12月19日の税制改正大綱により、未成年向けNISAの創設が決定。未成年投資の新制度が始まります。

新たな未成年向けNISAの概略や活用術などを紹介します。


「こどもNISA」の活用術:生前贈与、お小遣いを使った投資教...の画像はこちら >>

未成年向けNISA復活。ジュニアNISA廃止からの教訓

 12月19日に示された与党の「令和8年度税制改正大綱」で、未成年者向けのNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)創設が示されました。


 未成年者のNISA拡充については期待があったものの、現行制度をそのまま未成年に拡充するのは実現が難しいと思っていたため、今回のこどもNISAの創設にはちょっと驚きました。


※「こどもNISA」という名称は税制改正大綱では使われていませんが、報道で多く用いられた用語として、ここでは未成年向けの新しいNISA制度を「こどもNISA」と呼びます。


 未成年が利用するNISA口座と言えば、2023年末で制度が終了したジュニアNISAが記憶として新しいでしょう。ジュニアNISA終了後、新NISAでは未成年は対象外とされていました。


 ジュニアNISAが終了した理由としては、利用件数があまり多くなかったことが指摘されています。その背景には、解約要件が厳しいなど使い勝手が悪かったことにあると説明されています。


 それでは、今回認められる「こどもNISA」は、どのような仕組みとなったのでしょうか。


新たな「こどもNISA」の行方

 税制改正大綱によれば、概略は以下の通りです。


  • 非課税保有限度額は600万円まで(取得時価格で考える)
  • 年間投資可能額は60万円まで(月5万円相当)
  • 現行NISAのつみたて投資枠を活用する(定期積立投資が基本)
  • 12歳までは売却不可、12歳以降は条件付きで可能(中学受験に間に合わせる意図か)
  • 成人に達したら、通常のNISA口座に移行する

 金額ベースや解約要件でみると、ジュニアNISAよりは緩めの設定となっています。


 一方で、年60万円の枠組みでは、10年で上限の600万に達してしまいます。

誕生から18歳までは継続すると仮定すると、上限が1,080万円必要となるため、やや中途半端な印象も受けます。


一般的な想定は親よりも祖父母のお財布か

 ジュニアNISAの時と同様に、未成年者が本人の所得から入金をするケースは想定しにくいでしょう。考えられるのは、親ないし祖父母からの入金が想定されます。


 この「こどもNISA」の創設は、祖父母から孫への教育資金の一括贈与の非課税措置が終了するタイミングと重なっています。そのため、この非課税措置に代わってこどもNISAを活用する方法が考えられます。


(従来の教育資金生前贈与の特例は、信託銀行を活用するため、一般にはちょっとハードルが高いことも問題でした)


 贈与税の非課税枠は年110万円であるため、こどもNISAへの年間入金(60万円)だけで生前贈与をすれば、課税されません。また、一括入金はできませんが、最長10年間はお金を生前贈与する使い方ができます。


 一方で、満額(年間60万円)を出し続けられるような人にとっては、10年で上限に達するため、「もっと欲しい」と感じるかもしれません。ここは将来的な枠拡大に期待、というところでしょう。


 もし、祖父母の資産を孫に生前贈与し、学費などに用いるというのであれば、早めの利用開始がいいでしょう(例えば小学校の頃からスタートしておけば、高校や大学の学費負担には間に合います)。


こどもNISA活用術:お小遣いの一部をNISAに入金

 上限まで使い切るような生前贈与ではなく、もう一つ提案してみたいアプローチがあります。


 それは「親が原資を出す」ものの、それをお小遣いのようなイメージで「増やせたら、好きに使っていいお金」として子どもに運用を体験させる方法です。


 毎月数千円、多くても月1万円程度のお金を親が負担し、こどもNISA口座に定期入金をします。基本的には長期積立分散投資を軸に運用をしてもらいたいところです。

月1万円の積み立てであれば、誕生月から始めても18歳までに上限には達しません。


 中高生くらいになってきたら、本人の意思で運用指図をさせてもいいでしょう。ただし、12歳までの売却制限もあるため、頻繁な売買を意図した運用ではなく、本人の判断は定期購入する商品選択に限定しておくのがいいでしょう。


 また、12歳以上であっても、出金には制約をかけたほうがいいでしょう。例えば「大学に入ったら自由に使っていいが、もうお小遣いは出さないよ」といったルールを設けるといいかもしれません。


 仮に「(月2万円程度のお小遣い)×(大学の4年間)」を想定していたとします。これに近い元本100万円程度をこどもNISAに入金し、大学在学中は親からのお小遣いはなしとし、こどもNISAからの解約でやりくりさせるわけです。


 月1万円の積み立てで元本100万円をためるには8年4カ月かかるため、小学校の途中くらいから始めれば実現可能です。もし大学生になるまでに株価が上がっていれば、月2万円以上のお小遣いとなりますし、物価上昇分をカバーした格好にもなりそうです。


制度スタートは2027年か?続報に注目

「こどもNISA」の制度開始時期は、税制改正大綱では明記されていません。しかし、NISA口座は年単位で制度が回されているため、早ければ2027年1月からとなるでしょう。


 この場合、2026年の秋以降には、証券会社などから口座開設に関するアナウンスが行われると思います。


 システム的な対応の問題などで、2028年1月から開始、という可能性もありますが、できれば2027年スタートを目指していただきたいところです。


 それまでの期間、家族で以下の点を検討してみてください。


「こどもNISAを活用するかしないか」
「投資元本の出し手は誰か(親か祖父母か)」
「毎月いくらくらい積み立てるか」
「購入商品はどうするか」
「子にはどこまで関与させるか」


(山崎 俊輔)

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