共英製鋼は粗鋼生産量国内5位(市場シェア2%)、電炉メーカーに限れば2位の企業です。1994年に日本の製鉄企業で初めてベトナムに進出したのを皮切りに米国・カナダにも進出し、2020年代に世界3極体制を確立。

当期純利益は直近10年で1.6倍になりましたが、PBRは0.5倍と低迷している上、同業他社比でも割安感がある状況です。


共英製鋼:10年で利益1.6倍・高配当も、PBR0.5倍で割...の画像はこちら >>

プロローグ

タローくん:共英製鋼ってどんな会社?
ユーちゃん:日本、ベトナム、北米の3極で展開する電炉メーカー。利益は10年で1.6倍、株価は割安のまま放置されてるよ。


タローくん:割安ってどれくらい?
ユーちゃん:直近だと、株価純資産倍率(PBR)が0.5倍で株価が2,462円。PBRが過去水準に戻れば株価は3,200円、同業並みなら4,100円だよ。


タローくん:海外事業は?
ユーちゃん:今まで赤字だったけど、2026年に黒字化見込み。ここから伸びる可能性が高いよ。


タローくん:配当利回りは?
ユーちゃん:配当利回りは3.7%で同業でも上位。割安で配当も高いという「お得セット」だよ!


「世界3極体制」で事業展開

 12月にブラジル製鉄最大手のゲルダウを取り上げました。ゲルダウは日本製鉄などと同じく高炉と電炉の両方を有する製鉄企業ですが、今回は電炉専業の日本企業、共英製鋼を取り上げます。


2025年12月18日: ブラジル鉄鋼大手ゲルダウに割安感、10年で利益3倍(西 勇太郎)


  共英製鋼(5440 東京) (株価2,462円、時価総額1,070億円:1月5日終値)は、1938年に大阪で鍛鋼製品の製造を行う「共英鍛工所」として創業。1962年に初めて電炉工場を設立し、鉄スクラップを原料とする製鉄業を開始しました。


 1963年に台湾で圧延工場の建設協力・技術指導を実施したことを皮切りに海外展開を開始。1973年には米国ニューヨーク州にオーバン・スチールを設立し、電炉生産を開始しました。

その後日本国内の事業環境の悪化によりいったんは撤退したものの、2016年にテキサス州のビントンスチールを買収して再度米国に参入。


 また、1994年にベトナムに進出して南部・北部の両方に拠点を持ち、ベトナム全域をカバーする体制を整えており、日本、ベトナム、北米の「世界3極体制」で事業展開をしています。


純利益は10年間で1.6倍に

 共英製鋼の2015年3月期の当期純利益は69億円でしたが、2025年3月期には108億円と10年間では1.6倍の水準に達しました。2026年3月期の当期純利益計画値は105億円と、高水準の利益が継続する見通しです。


<共英製鋼の当期純利益推移(2015年3月期以降)>


共英製鋼:10年で利益1.6倍・高配当も、PBR0.5倍で割安感(西 勇太郎)
※2026年3月期は会社計画値出所:共英製鋼資料などより楽天証券経済研究所が作成

 株価についてはコロナ禍に低迷したもののその後は上昇基調となり、現在は2,400円を上回る水準まで上昇しています。


<共英製鋼の株価推移(2015年3月期以降)>


共英製鋼:10年で利益1.6倍・高配当も、PBR0.5倍で割安感(西 勇太郎)
※2026年3月期は直近値出所:共英製鋼資料などより楽天証券経済研究所が作成

PBRが0.7倍に達すれば株価は3,200円

 過去10年間の変化で見ると、売上高は1.8倍、売上総利益は1.8倍、営業利益は1.3倍、当期純利益は1.6倍となりました。これは、国内市場縮小の影響で中小電炉事業者が撤退するなど寡占化が進む中、マージン拡大を実現したことなどが要因です。


   株主資本蓄積も順調に進んで1.6倍に達している中、時価総額は1.2倍にとどまっており、PBRは0.7倍から0.5倍へと低下しました。この割安感が解消されてPBRが0.7倍に回復した場合には、株価は3,200円となります。


<共英製鋼の業績推移(2015年3月期と2025年3月期)>


(億円) 2015年3月期 2025年3月期 変化率(倍) 売上高 1,814 3,228 1.8 売上総利益 219 383 1.8 営業利益 118 153 1.3 当期純利益 69 108 1.6 株主資本等合計 1,295 2,030 1.6 時価総額 882 1,070 1.2 PBR(倍) 0.7 0.5 0.7 PER(倍) 13 10 0.7 ※時価総額は、2015年3月期は期末時点値、2025年3月期は直近値
出所:共英製鋼の資料などより楽天証券経済研究所が作成

    海外ではベトナムの設備能力増強や米国、カナダへの進出によって売上高が大きく伸びた一方、利益面ではカナダで堅調需要に支えられて得られた利益を、ベトナム(競争環境激化)、米国(生産トラブル)での損失が上回り、全体として損失を計上している状況です。


<共英製鋼のセグメント別業績推移(2015年3月期と2025年3月期)>


(億円) 2015年3月期 2025年3月期 変化率(倍) 売上高 1,814 3,228 1.8   日本 1,308 1,523 1.2   ベトナム 436 945 2.2   米国 - 347 -   カナダ - 296 - 営業利益 118 153 1.3   日本 108 174 1.6   海外 3 ▲17 - 営業利益率 7% 5% 0.7   日本 8% 12% 1.5   海外 0% ▲1% - 出所:共英製鋼の資料などより楽天証券経済研究所が作成。▲はマイナス

 2026年3月期会社計画、2027年3月期の市場予想ともに増収かつ高水準の利益を維持する見通しとなっており、株価水準がこのまま変わらなければ、PBRも0.5倍の状況が継続します。


 特筆すべきは海外のセグメント利益が2026年3月期にプラスに転じる見込みとなっていることで、今後利益拡大のドライバーが、国内市場でのマージン拡大から海外市場での需要拡大へと移ることが期待されます。


<共英製鋼の業績予想>


(億円) 2025年3月期 2026年3月期 2027年3月期 実績 予想 予想 売上高 3,228 3,230 3,290 営業利益 153 170 -   日本 174 115 -   海外 ▲17 63 - 当期純利益 108 105 117 株主資本等合計 2,030 2,096 2,172 時価総額 1,084 1,084 1,084 PBR(倍) 0.5 0.5 0.5 PER(倍) 10 10 9 ※時価総額は直近値。
▲はマイナス
出所:共英製鋼、FactSetの資料などより楽天証券経済研究所が作成

同業他社比でPBRに割安感

 共英製鋼の比較対象に適する製鉄(普通鋼電炉専業)の上場同業他社には、米 ニューコア(NUE NYSE) 、米 スチール・ダイナミクス(STLD NASDAQ) 、米 コマーシャル・メタルズ(CMC NYSE) 、 東京製鉄(東京製鐵:5423 東京) 、メキシコの グルポ・シメク(SIM NYSE) 、 合同製鉄(合同製鐵:5410 東京) 、 中山製鋼所(5408 東京) などがあります。


 これらの企業について、自己資本利益率(ROE)を横軸、PBRを縦軸とした散布図を作成すると、おおむね比例関係にあることが分かります。その中で、共英製鋼については割安方向にずれており、この点から、株価に割安感があるといえます。この割安感が解消された場合の共英製鋼のPBR(下図の青破線に乗る水準)は0.9であり、相当する株価は4,100円です。


<主な製鉄(普通鋼電炉専業)企業のROEとPBRの関係>


共英製鋼:10年で利益1.6倍・高配当も、PBR0.5倍で割安感(西 勇太郎)
出所:各社資料などより楽天証券経済研究所が作成

<主な製鉄(普通鋼電炉専業)企業10社のROEとPBR>


社名 証券
コード 取引所 売上高 ROE PBR 億円 % 倍 Nucor NUE NYSE 46,621 10 1.5 Steel
Dynamics STLD NASDAQ 26,607 17 2.3 Commercial
Metals CMC NYSE 11,957 12 1.5 Jindal Steel 532286 ボンベイ 7,498 6 2.3 東京製鉄
(東京製鐵) 5423 東京 3,268 10 0.7 共英製鋼 5440 東京 3,228 5 0.5 Industrias Ch ICHB メキシコ 3,192 18 1.2 Grupo Simec SIMECB メキシコ 2,780 19 1.4 合同製鉄
(合同製鐵) 5410 東京 2,052 9 0.5 中山製鋼所 5408 東京 1,693 5 0.3 出所:各社資料などより楽天証券経済研究所が作成

 また、これらの企業の予想配当利回りを比較すると、共英製鋼は3.7%の利回り(一株当たり配当90円で計算)となっており同業他社の中で2番目に高い水準となっています。


<主な製鉄(普通鋼電炉専業)企業10社の配当および総還元利回り>


社名 証券
コード 取引所 2024年度 2025年度 実績配当 総還元 予想配当 % % % Nucor NUE NYSE 1.9 8.8 1.4 Steel
Dynamics STLD NASDAQ 1.6 7.3 1.2 Commercial
Metals CMC NYSE 1.3 4.2 1.0 Jindal Steel 532286 ボンベイ 0.2 ▲0.9 0.3 東京製鉄
(東京製鐵) 5423 東京 3.2 8.2 3.5 共英製鋼 5440 東京 4.8 4.8 3.7 Industrias Ch ICHB メキシコ 0.0 0.4 0.0 Grupo Simec SIMECB メキシコ 0.0 0.2 0.0 合同製鉄
(合同製鐵) 5410 東京 6.2 6.2 4.8 中山製鋼所 5408 東京 5.4 5.4 2.3 出所:各社資料などより楽天証券経済研究所が作成。▲はマイナス

 ここまで述べた通り、共英製鋼は今後も高水準の収益継続が見込まれる中で、株価は過去実績比、同業他社比で割安感があり、配当利回りも高いため、非常に割安感があるといえる状況です。


(西 勇太郎)

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