1966年、日本における出生数が急減しました。60年に1度の丙午(ひのえうま)にまつわる「迷信」が社会にまん延したためです。
1966年と2026年は「丙午(ひのえうま)」
以下は、日本における出生数の推移です。1947~1949年の山が第1次ベビーブーム、1971~1974年の山が第2次ベビーブームです。2000年ごろから、長期視点の減少が続いています。
図:日本の出生数(1947~2024年) 単位:万人
グラフの中に、目立って減少している年があります。「丙午(ひのえうま)」と呼ばれた1966年です。この年は、前年より25%も出生数が減り、人口ピラミッドの形状に大きなくぼみをつくりました。
「丙午」は、十干(じっかん)・十二支(じゅうにし)で構成される暦において、60年に1度、訪れます。以下の通り、十干は「甲(コウ・きのえ)」から順に「癸(キ・みずのと)」までの10種類、十二支は「子(シ・ね)」から順に「亥(ガイ・い)」までの12種類あります。
図:十干・十二支と丙午(ひのえうま)
「十干・十二支」は、これらを順に一つずつ組み合わせ、10と12の最小公倍数である60種類を一つのサイクルとしています。この点は、「還暦(かんれき)」が60歳である理由です。
例えば、672年に勃発した天智天皇の後継をめぐって大海人皇子と大友皇子が戦った「壬申(じんしん)の乱」や、1868年に勃発した新政府を樹立した薩摩藩、長州藩、土佐藩などの新政府軍と、旧幕府軍などが戦った「戊辰(ぼしん)戦争」などの出来事の名称に、同暦上の年が冠されています。
ナラティブ(物語)が出生数急減の理由
なぜ、1966年に日本で出生数が急減したのでしょうか。諸説ありますが、以下のように、陰陽五行に基づく象徴的な連想や、文化的ナラティブ(物語)により迷信が強化されたことなどが、要因とされることがあります。
図:諸説あり:昭和の丙午(ひのえうま)に出生数が急減した背景
丙午の年に生まれた人は気性が荒いという言説や、それに基づいて出産を控えるという行為に、科学的根拠はありません。
とはいえ、今も昔も、日本には、以下のように多数の迷信や言説(都市伝説もその一つ)が存在します。いずれも、科学的根拠はなく、ナラティブ(物語)によって発生・強化された迷信・言説だといえます。
図:迷信・言説の例とそれらが生まれた背景(諸説あり)
ナラティブ(物語)によって発生・強化された迷信(科学的根拠のない言説)は、必ずしも悪いものではなく、文化の一部として楽しむ面もあります。
ただし、それを理由に極端な判断や誤解が生まれないよう、距離感を持って向き合うことが大切です(当然、筆者は2026年に日本の出生数が極端に減るとは考えていません)。
以下のように、ナラティブは迷信を支える重要な役割を果たしています。ナラティブが浸透すれば、科学的根拠がなくても社会的事象が起きることを示唆しています。
(1)因果を与える…思い込みや偶然に「理由」を付与する。
例:雨が降ったのは誰かの行いのせいだ → 神罰のナラティブ
(2)感情に訴える…合理性よりも「怖い、安心したい、特別」が信念を強くする。
例:お守り → 不安回避のナラティブ
(3)共同体の一体感をつくる…みんなが信じれば「文化」になる。
例:節分に豆をまく → 共同の除災ナラティブ
(4)行動を規範化する…大衆の行動の理由づけになる。
例:神社で二礼二拍手一礼をする → 伝統のナラティブ
ナラティブが支える言説と金(ゴールド)
筆者は、金(ゴールド)市場にも、ナラティブによって強化された言説が存在していると、考えています。「有事の金(ゴールド)」「インフレ時は金(ゴールド)」「株と金(ゴールド)は逆相関」などです。
図:金(ゴールド)市場におけるさまざま言説とナラティブ(一例)
この三つの言説は、1970年代後半から1990年代に起きた出来事をきっかけとしたナラティブによって強化されています。現在でも投資家を含む多くの市場関係者が、このように考え、この考えに基づいて行動しているようです。
しかし、時代が変われば、ナラティブを支える根拠も変わります。以前のレポートで述べたとおり、世界は2010年ごろから民主主義の後退・分断深化が進行し、大変革期を迎えていると考えています。
2025年12月9日: 【必見】2026年のコモディティ相場を見通すための大前提
こうした時代にあって、過去の出来事を基に生じたナラティブやそれを基にした言説が、実態と合わなくなっていることに、留意しなければなりません。
実際に、以下の図のとおり、戦争が起きて世界中に不安感が広がっても、米国でインフレが急伸しても、金(ゴールド)価格が下がったり、米国の主要な株価指数が史上最高値更新を含む急騰劇を演じた期間に、金(ゴールド)価格も史上最高値を更新したりするケースがあります。
図:大規模な有事勃発、インフレ急拡大、株価急騰時の金(ゴールド)価格の推移
2026年だからこそ「脱ナラティブ」を
2026年は、以下の図の右の図式が目立つと筆者は考えています。この点は、2025年に目立った「株高・金(ゴールド)高」の背景であり、米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げの方針を維持していれば、この図式は継続すると考えています。
ここでいう「利下げの方針を維持する」とは必ずしも利下げを実施することではなく、議論の方向性が、利下げを止める、あるいは利上げをする、という方向で「ない」状態を指します。
図:近年の米国株とドル建て金(ゴールド)の値動きの関係
近年の金(ゴールド)市場は、以下の七つのテーマに沿って分析をすることで、その精度を高めることができます。
短中期の分析であれば、(1)有事(伝統的)、(2)代替資産、(3)代替通貨の三つに注目します。長期資産形成になじむ中長期や超長期の分析の際は、(6)中央銀行(金保有量)と(7)有事(非伝統的)の二つに注目します。
一見、テーマがたくさんあるように感じるかもしれませんが、端的に言えば、短期投資は三つのみ、長期投資は二つのみで十分だと思います。
図:ドル建て金(ゴールド)に関わる七つのテーマ(2026年)
分かりやすいから、過去にそうだったから、など「過去のナラティブ」に頼った考え方では、近年の金(ゴールド)市場を分析することは困難です。
2026年という丙午(ひのえうま)のタイミングだからこそ、ナラティブが強化する迷信や言説に惑わされず、できるだけ、実態や理論に基づいて投資活動を続けていただけると、良いように思います。
筆者もこれまで以上に、近年の金(ゴールド)相場への考えを深めていきます。
[参考] 貴金属関連の具体的な投資商品例
長期:
純金積立(当社ではクレジットカード決済で購入可能)
純金積立・スポット購入
投資信託(当社ではクレジットカード決済、楽天ポイントで購入可能。以下はNISA成長投資枠対応)
三菱UFJ 純金ファンド
ピクテ・ゴールド(為替ヘッジあり)
ゴールド・ファンド(為替ヘッジあり)
中期:
関連ETF(NISA対応)
SPDRゴールド・シェア(1326)
NF金価格連動型上場投資信託(1328)
純金上場信託(金の果実)(1540)
NN金先物ダブルブルETN(2036)
NN金先物ベアETN(2037)
GXゴールド(425A)
SPDR ゴールド・ミニシェアーズ・トラスト(GLDM)
ヴァンエック・金鉱株ETF(GDX)
短期:
商品先物
国内商品先物
海外商品先物
CFD
金(ゴールド)、プラチナ、銀、パラジウム
(吉田 哲)

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