東京株式市場は30日、大納会を迎えました。2025年の株式市場を、米国(S&P500)、中国(上海総合)と比べると、日本(TOPIX)の年間上昇率は22%と最も大きくなりました。
2025年TOPIX上昇率は22%、S&P500と上海総合を上回る
2025年の東証株価指数(TOPIX)、米国のS&P500種指数、中国の上海総合指数の年間上昇率を比べると、TOPIXは3,408.97と、年初来22%上昇しました。米S&P500は17%高(29日終値6,905.74)、上海総合は18%高(30日終値3,965.12)でした。
2025年主要株価指数の年間上昇率 指数 指数値 年間上昇率 日本・TOPIX 3,408.97 22% 米国・S&P500 6,905.74 17% 中国・上海総合 3,965.12 18% ※TOPIXと上海総合は30日終値、S&P500は29日終値
3指数はいずれも年間で2桁の上昇率となり、世界の株式市場は総じて堅調な1年となりました。
共通の追い風となったのは、AI・半導体関連銘柄の上昇でした。AI市場を独走するエヌビディアの時価総額は一時世界初の5兆ドルを超え、世界の投資マネーを呼び込みました。
「AIバブル」への警戒感が強まる局面はあったものの、年間を通じて相場の方向性を左右するテーマとなりました。日本でも、キオクシアホールディングス(285A 東京)やイビデン(4062 東京)など、関連銘柄が軒並み高値を更新しました。
もっとも、各市場特有の上昇要因もあります。日本株は株主還元の拡充や自己資本利益率(ROE)改善などが幅広い業種に波及。米国(S&P500)はインフレ鈍化や利下げ期待、AI半導体関連の大型株が指数を押し上げました。一方、中国(上海総合)では金融緩和やインフラ投資、不動産支援などの政策支援によって、特定テーマへの資金集中が目立ちました。
日・米・中2025年個別銘柄の上昇率:トップは米シダラ、10社中7社が中国企業
個別銘柄に目を凝らすと、どのような動きがあったのでしょうか。
日本、米国、中国の上場銘柄のうち、12月30日時点で時価総額が1兆円以上かつ上場期間が1年以上の銘柄1557社を対象に、年間の騰落率を算出しました。値上がりは全体の7割にあたる1,077社でした。
<日本、米国、中国2025年株価上昇率トップ10> 順位 社名 国 業種 上昇率
(%) 時価総額
(兆円) 1 Cidara Therapeutics 米国 バイオ 830 1.1 2 Guangdong Dtech Technology 中国 生産用機械 563 1.2 3 キオクシアホールディングス 日本 半導体 536 5.7 4 Victory Giant Technology 中国 電子回路基板 521 5.6 5 Shannon Semiconductor 中国 パワートレイン 422 1.6 6 Yuanjie Semiconductor 中国 半導体製造装置 390 1.2 7 EchoStar 米国 通信衛星運営 381 4.9 8 Eoptolink Technology 中国 通信機器 381 9.6 9 Dosilicon 中国 半導体 353 1.2 10 Zhongji Innolight 中国 半導体 352 14.9 ※12月30日時点で時価総額1兆円以上かつ上場後1年以上の企業が対象
株価上昇率トップ10をみると、1位は米国のシダラ・セラピューティクスだったものの、10社中7社を中国企業が占める結果となりました。中国勢は、半導体や電子回路基板などAI関連で幅広くランクインし、存在感を際立たせました。AIサーバーやデータセンター向け需要の拡大に加え、政策支援を背景にした設備投資が追い風となり、株価を大きく押し上げました。
2位の中国Guangdong Dtech Technology(301377 深セン)は、PCB(プリント基板)製造用機器メーカーです。スマホやPC、自動車、通信機器などあらゆる電子機器に必須なPCBを製造するためのドリル、カッター、砥石・研磨材などを製造しており、PCBドリルの生産量は世界トップクラスです。
4位のビクトリー・ジャイアント・テクノロジー(300476 深セン)は、2006年に設立。中国広東省に本社を置くプリント基板(PCB)の大手メーカーで、AIサーバーやデータセンター向けの高密度基板を中心に世界展開しています。
AIサーバー需要の急拡大による業績成長、海外工場建設による供給能力強化、香港IPO計画による資金調達期待、そしてエヌビディアなど大手顧客との関係強化などが株価を押し上げる材料となりました。
日本の上場企業では メイコー(6787 東京) 、 イビデン(4062 東京) 、 フジクラ(5803 東京) 、 京写(6837 東京) 、 日本シイエムケイ(6958 東京) などが競合しています。
上昇率トップは、バイオテクノロジー企業の米 シダラ・セラピューティクス(CDTX NASDAQ) 。
2025年11月に米医薬品大手 メルク(MRK NYSE) が10%の上乗せ幅(プレミアム)でシダラの買収を発表したことにより、株価が急騰しました。メルクは、シダラが開発中のインフルエンザ予防薬「CD388」の将来性を高く評価しました。
日本の上場企業では 塩野義製薬(4507 東京) がインフルエンザ薬で、 第一三共(4568 東京) が抗菌薬やワクチンで競合しています。
一方、日本は半導体大手・ キオクシアホールディングス(285A 東京) が3位に入りました。世界的に重要なNAND型フラッシュメモリのパイオニアであり、スマホ、PC、データセンター、AI、クラウドなど、あらゆるデジタル社会を支える基盤技術を提供しています。
AIインフラ需要の急速な拡大によってAIサーバーやデータセンター向けのSSD需要が急増したこと、NANDフラッシュの供給不足が発生して価格が上昇したことなどにより、株価が大きく上昇しました。
日本企業の2025年株価上昇率:トップはキオクシアHD
日本企業に絞って個別銘柄の騰落率をみると、2025年は株価上昇が幅広い業種に及んでいたことが分かります。
年末時点で時価総額が1兆円以上の銘柄198社のうち、約8割にあたる162社が値上がりしました。198社の時価総額合計は910兆円と、年間で173兆円増加しました。増加額173兆円の業種別内訳は、金額が多い順に、都市銀行21兆円、総合商社20兆円、システムインテグレーター13兆円でした。
<日本企業2025年株価上昇率トップ10> 順位 社名 業種 上昇率
(%) 時価総額
(兆円) 1 キオクシアホールディングス 半導体 536 5.7 2 三井金属 銅精錬・加工 278 1.0 3 イビデン 電子回路基板 182 1.9 4 フジクラ 電線・ケーブル 166 5.2 5 KOKUSAI ELECTRIC 半導体製造装置 156 1.3 6 きんでん 電気工事 124 1.4 7 大成建設 ゼネコン 123 2.4 8 住友電気工業 電線・ケーブル 122 5.0 9 関電工 電気工事 117 1.0 10 アドバンテスト 半導体製造装置 113 15.0 ※時価総額1兆円以上の企業が対象
個別銘柄の上昇率1位は前述の通り キオクシアホールディングス でした。
2位は非鉄金属メーカーの 三井金属(5706 東京) です。鉱山開発 → 製錬 → 電子材料 → 自動車部品へと事業分野を広げてきた企業で、スマホ・EV・半導体など、最先端分野を支える高機能素材の製造、亜鉛・鉛・銅・貴金属の精錬などを行っています。
世界の主要銅鉱山が自然災害や事故で相次いで操業停止し銅価格が高騰していること、AI・データセンター向け銅箔の需要が急増したことなどにより、株価が上昇しました。
3位は電子部品・セラミックスの世界的メーカー、 イビデン(4062 東京) です。岐阜県大垣市に本社を置き、ICパッケージ基板と自動車向けセラミックスで世界トップクラスの技術力を持つ企業として知られています。AI投資の拡大により、AIサーバー向けICパッケージ基板の需要が急拡大したため、株価が上昇しました。
(西 勇太郎)

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