関連して申告が必要となるか、また事前の準備が必要となるかなど、直前で慌てることがないよう、早めに確認を進めましょう。


 まず必要なことは、2025年の損益の状況の確認です。これは「譲渡所得」と「配当所得」の両方が必要です。


 譲渡所得は、特定口座であれば年明けに「特定口座年間取引報告書」が証券会社から発行されますので、これを確認します。


 配当所得は、配当金の受け取り方法を株式数比例配分方式(証券会社の口座で受け取る方法)にしている場合は、上述の特定口座年間取引報告書に記載されています。


 もし、それ以外の方法で配当金を受け取っている場合は、ご自身で配当金の金額や、源泉徴収税額を記録、まとめておく必要があります。銘柄数が多いとかなりの時間と労力を要することになるので、早めの準備をお勧めします。


事前準備その2:過年度の損益の状況および損失繰り越しの確認

 2022年、2023年、2024年に生じた譲渡損を繰り越している場合、2025年の譲渡益や配当金と損益通算するのであれば確定申告が必要です。


 また、2025年の譲渡益や配当金と損益通算した結果、まだ損失が残る場合も確定申告が必要です。


 なお、2022年に生じた譲渡損は、繰り越しができるのが2025年までのため、2025年中の利益との損益通算後も損失が残ってしまう場合は、残念ながら切り捨てとなります。


 損失の繰り越しと、損益通算を行う場合は原則確定申告が必要、と強く意識しておきましょう。


申告した方が有利かどうかは慎重な判断を

 事前準備その1で確認した結果、複数の証券会社に源泉徴収ありの特定口座があり、それぞれで譲渡益と譲渡損が生じているケースを想定します。この場合、両者を相殺して税額の還付を受けるためには、それぞれの特定口座内の譲渡益・譲渡損について確定申告が必要です。


 また、源泉徴収ありの特定口座内で譲渡損と配当金があり、証券会社がすでにそれらを損益通算している場合を除き、譲渡損と配当金を損益通算して税額の還付を受けるためには、双方について確定申告が必要となります。


 しかし、確定申告を行うことによって所得金額が増え、配偶者控除や扶養控除の対象外となる可能性もあります。また、国民健康保険に加入している方であれば、所得増加に伴い国民健康保険料などがアップし、節税効果を上回る負担となることもあるでしょう。


 確定申告が有利かどうかは、慎重な判断が求められるでしょう。


 なお、本年の譲渡損益・配当金を損益通算してもまだ譲渡損が残る場合や、2023年、2024年から繰り越している損失がまだ残っている場合も、確定申告を行わなければ翌年度以降に損失を繰り越すことはできません。この点については、繰り越さない方が有利ということはありません。


やり直しがきかないことも:還付申告でも慌てない

 税法にはルールがあり、それらを知らないと余計な税金を支払うことになりかねません。例えば配当金の課税方法には「源泉徴収のみで完結」「総合課税で確定申告」「申告分離課税で確定申告」の3種類から選択可能ですが、一度選択した方法を後から変更することはできません。


 例えば、医療費控除の還付があるため年明け早々に確定申告をしたが、この際に配当金については何も申告しなかったとします。しかし申告期日を過ぎてから見直した結果、配当金を総合課税で確定申告した方が有利だった、というケースがあり得ます。


 この場合、医療費控除の還付時に、配当金に関して「源泉徴収のみで完結」を自らの意思で選択したことになります。そのため、後日やり直し(更正の請求)をしようとしても認められず、結果として税金を納め過ぎてしまうことになります。


 特に還付申告の場合、年明けすぐに手続きが可能なため、急いで申告手続きを進めてしまう方も多いでしょう。しかし、株式投資関連の所得がある場合は、慌てず慎重に行うことを強くお勧めします。


 本年のコラムは今回が最後となります。本年も多くの個人投資家の皆さまにご覧いただきましたことに、心より感謝申し上げます。


 来年も、引き続きよろしくお願い申し上げます。


(足立 武志)

編集部おすすめ